高齢者のターミナルケアにおけるケア及びリハビリテーション技術の標準化に関する研究-「ハイリスク・体力消耗状態」の観点から(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000259A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者のターミナルケアにおけるケア及びリハビリテーション技術の標準化に関する研究-「ハイリスク・体力消耗状態」の観点から(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
木村 伸也(愛知医科大学リハビリテーション部)
研究分担者(所属機関)
  • 大川弥生(国立長寿医療研究センター老人ケア研究部)
  • 内富庸介(国立がんセンター研究所支所精神腫瘍学研究部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
3年間の研究期間において、高齢者のターミナルケアにおけるケア及びリハビリテーション技術を「ハイリスク・体力消耗状態」の観点から標準化することを目指す。これによって、疾患治療を担当する医師、リハビリテーションを担当する医師、リハビリテーション専門スタッフ(理学療法士、作業療法士等)、看護職といった、各職種が行なうべき対応を確立する。今年度は評価尺度を確立することを主な目的とし、「ハイリスク・体力消耗状態」を呈する原因として最もその頻度が高い末期癌についての研究を行なった。
研究方法
(1)ケア及びリハビリテーション・ニーズの予備的調査。
「ハイリスク・体力消耗状態」に対するリハビリテーションを行った末期癌患者について後方視的調査を行った。リハビリテーションを担当した医師による問診と診察記録から、疾患レベル、障害の各レベル(機能障害、能力障害、社会的不利、主観的障害)の問題点を調査した。患者とその家族が最も重視する以後の人生・生活上の希望と、疾患・障害の各レベルに対して行われたアプローチの内容から患者のニーズを分析した。
(2)包括的QOL評価法:「ハイリスク・体力消耗状態」を呈してリハビリテーションを行った末期癌患者25例に対して、包括的QOL評価法を用いて医師と他の専門職(ソーシャルワーカー)による評価を行った。検者間の一致度から信頼性を検討した。包括的QOL評価法の移動スコアとADLスコアの合計点とKarnofsky scaleとの相関を検討した。
(3)全身倦怠感の評価法:癌患者455名を対象として,POMS(Profile of Mood Status)の下位項目から全身倦怠感の評価を行い、これに対する人口統計学的指標、Performance Status(ECOG)、抑うつ(POMS)等の測定値の関連性を重回帰分析を用いて検討した。
結果と考察
(1)「ハイリスク・体力消耗状態」の末期癌患者60例に対する後方視的調査の結果、若年者では職業等の社会生活に関するニーズが高いのに対して、高齢者においてはADL介助や家庭・家族内での人間関係・役割等に関連するニーズが大きいことが示唆された。
(2)包括的QOL評価法:包括的QOL評価法による医師と他の専門職(ソーシャルワーカー)との一致度は平均94.4%であった。Karnofsky Performance Status Scaleと包括的QOL評価法の(現在の)移動スコアとADLスコアの合計点との間には0.83と有意に高い相関を認めた。包括的QOL評価法は信頼性も良好で、末期の癌患者に対しても有用な評価法と考えられた。末期癌患者及び家族が自己記録できる調査用紙と評価記録用紙を新たに作成した。
(3)全身倦怠感の評価法:全身倦怠感に関連する臨床的要因として、女性、高学歴、雇用状況、世帯数といった人口統計学的指標、Performance Status(ECOG)、抑うつが有意な関連を示した。この結果から全身倦怠感に関して、身体的要因のみではなく、抑うつに代表される精神的要因を含む多次元的評価の必要性が示唆された。
結論
(1)高齢末期癌患者ではADLと家庭・家族内での役割がそのQOL向上にとって重要であることが示唆された。
(2)末期癌による「ハイリスク・体力消耗状態」に対する包括的QOL評価法の有用性が示唆された。
(3)全身倦怠感について精神医学的要因を含む多次元的評価の必要性が示された。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-