知的障害者に対する適正な医療・リハビリテーションの提供に関する研究 -重い知的障害を持つ人たちへの入所施設でのリハビリテーションのあり方-

文献情報

文献番号
200000272A
報告書区分
総括
研究課題名
知的障害者に対する適正な医療・リハビリテーションの提供に関する研究 -重い知的障害を持つ人たちへの入所施設でのリハビリテーションのあり方-
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
飯田 雅子(鉄道弘済会 弘済学園)
研究分担者(所属機関)
  • 中島洋子(旭川荘 旭川児童院)
  • 大場公孝(侑愛会 第2おしま学園)
  • 三島卓穂(鉄道弘済会 弘済学園)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
強度行動障害への支援を検討することを総合的な研究目的とした。サブテーマとして、児童施設での強度行動障害改善への療育援助研究、更生施設での強度行動障害改善への療育援助研究、強度行動障害判定基準の改訂、強度行動障害への医療的研究、児童施設における学校教育との連携のあり方についての検討、を設けた。
研究方法
強度行動障害改善への療育援助研究は、強度行動障害の事例研究を通じて有効な療育の要件を求めた。強度行動障害の判定基準の改訂は、現行の評価尺度に欠けている環境記述の素案から最終案を作成した。医療研究では、早期療育後悪化例の学校訪問をし教育が必要な情報をアンケート調査した。また精神保健福祉法との関連で施設での行動制限を考察した。強度行動障害についての児童施設と学校教育との連携については、全国全ての児童施設ならびに通学先の養護学校に強度行動障害をめぐる連携調査票を送付し記述データを資料として分析した。
結果と考察
第1部 強度行動障害への療育要件の検討
その1.児童期の強度行動障害への療育要件の検討。三島分担研究者はADHDの合併例、自閉症とトゥレット障害の合併例2例計3事例での実践を検討した。第1例は、中度知的障害にADHDを合併した13歳の男児で1年間で強度行動障害得点が21点から8点に減少した例である。視覚・聴覚刺激に過敏で、イライラしやすく「ぶっころすぞ」「うるさいだまれ」など暴言を吐く、頭や胸を自傷、叩き、ドアを蹴り破壊する、ガラスを割るなど衝動的な行動障害が出現する。有効な支援には、過敏なので視覚、聴覚、触覚的刺激の統制をすること、信頼関係を背景に働きかけること、承認の機会を増やすことがあった。本人に無理を強いる行動評価の手法、失敗経験、男性職員からの緊張感は避けるべきであった。これらは、いずれもADHDでの障害特質に対応していた。第2例は、11歳で自閉症に最重度の知的障害にトゥレット障害の合併した男子児童であり当初23点、1年後には3点に改善した例である。布団を破る、頭突き、壁やガラスを蹴って壊す、人を大人子どもかまわず蹴り力いっぱい叩くなどが特徴でその他はペニスいじりに没頭していた。支援は、年少の内に①構造化した環境のなかで②薬物療法を活用しながら③リラックスできる楽しい雰囲気を造り④キイパーソンを軸に⑤コミュニケーションで楽しい雰囲気と見通しを造り、⑥次第にセルフコントロールを促すという手法を用い有効性が再確認された。第3例は自閉症とトゥレット障害の合併例である。重要な導入期の支援を検討した。その衝動性や強迫性のため、強度行動障害得点は入所時22点で、食事を投げる、要求が通らないと噛みつく、ドアに頭突き、体当たりをしドアを破損する、ガラスを割る、等々がみられた。1年後の現在14点に軽減した。キーパーソンによる受容の徹底を図ること、行動の低下時は発話が困難という観察からつねりは要求の代償行動と捉えて支援をすることで、愛着行動が出現し強迫的な行動が軽減した。その2.成人期の強度行動障害への療育援助要件の検討について。大場分担研究者は強度行動障害の多数を占める自閉症の障害に対しTEACCHの手法を緻密化させて適用し強度行動障害が軽減した実践報告をした。第1例は最重度知的障害で自閉的傾向を合併し18歳の男子である。強度行動障害得点21点で5年後の現在13点である。パニックがひどく周囲の物を投げつけ倒すのでテレビやタンスは固定しガラス戸はビニールであった。分析からは、①何をやって良いか理解なく徘徊や固執行動をする、②特定の物(ブロックなど)に興味関心が強い、③基本的生活面での行動が出来ない、④制止や指示が繰り返されることで行動障害が発生する、とされた。