知的障害者のための専門診療科医療の確保に関する研究

文献情報

文献番号
200000300A
報告書区分
総括
研究課題名
知的障害者のための専門診療科医療の確保に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
有馬 正高(社団法人日本知的障害福祉連盟)
研究分担者(所属機関)
  • 馬場輝実子(国立療養所長崎病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
知的障害をもつ人は、青壮年期は急性死が多く、加齢とともに悪性腫瘍による死亡者が増加し、また、視覚、聴覚、内分泌代謝機能の退行にともなう健康障害が多い。これらは意思伝達の困難のために、病気の発見が遅れ、専門の医療を受けにくくして予後を悪くしている。本研究は、知的障害をもつ成人の専門診療科による医療の実態を調査し、そのニーズとそれを困難にしている各種の条件を明らかにし、改善の対策を立案することを目的とした。
研究方法
2年間の計画で以下の点について調査と資料の解析を行うことにした。初年度は情報の収集、2年度はそれに加えて対策の立案を予定した。
1) 専門診療科への受診状況の調査:専門診療科として、耳鼻科、眼科、婦人科、泌尿器科、外科(胸部、消化器、脳神経外科など)を選び、それぞれにおける知的障害者の診療実績を調査した。また、診療を積極的に行っている障害者専門機関の医師、支援者、家族などに対し、専門診療科への受診依頼の実績とその結果についての調査を行った
2) 急性死のリスク評価と対策の立案:全国の急死例について、背景因子を調査し、リスク因子の評価尺度を作成する資料とした。
3) 歯科医療のニーズと地域での対応の調査:障害者歯科を広告している医療機関の医師から、受診経路、診療内容、受診を困難にしている要素とその対策を調査し、同時に、地域の歯科保健担当者の調査と照合した。
4) 研究組織:本州地区(東京、埼玉、滋賀、山口など)と九州地区(長崎、福岡、大分、沖縄、熊本、鹿児島)に分坦研究者を置き、それぞれに研究協力者を配置して調査を実施した。
結果と考察
本州地区、九州地区の分担研究者とも各協力者からの資料収集を継続中である。30人を越える協力者からの中間報告にもとづいて得られた結果は概ね以下の通りである。
1) 各専門診療科における受診理由と対応:知的障害者の受診理由となった疾病異常の内容は、知的障害をきたした原因に関係ある先天性または後天性の疾病、日常生活の生活習慣に関係の深い合併症、脳の機能に関係する神経・精神症状、事故や薬物中毒・副作用など社会生活の適応性の問題とその対策の不均衡などに起因するもの、および、一般の人達と同じように罹患している疾病異常などに大別された。各専門診療科の受け入れは、外来、入院とも前向きの回答が多いが、意志の交換の困難さによる診療の困難性と、慣れた保護者や適切な介護者の支援が必要とする意見が多かった。
2) 支援者からみた専門診療科医療に対する評価と受診の障壁:障害者を多くみている内科、小児科等の医師、および施設職員等からの意見は地域によりまた本人の状況により多様であった。問題発見の遅れと、受診への障壁(交通、医療機関の受付や待合室の内容、専門診療科医師の不慣れによる拒否的雰囲気、入院時の対応、その他)に関する事例が多く寄せられた。
3) 歯科医療のニーズと地域での対応:障害者歯科を広告している医療機関に必要な条件として、車椅子や待合室の環境を意識した設備、慣れた医療者の応対、必要なら麻酔管理などの各段階があげられた。地域における適切な配置についてはさらに検討中である。
結論
本州および九州にわけて、知的障害者が外科系および歯科等の専門診療科の医療を受けた理由、医療内容と結果、医療を受けるにあたっての障壁となった内容等について調査を継続中である。受診の理由、医療内容と結果については各専門診療科および医療機関の性質により差があるが、本人の状態を正確に伝えることのできる介護者と入院時の安心できる付き添い人の存在が共通の要望であった。支援者や内科系の紹介医師からは引き受けられる専門診療科の存在を希望する意見が多くあったが、地域差がみられた。

公開日・更新日

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