シーティングクリニックの開発に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000282A
報告書区分
総括
研究課題名
シーティングクリニックの開発に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
廣瀬 秀行(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋功次(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1960年代にカナダで開発されたシーティングクリニックは長時間の座位をとらざる得ない障害者・児の座位環境の向上を目的に設立され、現在北米、ヨーロッパ等で座位保持や福祉用具のアプローチを専門に行う機関が存在する。一方、日本では1989年に横浜市総合リハセンターに座位保持を含むリハ工学サービスが実施され始めたが、日本全体では広がっていかなかった。本研究の目的は北米で開発されたシーティングクリニックを日本の現況に適するように、新に姿勢保持の方法論を開発することである。
現在、当センターでは病院、補装具診の一部としてシーティングクリニックを試行しており、そこでの事業に対する検討を行うものである。よって、目標として、
1) 日本の実情にあった方式の確立。
2) シーティングクリニックの有効性の確認。
3) 新たな座位保持に対するモデルの確認。
をあげた。
過去、2年間はシーティングクリニックを開発するための文章化を実施し、またモデル化として環境因子の導入を提案した。
今年度の目標はクリニックの有効性の確認とモデル手法の確認を中心に検討する。
研究方法
シーティングクリニックとは複雑で重度な障害者・児の座位を中心とした多様なニードに対応する為のリハビリテーションの中の定期的なサービスであるとした。また、モデルとして、既存の処方―個別適合から環境適合を特に重視し、貸し出し制度を実施した。それを評価する為、下記の手法を実施した。 
1)クリニックの成果を定量化するため、現在病院で使用されている日報や月報を基にクリニックの業務を分類し、カードを作成した。そして、内容的に障害別、住居地域、クリニックへの目的、業務時間数、業務内容などからなる。その分類を基に3年間対応した人の業務を分類、集計しデータベース化した。
2)クリニックの評価として、対象者のクリニックに対する意見を聴取し、それを評価とした。内容として、個別の目的が達せられ、機器が有効に使用されているか。対応者からクリニックの必要性などが質問内容であり、郵送によるアンケート調査を実施した。
3)クリニック業務の経費を算出するため、座位保持、褥瘡対応、電動車いすについての代表例で業務実施時間や内容も含めて検討した。
研究実施における倫理面に関して、クライエントに対して研究の目的を説明し同意を得て行なった。
結果と考察
1)実施結果
対象となった者は167名で、疾患が確認できたもの、148名。脳性麻痺30名、頚髄損傷32名、脊髄損傷47名、二分脊椎、筋ジス7名などであり,脊髄障害56名と58%を占めていた。褥瘡対応のため脊髄損傷が多いいが、脊髄損傷や稀な疾患で理学療法士が判断し、座位保持を適用したケースがある。障害の状態と進行を予測して、機器を処方する上で、リハセンターでの役割の重要性を示すものである。
次に、実施対象者の住居は所沢市32名、所沢を除く埼玉県36名、東京37名となった。
機器適合サービスが極めて地域性が強いことを示しており、このようなサービスがある一定人口地区を対象として、計画的に配置されるべきであることを示している。
疾患別延べ人数は622人回、頚髄損傷95人回、脊髄損傷104人回、脳性麻痺226人回、他疾患197人回で,脳性麻痺者が36%を占めた。平均実施回数は3.7回、頚髄損傷3.0回、脊髄損傷2.2回、脳性麻痺7.5回となり、脳性麻痺による対応が多い。
疾患別の回数は 目的は610人回中座位保持297件、褥瘡173人回、電動車いす90人回、その他49人回となり座位保持が49%を占めた。
実際の業務は適合評価と初期評価が大半を占める。特殊な対応として、座位保持装置を決定するためのマット評価を57件、褥瘡対応時に接触圧力センサによる測定を136件、義肢装具士による製作35件、判定への立会い、使用環境調査27件となり、圧力測定は53%と頻度が多かった。
2)アンケート結果
クリニックで製作したものは、68%現在使用していた。使用していない中に現在製作中3名、使用環境とセンターが遠く、近くの病院で製作したい1名、マットレスの相談で購入していない1名、技術レベルへの不信感1名などであった。
座位保持装置は車いすと比較し、重く、折りたたみが困難である。自宅等で使用できたのは個人への適合と同時に、使用環境での適合を本クリニックは実施してきたことによる。
他の機関等で製作を過去に行っていたのは74%を占めた。
対応に関しては、普通、よいで97%を占めたが、時間がかかる、使用機種が限定されているなどの不満もあった。対応回数の増加と一致した不満であるが、座位保持の持つ重さや大きさが狭い社会環境への適合が計りにくいことも原因である。
再度、製作する時はの問いに対して、92%がクリニックで作ると答えた。
クリニックの必要性は91%が必要と答えた。しかし、自宅から遠い、時間がかかるなどの不満があった。
3)事故発生
3年間、600回も実施し、事故はなかった。リスク管理が十分に行き届いた結果である。
4)症例費用検討
座位保持は機器そのものと、適合業務や製作からなる。機器に関しては基準内外の手法で対応できている。しかし、適合や製作業務に関して、リハ専門職等に類似した保健等での対応が考えられた。
褥瘡対応は褥瘡を起こした後の再発予防であり、保険での対応の可能性がある。評価や説明等の部分と座圧測定の業務があった。評価や説明は座位保持と同様な対応が考えられた。座圧測定は非常に有効であり、また測定機器は高価である為、別に費用を検討すべきである。電動車いすは座位保持に類似しているが、操作訓練部分への対応が必要である。
結論
シーティングクリニックを実施した結果を報告した。クリニックサービスと環境のモデル化導入の有効性を確認した。障害が重度化している状態で家庭復帰を目指すには、リハビリテーションセンターの役割として機能の向上だけでなく、福祉機器の適合・供給をもその仕事とすべきである。

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