在宅痴呆性高齢者の環境適応の円滑化と介護負担軽減のための居住支援プログラムの開発に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000264A
報告書区分
総括
研究課題名
在宅痴呆性高齢者の環境適応の円滑化と介護負担軽減のための居住支援プログラムの開発に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
児玉 桂子(日本社会事業大学)
研究分担者(所属機関)
  • 足立啓(和歌山大学)
  • 児玉昌久(早稲田大学)
  • 下垣光(日本社会事業大学)
  • 潮谷有二(長崎純心大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
3,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
在宅と施設の環境と生活の継続性を念頭に置き、家族介護者や介護職員が取り組むことのできる住環境整備マニュアルや環境適応支援プログラムの開発を行い、痴呆性高齢者と介護者のQOLの向上を図ることが3年計画の本一連の研究の目的である。平成12年度は在宅痴呆性高齢者への調査に基づき、痴呆性高齢者の住生活の困難さと有効な住環境整備について明らかにする。また、大きなストレスに直面する在宅介護者に対し、在宅介護者が自らできるストレスマネジメントの提案を行う。平成13年度には、在宅から施設への円滑な移行を支援するために、グループホームなど小規模ケア施設の環境評価や痴呆性高齢者の転居適応援助を検討する。平成14年度は、一連の研究に基づき、痴呆性高齢者のための住環境整備マニュアル(住宅版・グループホーム版)および環境適応援助プログラムの作成を行う。以上の研究成果は、痴呆性高齢者と家族の地域での生活を支援し、ゴールドプラン21の重点課題である痴呆性高齢者支援対策に多大な寄与が期待できる。
研究方法
痴呆性高齢者の在宅ケア環境の研究が遅れている大きな原因として、適切な調査対象から、適正な回答を得ることが難しい現実がある。本研究では、すぐれたサービス提供機関とネットワークを持つ調査機関に実査の委託を行い、本研究グループは詳細調査や観察の実施および痴呆性高齢者の環境科学、行動科学、ストレス科学の専門的な面より詳細な分析を実施した。①わが国の8学会の痴呆ケアに関する論文508編を整理・分析して、痴呆性高齢者の在宅環境に関する研究の課題について分析した。②調査1:千葉、東京、愛知、島根、和歌山の諸地域で比較的充実した在宅サービスを利用して在宅生活を続ける痴呆性高齢者に、介護支援専門員を通じて、痴呆の症状や住生活上の困 難、住宅への環境配慮の実施とその効果等について調査を実施し、合わせて住宅図面上に住み方の採取も行った。この調査に基づき、痴呆性高齢者の住生活上の困難や痴呆の状態像に対応した住環境整備の効果の分析をした。③調査2:島根、愛知、東京にある住宅に近い環境のグループホームにおいて、調査1と同内容の調査を職員の協力により行い、また痴呆性高齢者の空間利用と介護支援について行動観察を行い、環境整備と介護者による援助の両面から居住支援をする重要性を検討した。④調査3:在宅介護者に対し、在宅介護者のためのストレス耐性自己診断スケールおよび高齢者ストレスチェックリストを用いた調査を実施し、在宅介護者が自ら行えるストレスマネジメントプログラムを検討した。
結果と考察
平成12年の研究では以下のような、痴呆性高齢者の在宅での生活を円滑にする環境整備と在宅介護者のストレス軽減のプログラムについて、6編の分担研究報告書の中で提案した。①わが国では、痴呆性高齢者の在宅ケア環境に関する研究がきわめて不備であり、早急に研究の蓄積が必要である、②痴呆性高齢者が在宅生活を継続するには、問題行動や住宅内事故、家族介護者の負担など大きな困難がある、③痴呆の状態像に対応した環境配慮を適切な時期に実施することが在宅生活継続に有効である。痴呆の状態像に対応して有効な、住宅整備の内容を明らかにした、④状態の変化が激しい痴呆性高齢者には、環境整備と介助者による援助の両面から居住支援をすることが有効である、⑤高いストレスに直面している在宅介護者のストレス耐性を高めるために、介護ストレスへの自己診断と介入プログラムを提案した。
結論
①従来の住宅改修は、歩行障害への
対応に重点がある。痴呆性高齢者にとっても環境整備は有 効であり、痴呆性高齢者への環境整備という新たな視点を介護保険の住宅改修に取り入れることにより在宅生活継続がより可能となる。②在宅介護者の共倒れや悲惨な家族崩壊などのニュースは後を絶たない。在宅介護者へのサービスの一環に、ストレスの自己診断や介入プログラムを取り入れることは、介護者がストレスへの耐性を高め、健康に在宅介護を継続することを可能とする。③痴呆ケアは、環境の影響を受けやすい痴呆性高齢者の行動特性に対応した環境配慮とあわせて提供することが重要である。本研究成果は、国が力を入れる介護職員の研修プログラムへの活用も期待できる。

公開日・更新日

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