文献情報
文献番号
200000275A
報告書区分
総括
研究課題名
精神医療保健福祉に関わる専門職のあり方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
大井田 隆(国立公衆衛生院)
研究分担者(所属機関)
- 大井田隆(国立公衆衛生院)
- 羽山由美子(聖路加看護大学)
- 山根寛(京都大学)
- 柏木昭(聖学院大学)
- 鈴木二郎(東邦大学)
- 石井敏弘(国立公衆衛生院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医師、看護婦(士)・准看護婦(士)、作業療法士、精神保健福祉士および臨床心理技術者および保健所、精神保健福祉センター職員など精神医療保健福祉に関わる専門職のあり方について、職種個別の具体的な機能・役割や医療施設および地域における協働の観点から検討する。これにより、新たな国家資格制度を含む、行政的な対応を検討する基礎資料を提供することを目的として、本研究を実施した。
研究方法
(1)精神科看護の専門性の明確化と今後のあり方に関する研究、(2)回復過程にそった作業療法の役割と連携のあり方に関する研究、(3)精神保健福祉士のスーパービジョン及び研修の体系化に関する研究、(4)臨床心理技術者の資格のあり方に関する研究、(5)医療施設における精神医療に関わる専門職の連携に関する研究、(6)地域における精神医療保健福祉に関わる専門職の連携に関する研究という6つの分担研究を実施した。(1)では、関東南部にある民間精神病院5施設にてベテラン看護者25名を対象に聞き取り調査を行った。東京都内と南西部郊外にある民間精神病院の主として急性期患者が多く入院する病棟で働く看護者を対象に郵送法による質問紙調査を行った。(2)では、連携モデル作成に協力した事例提供者に本研究でこれまでに作成された連携フォームを提示し、医療施設および地域において作業療法の役割の連携のフォームを実施する上で生じる問題点や留意点を検討し、モデルの修正を行った。回復状態や作業療法士が勤務する部門などに拠り9つの状況(入院が必要な状況になった対象者の入院必要度の判断と必要なら適切な入院を支援する場合など)を想定して、各状況における連携の主目的と作業療法に期待される役割、連携機関(医療、保険、警察、福祉)や人(専門、準専門、その他)、連携の度合いなどを検討した。連携を効果的に行うために必要な作業療法の診療形態に関して、設立母体、施設形態、経験年数別にアンケート調査を実施した。(3)では、精神保健福祉士国家試験受験資格に係る指定科目実習指導者に対するモデル研修を広島、東京、札幌において実施し、研修中のグループ討議において83名から意見を聴取して整理した。この研修会受講者に対して、生涯研修としての研修プログラムの運営、内容等に関するアンケート調査を行なった。(4)では、精神医療保健福祉に関わる団体の代表者を研究協力者として3回の研究班会議を開催し、前回までの検討結果のまとめや今回提出された資料に基づいてさらに検討を加えた。第3回会議終了後に分担研究者が纏めを作成して全班員に送付して追加意見を求めた。分担研究者が意見を集約して、分担研究報告書を作成した。(5)および(6)では、精神医療保健福祉に携わる医師、看護婦(士)・准看護婦(士)、作業療法士、精神保健福祉士および臨床心理技術者を研究協力者として連携に係る研究を実施した。
結果と考察
(1)の看護者に対する聞き取り調査では、看護の状況は「現状維持を固定化させる看護」「日々の生活を重視した看護」「思い通りにいかないことへの苦悩をもつ看護」「患者に対して同類意識をもつ看護」という4種に類型化できた。こうした類型の特徴には、個々の看護者の患者観、職場風土、教育・資格要件、その他個人要因とともに、患者の社会背景も関与しているようであった。地方の限られた社会資源環境では、慢性期医療機関は市部の県立その他急性期医療機関の後方施設と化す傾向が推測された。そしてこのことが現状維持重視型となるの看護者の多さに影響を及ぼしていると考えられた。急性期病棟看護者に対す
