障害児の発達支援のあり方と市町村との関係に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000301A
報告書区分
総括
研究課題名
障害児の発達支援のあり方と市町村との関係に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 喜篤(川崎医療福祉大学副学長 兼 教授)
研究分担者(所属機関)
  • 本間博彰(宮城県中央児童相談所)
  • 村川哲郎(おしまコロニー)
  • 藤田美枝子(静岡県中央児童相談所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、入所施設への依存性を著しく減少させている障害児について、その福祉的責任を担うこととなった市町村がどのように対応したらよいかを明らかにする点にある。すなわち、本研究の課題は、①さまざまな障害児が必要としている支援とは何か、②その支援を市町村が適切に提供するためにはどうしたらよいか、という2点に集約される。
研究方法
本研究は、次の3つの分担研究によって遂行された。
① 発達障害児の実態と市町村の対応について(分担研究者:本間博彰)
② 自閉症幼児の通園療育と在宅支援について(分担研究者:村川哲郎)
③ 障害児支援における児童相談所と市町村の連携について(分担研究者:藤田美枝子)
結果と考察
3つの分担研究による結果と考察は次のとおりである。
① 発達障害児の実態と市町村の対応について
55カ市町村における母子保健の実態を調査し、発達障害児の多くは精神発達上の問題をもっていることを指摘した。中都市(岩沼市)の母子保健事業における事例をとおして、発達障害児の具体的な姿を提示した。さらに、青森県と県内市町村の連携の実態、新潟県立療育センターを中核とする地域発達支援の状況などを調査・分析した。
以上の結果から、従来から存在する障害福祉機関(例えば肢体不自由児施設)の役割については再検討が必要であり、今日的な発達障害児の特徴として複雑な障害をもつ事例が多く、こうした障害については新たな支援体制が必要であることを指摘した。
② 自閉症児の通園療育と在宅支援について
わが国において最も早くから自閉症児(者)に関して優れた支援と社会適応を可能にしている「おしまコロニー」の総合的な支援システムを評価する意図をもって本分担研究を設定した。具体的には、南北海道(函館市および上磯町を中心とする地域)における自閉症児の幼児期から学童期にいたる支援の実態を調査・分析した。
その内容は、函館市および上磯町における母子保健事業、渡島コロニー地域療育センターにおける早期診断・早期療育、幼児通園施設「つくしんぼ学級」における自閉症児の教育・治療プログラム、第二種自閉症児施設である第二おしま学園の自閉症児に対する在宅支援、北海道教育大学付属養護学校における自閉症児教育など、広範な実態調査であった。さらに本研究では、在宅自閉症児の親に対してアンケート調査を行った。本研究では、研究活動や研究方法の検討の段階から実施にいたるすべての過程で、自閉症児の親がそのメンバーとして参加・協力した。
自閉症児の療育については、もはや、その方法論を検討する段階ではなく、システムとしてどのような実施体制を確立するかが大きな課題であると思われた。また、親に対するアンケート調査結果は、その内容と数値をみる限り、南北海道地域においてすら、なお多くの課題を残している。これは、全国的な状況をはるかに上廻っている地域における親たちの回答であって、他の地域の親がこの地域の実態をみた場合には全く別の回答がなされる可能性のあることも考慮しておく必要があろう。
③ 障害児支援における児童相談所と市町村の連携について
本研究では、地域で先駆的な療育活動を展開している知的障害児通園施設における支援の実態を把握し、同時に、その施設と地域の保健所・保健センターとの連携、児童相談所の役割などを分析することによって、研究課題に応えようとした。
今日的な特徴として、障害児とその親への支援のあり方は、親の障害受容の過程が大きな要因となることが示唆された。
結論
従来の障害福祉は、戦後から半世紀以上にわたって「GHQ三原則」によって構築されてきた。すなわち、無差別平等、国家責任の明確化、必要経費非制限という原則である。これにより、措置制度をはじめ中央集権的な制度がつくられた。このたびの社会福祉法改正により、その仕組みが大きく変わろうとしており、原則として措置制度は撤廃されて利用契約制度に変わり、国や都道府県の役割は原則的に市町村へと委譲される。こうした中で児童の問題はやや例外的な立場をとることが決定されている。それだけに、発達障害という児童期独特の側面をもつ福祉については、ある種の混乱が懸念される。その意味で、本研究の果たす役割は決して少なくないと思われる。次年度においては、このような問題意識をもって研究を進め、行政的に有効な提言を試みたいと願っている。

公開日・更新日

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