文献情報
文献番号
200000252A
報告書区分
総括
研究課題名
関節疾患の原因の解明及び発症の予防・治療方法(総括研究報告書)
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 登(聖マリアンナ医科大学)
研究分担者(所属機関)
- 森本幾夫(東京大学)
- 田中廣壽(東京大学)
- 永渕裕子(聖マリアンナ医科大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
現在の日本は既に高齢化社会となっており、高齢者の健康的な生活を増進できる施策が望まれている。慢性関節リウマチ(RA)や変形性関節症(OA)などの多発性関節疾患は、高齢者の身体の障害を引き起こしさらに介護の必要度を増加させる。これら多発性関節疾患の病因・病態の詳細は未だ明らかではない。そのため現在の治療法では関節病変の進行を十分に抑制することは難しく、疼痛の緩和も十分ではない。RAではT細胞がRA発症の引き金となりまたRAの慢性炎症の維持に作用する。この異常な細胞はIFNgammaを産生するTh1型に分類され、Th1細胞特異的な転写因子Txkによりその機能が調節されている。RAのT細胞機能異常におけるTxkの果たす役割を明らかにし、アンチセンス遺伝子導入によりTxk の機能調節を行いRAのT細胞機能異常を是正することが可能であるかを検討する。さらにRAではCD45ROメモリーT細胞が炎症のエフェクターT細胞として重要である。CD45ROメモリーT細胞と選択的に反応する抗6C2抗体を開発し、その対応抗原である6C2分子及び6C2陽性T細胞の機能とRAの病態への関与を検討する。RA滑膜細胞では転写因子の過剰活性化がRA病態の進行、悪化に関与することを我々は指摘した。これら転写因子の異常活性化機構を解明し、グルココルチコイド受容体(GR)の機能の制御機構を分子レベルで解析して、転写因子活性を効率よく抑制する手法を開発する。さらにOAの初期に認められる軟骨細胞の増殖亢進に関わる転写因子を明らかにし、転写因子活性を抑制する手法をOAにも応用する。グルココルチコイドはGRと結合して作用を発現する。抗炎症作用は持つがグルココルチコイド作用は欠如する、副作用を解離する作用分離型GR作動薬の開発を目指して検討を行う。ウルソデオキシコール酸(UDCA)をプロトタイプ化合物として、グルココルチコイドの薬理作用を副作用と解離して選択的に発現させる薬剤の開発を目指す。これらの検討を通じて、関節疾患の原因の解明及び発症の予防・治療方法の確立を行う。
研究方法
Txkの発現の検討;人工関節置換術時に得られたRA患者膝関節滑膜組織を用いた。RA滑膜浸潤T細胞は滑膜組織より分離した。正常者末梢血よりCD4+T細胞を精製した。Txkの発現はウエスタンブロット法で検討した。RA滑膜組織におけるサイトカインとTxkの発現は免疫組織化学染色で検討した。6C2分子の検討;抗6C2抗体のガングリオシドへの反応性は薄層クロマトグラフィーとウエスタンブロット法で検討した。GD3 synthase、ST3、ST4、fucosylトランスフェラーゼをトランスフェクトした細胞を用いて6C2分子の発現を検討した。T細胞の血管内皮細胞内の遊走は2-チャンバープレートで検討した。T細胞の内皮細胞への接着はT細胞の単層HUVECへの接着により調べた。軟骨細胞が発現する転写因子の検討;マウスES細胞をゲラチンプレート、又はフィブロネクチンプレート上でbone morphogenetic protein (BMP)-2、BMP-4とともに培養した。軟骨組織に特異的に発現する転写因子とコラーゲンのmRNAは逆転写酵素を用いてPCR法で増幅した。作用分離型GR作動薬の開発;GRのDNA結合実験はグルココルチコイド応答性DNA配列(GRE)を用いてゲルシフト法を行った。GRとhsp90の相互作用は免疫沈降法により解析した。GRの細胞内局在は、免疫蛍光抗体法、green fluorescent protein 融合タンパク発現系を用いて検討した。GRの転写活性化作用はGRE配列を持つルシフェラーゼプラスミドを用いて測定した。GRの抗NF-kappaB作用はフォーボールミリステートエステル刺激下のNF-kappaB応答性レポーター遺伝子の発現から検討した。倫理面での配慮;血
液、関節液、滑膜組織を含む生体サンプルの実験について患者には研究目的や趣旨を十分説明し、インフォームドコンセントを得た上で行った。患者のプライバシーに関する情報の守秘義務を徹底するため個々の研究者は検体とID番号のみを用いて解析し、患者のプライバシーに関する情報が守られるように注意した。動物実験に関しては、実験前の飼育、実験中、実験後にいたるまで科学的かつ倫理的に対処し、動物の苦痛を排除するための麻酔による安楽死等の手法を用いた。
液、関節液、滑膜組織を含む生体サンプルの実験について患者には研究目的や趣旨を十分説明し、インフォームドコンセントを得た上で行った。患者のプライバシーに関する情報の守秘義務を徹底するため個々の研究者は検体とID番号のみを用いて解析し、患者のプライバシーに関する情報が守られるように注意した。動物実験に関しては、実験前の飼育、実験中、実験後にいたるまで科学的かつ倫理的に対処し、動物の苦痛を排除するための麻酔による安楽死等の手法を用いた。