る郵送調査では、急性症状を呈する患者のケアに際して、看護者が体験する経験の特徴として、9割の看護者が「患者からの暴言」と「拒絶/拒否」、7割が「暴力」と「性的言動」、5割が「巻き込まれ」、4割が「患者からの操作」および「自傷行為」、3割が「突然の離院」、その他少数が「患者の自殺」を経験していた。しかし、院内教育プログラムで、特別の暴力・衝動行為に関する専門の介入技術を学んでいる者はごく少数だった。また、看護目標、ケアプランについて、急性期特有の症状および日常生活援助に焦点をあてたプログラムや、昨今注目されている心理教育・服薬教育を急性期看護者向けに院内教育に取り入れているところはほとんどなかった。(2)の連携に必要な作業療法の形態に関するアンケートでは246名から有効回答を得た。1日の単位数に関しては、2単位もしくは単位数の限定をしないほうがいいという回答が多かった。1単位の時間は、60~90分程度が最多で、次いで30~60分程度であった。現行の2時間もしくはそれに準じる90~120分という意見は共に10名に満たなかった。個別対処に係る点数化の必要性ついては経験年数の高いものほど高い必要性を述べており、訪問作業療法、社会生活技能訓練、作業遂行技能評価、早期作業療法に関しては8割以上が必要と回答した。診療所における作業療法の必要性については(現在は入院施設を有する病院以外は精神科作業療法の認可対象になっていないが)必要とする回答が9割を超えた。(3)のモデル研修参加者からの意見聴取では、精神保健福祉士国家試験受験資格に係る指定科目実習指導者を精神科ソーシャルワーカーに限定するなど職種を統一するべきであるという意見が多かった。アンケート調査では、関心が高い研修プログラムは実習指導に直接関係する講義であり、関心が高い順に「スーパービジョン」「精神保健福祉援助実習の実際と指導のあり方」と続いた。今後付け加えたいプログラムは「グループスーパービジョン」「事例検討」「所属機関別に分類した実習指導」「教育機関との連携」「ロールプレイ」の順であった。専門職としての生涯研修については「精神保健福祉士資格取得後、定期的な研修を義務づけるべき」という回答が94.0%と非常に高かった。(4)においては、臨床心理技術者の国家資格化は必要であると結論された。臨床心理技術者の業務は、①臨床インテーク、臨床心理相談、援助業務 ②心理査定 ③心理療法 の3つに整理された。臨床心理技術者の国家資格について、職種名は「医療心理士」、学歴は「大学(4年制)卒」、専門課程修学期間は「大学院 臨床心理専門修士課程以上終了、または指定された医療保健関係施設での2年以上の研修」、試験実施者は「厚生労働大臣」、受験資格は「上記学歴及び専門課程修学を終了した者」、業務内容(定義)は「医療・保健関係の各施設における臨床心理業務」とする案が纏められた。(5)においては本研究で作成した多職種連携モデルを精神分裂病急性期入院症例へ適用したところ、「各職種の役割が明確になった」「他職種との連携を改めて意識するようになり、多方面から支援する姿勢ができてきた」「カンファレンス以外でも情報交換する機会が多くなった」など、職種間の連携が促進されたという回答が得られた。精神分裂病にて外来通院する22症例について多職種連携の意義・効果を評価した。1年間の入院日数を連携開始の前後で比較したところ、連携開始後に入院日数が 減少15例(68.2%)、不変4例(18.2%)、増加3例(13.6%)であった。(6)では、外来受診や入退院など、地域で生活する精神障害者の医療機関との動的関係における支援目標と各専門職の役割が示された。(5)および(6)の連携モデルは精神分裂病をベースとして作成されたが、重症の鬱病で入院し、治療後に退院および社会復帰を図る症例に対しても適用可能であるという点で、各専門職の意見が一致した。
