知的障害児(者)施設の援助のあり方に関する総合的研究

文献情報

文献番号
200000278A
報告書区分
総括
研究課題名
知的障害児(者)施設の援助のあり方に関する総合的研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
富澤 彰雄(東大阪短期大学)
研究分担者(所属機関)
  • 富澤彰雄(東大阪短期大学)
  • 菅原善昭(心身障害者福祉協会)
  • 小山聡子(日本女子大学)
  • 西脇俊二(国立秩父学園)
  • 加藤正仁(社会福祉法人からしだね うめだ・あけぼの学園)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
①施設における援助のあり方に関する研究:生活の質の向上と地域移行を目指す観点から、知的障害福祉サービスの公的な援助範囲とその他のインフォーマルな援助、契約に基づく援助への移行における可能性の検討を行い、より広範な援助のあり方について提言すること。②高齢者処遇のあり方に関する研究:本研究では、適切で妥当性の高い援助を行うにあたっては、利用者個々のニーズを把握することが前提となると考え、利用者個々のニーズに応える援助のあり方についての検討と、施設に入所する40歳以上の利用者について生活の充実度の観点から調査・検討する。③施設における権利擁護のあり方に関する研究:施設における知的障害者の人権擁護のあり方について、サービスの提供側と受給者側の関係を整理するとともに、アクション・リサーチの結果を受けたその後の取り組みを段階的に追う。また、前年度に行った施設調査の結果を集計、分析して、前記アクション・リサーチ後の取り組みと合わせ、今後の取り組みに向けた提言としてまとめる。④施設における個別援助計画に関する基礎研究:自閉症児への個別援助の実態を調査するものとして、自閉症児が学齢期に多くの関わりをもつ学校教育での現状を把握し、また自閉症教育について先進的な取り組みを続けている英国の現状とを比較することで、学校教育と連関すべき施設における個別援助計画について考察する。⑤施設における地域支援のあり方に関する研究:施設の在宅支援におけるあり方と具体的な方法について検討し、特に都会型の地域療育等支援事業の在り方を模索検討する。
研究方法
①各施設の地域福祉への取り組み状況全般、地域移行の状況および関係者の意識等について、知的障害児・者施設に対しアンケートを行いまとめる。②施設概要調査票と生活実態調査票を作成し、生活実態調査票は、利用者自身が記載できるように施設に依頼した。ニーズの対応については、個別支援計画の作成上と高齢化対策の実施状況を調査項目に設定した。③全国の施設での取り組みと意識に関する量的な調査を質問紙により行い、集計・検討する。④埼玉県、東京都の身障学級、養護学校への質問票を送付し、その解答の検討により学校教育の現状把握を行い、また英国の特殊教育の現状との比較検討を行った。⑤全国のいくつかの地域での障害保健福祉圏域の実状について調査し、その特徴と課題を明らかにする。また、東京都での障害保健福祉圏域の試案をいくつか作成し、その特徴と課題を明確にする。さらに、障害保健福祉圏域上にセットされた障害児者地域療育等支援事業の課題と都会型の先行事業を比較検討し、未設定の東京での支援事業の在り方を検討し、提案する。
結果と考察
①社会福祉基礎構造改革の一環として2003年度より支援費制度が導入される。本研究の最終年度として知的障害児・者施設における障害の程度が重度である方々の地域移行について、施設責任者へのアンケート調査を中心に研究を実施した。全般に地域福祉への理解はあるものの、実際に地域移行を実施することについては様々な抵抗感があることが分かってきた。特に日中の受け入れ施設等の少なさ、収入に対する危惧等が理由としてあげられていた。理念としては分かっていても、実際に地域移行するための具体策が見えないままに不安感を抱いていることが示唆された。②高齢化対策を実施している施設利用者の全ての生活充実度は明らかに高いことが分かった。各生活場面でも、高齢化対策を実施している施設の利用者の生活充実度
は高い。次に、性別では全ての生活充実度平均値に有意差がみられた。つまり、男性の生活は充実しているが、女性の生活は男性に比べて低いと推測された。施設定員の問題では、定員が明らかに生活の充実度に影響を与えているという結果が数値として示されたことに意味がある。施設の職員が利用者ニーズをどのように判断しているかの調査では、職員には、コミュニケーション能力の低い利用者の要望・ニーズをどのように把握し、それを処遇に反映していくかという大きな役割があることが示唆された。③施設における権利擁護への取り組みでは、それなりに理念を持って努力を継続しており、この先まずは職員の「意識改革」が重要であるととらえる施設の姿が見られた。倫理綱領の策定については、多くの施設で前向きに受け止められていたが、細部の検討は必要である。オンブズマン制度の導入は、倫理綱領ほど進んでいない。少数ながら必要ないと答えている施設が権利擁護に前向きな施設に見られたのは特徴的であった。第三者の介入には方法論に工夫が必要であろうが、本研究におけるアクション・リサーチの取り組みが有力な選択肢を提供していると考えられる。援助者対利用者数に関連して、職員数が増え始めると課題意識が高まり、権利擁護への自己評価が厳しくなると推測された。また権利擁護がなされていないととらえられる要因には、個室の不足というハード面と職員の不足というソフト面の組み合わせが多かった。④質問票の結果の検討によると、学校からの施設や医療機関に対する相談は少なくなく、また気軽に相談できる専門施設の要望が多かった。英国においてはNational Autistic Society(NAS)があり、自閉症に関する様々なサービスを提供している。また学校などへのアドバイスも実効的に行っている。また、自閉症専門の学校、施設があり個別に配慮された教育が提供されていた。現在、英国では自閉症専門の学校、施設があり、その成果が認められている。それに対し、今回の調査では学校現場において、自閉症などの発達障害をもつ子どもとの関わりに困難さが認められ、気軽に相談できる専門施設の要望が多く認められた。従って今後も施設における個別援助技術の発展は重要と考えられ、施設と学校等との連携・教育センターの実務機能の改善も肝要と思われる。⑤ 障害保健福祉圏域比較表から、二次医療圏域と同じ圏域案、地域福祉権利擁護事業実施体制圏域、児童相談所(更生相談所)担当地区圏域、養護学校小学部圏域の4つのタイプの圏域が設定可能であることを示した。東京都に多くの施設入所待機者が存在する背景には、地域での在宅資源がもっとも貧弱であることがある。従って、東京都内のグループホーム機能を持った公立私営の施設機能を、地域生活移行支援策としても今後しばらくは、通過受入機関として機能させるべきであろう。
結論
契約制度へ移行することを視野に入れて、施設から地域への移行を進めようとするとき、金銭面でのサポートおよび地域での受け入れ態勢作りをそれぞれの施設・地域がすることの必要性を提案するとともに、現状の入所施設のナイトケア施設としての位置づけやデイサービス機能の併設を提案する。同時に高齢化が進むなかでも具体的工夫をすることで利用者の生活の質は維持向上の可能性があることを示した。併せて、権利擁護の推進と高品質な福祉サービスの実現に向けた具体的指針を示した。また、行動障害特に自閉症児者への療育支援の立場から、英国の相談体制を参考に、施設における相談機能の必要性を実証した。最後に、地域で支援する立場から東京のような過密地での地域支援の青写真を示した。

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