高齢大腿骨頸部骨折患者の寝たきり防止に関する研究

文献情報

文献番号
200000274A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢大腿骨頸部骨折患者の寝たきり防止に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
岩谷 力(東北大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木堅二(帝京大学市原病院)
  • 関直樹(東京都多摩老人医療センター)
  • 中村利孝(産業医大)
  • 星野雄一(自治医大)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢大腿骨頸部骨折患者の骨折前の生活状況、治療経過、帰結、転帰に関する多施設調査により機能低下(寝たきり)の原因因子、病態を解明し、機能的予後の向上、効率的治療法の確立をはかること。
研究方法
我々が作成した調査表を用いて高齢大腿骨頸部骨折患者の身体状況、治療過程、受傷前後の機能的状態ならびに退院後の機能生活状況を前向きに調査し統計処理 記述統計量、項目観測値を求め、前年に行った後方視調査結果と比較する。さらに主成分分析を行い、抽出された変数により退院時の機能、在院日数、帰結を表す変数を目的変数として重回帰分析し、機能予後と退院先の関連要因を求め、さらに予後予測式を求める。
結果と考察
高齢大腿骨頸部骨折患者の入院前の生活環境、身体状況、機能的状態、受傷時状況、手術、リハビリテーションを含めた治療経過、退院時の機能的状態、退院先からなる調査表を用いて東北、関東、東京都下の4医療施設において2000年4月から2001年3月末までの一年間、前向き調査を行った。この間に4施設にて治療した60歳以上の大腿骨頸部骨折患者は218名であった。対象患者に関する記述統計量は以下に示す。性別:女性173名男性45名、受傷時年齢:平均82.7±8.1歳(60~99歳)、入院前の住居は自宅136名,老人ホーム32名、老健施設12名、病院36名その他2名、入院までの期間:平均3.2±6.6日、入院から手術までの期間:平均6.7±3.3日、術後座位開始:術後平均2.9±2.0日、車椅子乗車開始:術後平均3.3±2.2日、訓練室内リハビリテーション開始:術後平均5.3±3.6日、歩行訓練開始:術後平均6.7±12.0日、在院期間:平均38.2±16.2日、退院先:自宅89名、病院68名、老健施設23名、老人ホームほか28名であった。 骨折型は内側骨折81例(不全骨折:10名、外反型:6名、内反型:16名、完全転位型:49名)、外側骨折125例(2part:86名、3part:27名、4part:16名、転子下骨折9例)、治療法は人工骨頭73例、CHS91例、保存療法9例、その他37例であった。麻酔法は腰麻174例、全麻24例、その他8例であった。術後に不穏状態症状は43例(19.7%)、問題行動は73例(35.0%)褥瘡は15例(6.9%)に見られた。入院時のBarthel Indexは平均70±33で退院時には平均50±36と低下していた。退院時の歩行状態は杖なし独歩12名、杖歩行56名、車椅子59名、歩行器35名、寝たきり51名であった。患者さんの退院後の転帰、機能的状態、生活環境についてはアンケート調査を継続中で、結果を分析検討中である。
高齢大腿骨頸部骨折患者は80歳台の女性に多く、骨折前の生活場所は自宅が62%、病院が16%%、老人ホームが14.7%、その他の施設が5.5%であった。受傷前自宅生活者134名のうち自宅へ退院した患者は85名、27名が病院へ、14名が老健施設へ、24名が老人ホームへ、6名がその他の施設に退院した。老人ホームから入院した32名は25名が老人ホームに、4名が病院へ、2名が自宅へ退院した。病院から入院した36名中35名は病院へと戻った。受傷前自宅生活者の入院時Barthel Indexが40以下であった12名の人々の退院時の歩行状態は歩行器歩行が1名、車椅子7名、寝たきり4名であり、Barthel Index41-80であった17名は寝たきりが1名、杖歩行3名、歩行器歩行6名、車椅子7名であり、Barthel Index80以上であった77名は独歩12名、杖歩行46名、歩行器12名、車椅子9名、寝たきり0名であった。受傷前から日常生活活動能力が高かった人々の機能回復は良好であった。また自宅退院した人々の退院時の歩行状態は独歩12名、杖43名、歩行器15名、車椅子12名、寝たきり2名であった。寝たきりの状態で自宅退院したのは寝たきり者10名のうち2名のであった。
今回の前向き調査結果を昨年度までの1997年から1998年にかけての後方視調査の結果と比較すると、患者の年齢、性別、骨折型、入院前の住まい、手術治療法などには差がみられなかったが、術後のリハ治療過程と在院期間に明らかな差が認められた。術後のリハビリテーション治療の開始時期の推移は以下の通りであった。車椅子乗車開始時期は8.3日から3.3日に、歩行訓練開始時期は17.7日から6.7日に早められ、在院期間は53日から38日へと短縮した。退院時の歩行機能は独歩、杖歩行者数は変わりなく、車椅子使用者数が減り、歩行器使用者と寝たきり者が増えていた。この3年間に高齢大腿骨頸部骨折患者の術後リハビリテーション医療の早期化は著しいものであった。しかし退院時の歩行機能、Barthel Indexに大きな変化はなかった。今回の対象者の退院後の機能状態は継続調査中である。
結論
高齢大腿骨頸部骨折患者の治療は3年間で術後リハビリテーション治療が早期におこなわれるになり、在院期間が短縮された。受傷時に病院、施設の生活者はほとんどが元の施設に退院した。受傷時自宅生活者は受傷前からBarthel Indexが低かった人々は退院時に車椅子、寝たきりであり、自宅退院できなかった。受傷時にBarthel Indexが高かった人々では独歩または杖歩行者が70%、歩行器、車椅子移動となったものは約30%であった。これら転帰は2回の調査で大きな差が認められなかった。入院期間の短縮により退院先に影響が及ばなかったことは、医療の効率化が進んだことと考えることができよう。本骨折により生じた機能低下がどれくらいまで快復するか、健康寿命にどれくらいの影響をあたえるかの解析は、退院後の機能調査を継続中であり、これからの研究課題である。この間の変化には医療制度変革の影響が強かったと推測される。

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