る郵送調査では、急性症状を呈する患者のケアに際して、看護者が体験する経験の特徴として、9割の看護者が「患者からの暴言」と「拒絶/拒否」、7割が「暴力」と「性的言動」、5割が「巻き込まれ」、4割が「患者からの操作」および「自傷行為」、3割が「突然の離院」、その他少数が「患者の自殺」を経験していた。しかし、院内教育プログラムで、特別の暴力・衝動行為に関する専門の介入技術を学んでいる者はごく少数だった。また、看護目標、ケアプランについて、急性期特有の症状および日常生活援助に焦点をあてたプログラムや、昨今注目されている心理教育・服薬教育を急性期看護者向けに院内教育に取り入れているところはほとんどなかった。(2)の連携に必要な作業療法の形態に関するアンケートでは246名から有効回答を得た。1日の単位数に関しては、2単位もしくは単位数の限定をしないほうがいいという回答が多かった。1単位の時間は、60~90分程度が最多で、次いで30~60分程度であった。現行の2時間もしくはそれに準じる90~120分という意見は共に10名に満たなかった。個別対処に係る点数化の必要性ついては経験年数の高いものほど高い必要性を述べており、訪問作業療法、社会生活技能訓練、作業遂行技能評価、早期作業療法に関しては8割以上が必要と回答した。診療所における作業療法の必要性については(現在は入院施設を有する病院以外は精神科作業療法の認可対象になっていないが)必要とする回答が9割を超えた。(3)のモデル研修参加者からの意見聴取では、精神保健福祉士国家試験受験資格に係る指定科目実習指導者を精神科ソーシャルワーカーに限定するなど職種を統一するべきであるという意見が多かった。アンケート調査では、関心が高い研修プログラムは実習指導に直接関係する講義であり、関心が高い順に「スーパービジョン」「精神保健福祉援助実習の実際と指導のあり方」と続いた。今後付け加えたいプログラムは「グループスーパービジョン」「事例検討」「所属機関別に分類した実習指導」「教育機関との連携」「ロールプレイ」の順であった。専門職としての生涯研修については「精神保健福祉士資格取得後、定期的な研修を義務づけるべき」という回答が94.0%と非常に高かった。(4)においては、臨床心理技術者の国家資格化は必要であると結論された。臨床心理技術者の業務は、①臨床インテーク、臨床心理相談、援助業務 ②心理査定 ③心理療法 の3つに整理された。臨床心理技術者の国家資格について、職種名は「医療心理士」、学歴は「大学(4年制)卒」、専門課程修学期間は「大学院 臨床心理専門修士課程以上終了、または指定された医療保健関係施設での2年以上の研修」、試験実施者は「厚生労働大臣」、受験資格は「上記学歴及び専門課程修学を終了した者」、業務内容(定義)は「医療・保健関係の各施設における臨床心理業務」とする案が纏められた。(5)においては本研究で作成した多職種連携モデルを精神分裂病急性期入院症例へ適用したところ、「各職種の役割が明確になった」「他職種との連携を改めて意識するようになり、多方面から支援する姿勢ができてきた」「カンファレンス以外でも情報交換する機会が多くなった」など、職種間の連携が促進されたという回答が得られた。精神分裂病にて外来通院する22症例について多職種連携の意義・効果を評価した。1年間の入院日数を連携開始の前後で比較したところ、連携開始後に入院日数が 減少15例(68.2%)、不変4例(18.2%)、増加3例(13.6%)であった。(6)では、外来受診や入退院など、地域で生活する精神障害者の医療機関との動的関係における支援目標と各専門職の役割が示された。(5)および(6)の連携モデルは精神分裂病をベースとして作成されたが、重症の鬱病で入院し、治療後に退院および社会復帰を図る症例に対しても適用可能であるという点で、各専門職の意見が一致した。
結論
精神医療保健福祉に関わる専門職のあり方が、職種固有および職種間連携の両面から整理された。
公開日・更新日
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