結果と考察
研究成果および考案=Txkの発現の検討; RA滑膜組織ではT細胞浸潤部位にTxkの発現を認めた。RA滑膜浸潤T細胞では正常者末梢血T細胞に比べTxkの発現は亢進していた。RA滑膜浸潤T細胞からIFNgammaの産生を認め、IL-4産生は認めずRA関節局所ではTh1型サイトカイン過剰が認められた。RA滑膜組織においてIL-12, IL-18の産生を認め、Th1指向性のサイトカインによりTxkの発現は増強した。アンチセンスDNAを用いてTxk発現を抑制するとIFNgamma産生が抑制された。この成績はRAの病態形成にTxkが関与することを示し、アンチセンスDNAを用いてRAの治療が可能であることを示唆する。6C2分子の検討;6C2抗体はCD4メモリーT細胞サブセットと反応する。6C2抗体はGD3 synthase cDNAを導入した細胞にのみ反応し、6C2抗体は細胞表面GD3 分子を認識することが明らかとなった。正常者やRA患者の末梢血T細胞に比べ、6C2+T細胞はRA滑液に蓄積することが示唆された。6C2+T細胞がRA滑液中に多いことから6C2+T細胞のin vitroでのtransendothelial migration能について検討した。6C2+T細胞は非常にmigration能が高く、抗6C2抗体処理によりmigrationは減少した。この結果から6C2分子がtransendothelial migrationに重要なことが示された。軟骨細胞が発現する転写因子の検討;マウスのES細胞を分化誘導培養液中で培養し、球状のES細胞塊、embryoid body; EBを作成できた。EBをゲラチンプレート上でBMP-2あるいはBMP-4を添加し培養した。培養2週間目のEBでは、軟骨細胞に特異的なアルシアンブルー陽性領域が出現した。ゲラチンプレート上でBMP-2とBMP-4を添加した培養系では、約30?40%がII型コラーゲン陽性の軟骨細胞に分化した。BMP存在下に培養したEBでは軟骨細胞特異的な転写因子であるhigh-mobility-group box 蛋白であるSox-9、Hox 遺伝子, basic-helix-loop-helix 蛋白である scleraxis の発現を認めた。BMP非存在下ではこれら転写因子の発現は低下していた。これら転写因子を標的にして軟骨細胞分化誘導の調節が可能であることが示唆された。作用分離型GR作動薬の開発;UDCAは濃度依存性にGRを核内に移行させた。UDCA存在下で核内移行したGRはDNA結合することが可能で、UDCAのGRE依存性転写活性に与える効果はきわめて弱かったが、抗NF-kappaB作用はデキサメタゾンとほぼ同等であった。UDCAにおける抗NF-kappaB作用発現にあたってはGR依存性と非依存性の二つの経路の存在が示唆された。GR依存性経路に関し、UDCAは核においてGRとNF-kappaBの相互作用に影響を与えることが示唆された。各種GRの変異体を用いた解析から、UDCAの作用部位はGRのリガンド結合領域であるがデキサメタゾンの作用部位とは異なっていた。
結論
関節炎発症早期のRA滑膜浸潤リンパ球ではTh1細胞特異的転写因子Txkが過剰に発現していた。in vitroでtxk遺伝子の発現抑制によりTh1型細胞機能の抑制することができた。今後、in vivoでtxk発現抑制を行う手技を開発する必要がある。ES細胞から軟骨細胞を分化誘導する実験系を用いて軟骨細胞に特異的に発現する転写因子の発現を認めた。これらの発現はBMPにより増強し軟骨細胞の増殖分化と並行して変化した。これらを標的として軟骨細胞特異的にその増殖と機能を調節することが可能と考えられる。今後はこれら転写因子の発現のコントロールを目指す。CD45ROメモリーT細胞と選択的に反応する抗6C2抗体を開発した。6C2分子はデシアロガングリオシド, GD3分子であり、6C2/GD3分子はRA患者滑液T細胞に強発現し、抗6C2抗体前処置によりT細胞遊走能も抑制されることから、6C2/GD3分子及び6C2陽性T細胞はR
Aの炎症に重要な役割を演じていた。高齢者RAの新規治療法開発をめざして副作用の少ないステロイド剤、作用分離型GR作動薬の開発を検討した。UDCAはGRをDNA結合型に活性化して核に移行させるものの転写活性化作用を誘導せず、UDCAはGR依存性に抗NF-kappaB作用を有していた。UDCAを一例としてそのような薬剤の作成が可能であることが示された。本年度の成果に基づき、今後は新規治療法の開発を行う。
Aの炎症に重要な役割を演じていた。高齢者RAの新規治療法開発をめざして副作用の少ないステロイド剤、作用分離型GR作動薬の開発を検討した。UDCAはGRをDNA結合型に活性化して核に移行させるものの転写活性化作用を誘導せず、UDCAはGR依存性に抗NF-kappaB作用を有していた。UDCAを一例としてそのような薬剤の作成が可能であることが示された。本年度の成果に基づき、今後は新規治療法の開発を行う。
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