そこで、(1)スケジュール提示で何を行なうのかを知らせ、(2)余暇時間にブロックなどで遊ぶ時間を確保する、(3)個別支援計画をたて基本的生活面での行動を本人の機能レベルに合わせる、(4)制止や指示により混乱状況をつくらない、視覚的に呈示する、スモールステップで定着する支援が有効であった。第2例は、強いこだわりのある、知的障害重度で自閉的傾向のある養護学校中学部2年の男子である。行動は物を叩きつけ投げて割る、就寝時は全裸、頻繁に水を口に入れるなどで、強度行動障害得点は当初23点、3年後の現在12点の例である。分析してみると、日程や課題への見通しの無さ、言葉の指示理解の曖昧さ、表現手段が限られたストレスと不満、物事の同一性に対する強い欲求があった。そこで(1)物理的構造化をする、(2)スケジュールを導入する、(3)コミュニケーションの力をつける支援が有効に作用した。第3例は、頭叩きの強い最重度の知的障害に自閉症を合併した17歳の男子である。入所時の強度行動障害得点は自傷、排泄、食事、パニックなど30点であり、3年後に13点の例である。スケジュールを作成して尿失禁は1年で消失した。3年目には行事以外は安定でき自傷が軽減した。この結果は、①本人の理解力にあわせた段階的学習 ②1つ一つの活動に見通しを持たせたこと③毎日の日課を本人が実施可能な活動で構成していったこと④刺激のすくない環境を提供したがあげられる。2部 強度行動障害
判定基準の改訂の検討について。強度行動障害評価基準改訂に関して、今年度は強度行動障害自体が個体素因と環境との交互作用による状態像であることから、環境情報が適切な支援には不可欠であるという認識のもと、50項目からなる最終案を作成した。第3部強度行動障害をもつ精神遅滞児の精神科医療ニード調査。中島分担研究者は、強度行動障害ハイリスク児を早期に発見し、予防的視点から適切な支援をおこなうことは重要であるとし、医療と連結した自閉症幼児早期療育部門において、療育とそれに続く学校教育に対して、一貫した療育情報を提供し、かつ行動悪化に対して早期に介入できる情報提供システムについて検討した。教師にアンケートをおこなった結果、この連携システムの有効性が確認された。また、強度行動障害で精神科入院医療を必要とする場合、医療がよく機能するためには施設での療育処遇との連携が必要であった。とくに、行動の制限について、施設での実施指針が必要であると考えられた。第4部 児童施設と学校教育との連携のあり方。21世紀の特殊教育の在り方について(最終報告)(文部科学省, 2001)では、「教育、福祉、医療、労働等が一体となって乳幼児期から学校卒業後まで障害のある子ども及びその保護者等に対する相談及び支援を行う体制を整備する」と連携の重要さを述べている。強度行動障害の援助に重要な児童施設における学校教育との連携の課題点を研究するため、全国から得られた自由記述の回答から、強度行動障害をめぐる連携の不十分さ、一般的な児童施設と知的養護学校との連携の不十分さ、連携での期待、連携の今後の方向性の4項目を整理した。強度行動障害での連携の不十分さでは「情報交換」、一般連携での不十分な実態では「指導方針の不統一」、期待では「教育内容の改善」、方向性では「相互の理解」がそれぞれ第一の課題とされた。いずれの設問でも、これらの項目は上位に位置していた。ここから、「共通理解」と表現される両組織での相互の無理解さと壁、さらに情報が共有されていないという「情報交換」の乏しさ、その前提の「連絡体制」の不備があり、その結果「指導の不統一」が恒常的である、という構図が浮かび上がった。情報交換・連絡など「話し合う」システムの創出が課題であり、その結果真の目標である「指導の統一」も可能になると考えられる。
結論
強度行動障害への援助について、ADHDの合併例、自閉症にトゥレット障害の合併例、それぞれ障害の特質からの支援が必要で有効であることが示された。また自閉症ではコミュニケーションや構造化を中心にした実践、随伴しやすい障害に注目した技法が開発された。医療からは、早期療育への医療の関与、医療の側からの行動制限への視点が呈示された。強度行動障害判定基準での環境記述の最終案が作成された。学校と施設の連携に関する全国調査が完了し、「共通理解」、「話し合いでの情報交換」、「指導の統一」という課題の枠組みが把握され、今後の連携への方向性が示唆された。

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