地域精神保健活動における介入のあり方に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000306A
報告書区分
総括
研究課題名
地域精神保健活動における介入のあり方に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 順一郎(国立精神・神経センター精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 池原 毅和(東京アドボカシー法律事務所)
  • 益子 茂(多摩総合精紳保健福祉センター)
  • 金 吉晴(国立精神・神経センター精神保健研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、「社会的ひきこもり」等の新たな精神保健関連の問題にとりくむにあたって、精神保健福祉センター、保健所、市町村保健センター等でおこなうべき地域精神保健活動について明確にすることにある。そのため、全国調査、ガイドライン作成、モデルとなる研修の実施、モデル地区での介入の実施、介入の効果判定といった一連の活動をおこなう。これらを通じて、「社会的ひきこもり」に対して実現可能で効果的な精神保健活動のモデルを作り上げようとするものである。
研究方法
研究は最低3年間にわたっておこなう。初年度は現状についての情報収集とガイドライン暫定版を作成する。2年度以降は、研修を含んだモデル事業を実施しその効果についての実証研究をおこなう。その上で「社会的ひきこもり」に対する精神保健活動のモデルを提案する。
(平成12年度)
①現状についての情報を収集・検討するために、ヒアリングおよび文献による分析等をおこなう「研究会」を定期的に開催した。「研究会」では、研究協力者の参加を得て、「社会的ひきこもり」等の精神保健活動の実態、社会問題化した事例の検討、診断の問題、先進的に行われている取り組みの報告、活用できる社会資源についての調査報告、人権を含めた法的問題についての検討、行政等のシステムの必要なあり方についての検討などをおこなった。
②本年度は主任研究者・分担研究者が協働で「研究会」に参集し、情報交換をするとともに、「ガイドライン」の作成をおこなった。まず伊藤は、研究会の運営をおこなうとともに、研究協力者と連携しつつ、ガイドライン作成作業のマネジメントをおこなった。池原は、「社会的ひきこもり」等を呈するものに対する精神保健サービスを提供する上での法的問題の整理をした。益子は、伊藤と連携しつつ、精神保健福祉センターを中心とした介入モデルの作成をおこなった。金は、女性センター、青少年相談センターなど、「社会的ひきこもり」等に関与しうる地域の資源の利用可能性について今年度は事例を中心に検討をした。
結果と考察
平成12年8月から平成13年2月のあいだに、分担研究者・研究協力者の協力を得て、計6回の研究会を開催した。各回のテーマは以下のとおりである。
第1回:
「事例化」してしまったケースとその対応について(1)
佐賀県精神保健福祉センター 藤林 武史 氏
ひきこもりケースに対する精神保健活動
山梨県精神保健福祉センター 近藤 直司 氏
第2回:
「事例化」してしまったケースとその対応について(2)
新潟県精神保健福祉センター 後藤 雅博 氏
「社会的ひきこもり」への家族療法による関与:
システムズアプローチ研究所・コミュニケーションケアセンター 吉川 悟 氏
第3回:
PTSDの観点から見た社会的ひきこもり者への援助
国立精神・神経センター精神保健研究所 金 吉晴 氏
不登校・社会的ひきこもりへの関わり ~横浜市青少年相談センターの活動~
横浜市青少年相談センター 原 敏明 氏
「フリースペース わたげの会」の活動について
フリースペース わたげ 秋田 敦子 氏
第4回:
診療所臨床・システムズコンサルテーションにおける「社会的ひきこもり」
湖南クリニック 楢林理一郎 氏
地域サポートシステムにおける精神科医の役割-精神科医の役割の変化と神話に左右されない姿勢の維持-
東海大学医学部精神科 狩野 力八郎 氏
第5回:
「社会的ひきこもり」者への介入にまつわる法的問題
東京アドボカシー法律事務所 池原 毅和 氏
保健所・精神保健福祉センターを対象にした全国調査の結果から
青少年健康センター 倉本 英彦 氏
第6回:
精神保健福祉センターにおける社会的ひきこもり者への介入マニュアル(試用版)について
多摩総合精神保健福祉センター 益子 茂 氏
地域精神保健福祉活動におけるひきこもり等への介入のガイドライン(暫定版)について
国立精神・神経センター精神保健研究所 伊藤 順一郎
この間の議論をもとに、主任研究者のもとに作業グループを作り、「10代・20代を中心とした「社会的ひきこもり」をめぐる地域精神保健活動のガイドライン(暫定版) ―精神保健福祉センター・保健所・市町村でどのように対応するか・援助するか-」を作成した。ガイドラインは、市町村の新人の保健婦でも理解できることを目標に、実際の面接における技術にまで踏み込んで作成した。ガイドラインの大項目と概略は以下のとおりである。
Ⅰ.「ひきこもり」の概念
「ひきこもり」が生じてしまう背景は多彩であり、一つの原因に帰属させることは出来ない。つねに、生物―心理―社会的な多面的な把握が必要である。精神病のような明確な生物学的基盤のないところに生じる「社会的ひきこもり」は、明確な医学的診断とは言えず、ひとつの社会的状況を呈する人々の状態を指す言葉と考えて良い。
Ⅱ.問題の把握に関する基本的態度
問題把握においては、
① 生物学的な要因が濃厚で薬物療法の適用になるか
② 暴力や危険な行為のために緊急の対応が必要な状況にあるか
という、2つの面からの検討は常に必要である。①にあてはまる場合は精神科医療機関の受診を考慮に入れるべきであり、また②にあてはまる場合は援助者が孤立することなく、多機関との緊密な連携のもとに緊急時対応に備えることが必要である。
Ⅲ.援助をすすめるときの原則
Ⅳ.援助上の具体的な技法について
結論

公開日・更新日

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