生活習慣・環境要因・遺伝素因からみた骨粗鬆症および脊椎骨折予防体制の確立(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000246A
報告書区分
総括
研究課題名
生活習慣・環境要因・遺伝素因からみた骨粗鬆症および脊椎骨折予防体制の確立(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 勉(和歌山県立医科大学公衆衛生学教授)
研究分担者(所属機関)
  • 坂田清美(和歌山県立医科大学公衆衛生学助教授)
  • 吉村典子(和歌山県立医科大学公衆衛生学講師)
  • 西沢良記(大阪市立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学教授)
  • 田原英樹(大阪市立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学助手)
  • 中塚喜義(大阪市立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学助手)
  • 森井浩世(藍野学院教授)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域住民の骨密度の経年変化を把握し、骨量喪失の危険要因を明らかにすること。レベル特異的な脊椎骨折評価法にreferenceを与え、日本人の椎体形状を考慮したレベルごとの脊椎骨折評価法を構築すること。骨量減少、脊椎骨折の発生に遺伝し要因が関連しているかどうかを明らかにすること。
研究方法
和歌山県M村において1988-89年に40-79歳からなる全住民を対象としてコホートを設定し、既往歴、食生活、運動習慣、飲酒喫煙状況など130項目からなるベースライン調査をおこなった。この集団から40-79歳の男女各年代50人、計400人を選び、対象者の同意を得て1990年にDual energy X-ray absorptiometry(DXA;Lunar DPX)を用いて腰椎L2-4、大腿骨近位部の骨密度を測定し、胸腰椎X線撮影を行った。今回10年目の追跡調査として、同じDXAを用い、同対象者に対して、同部位の骨密度を測定し、変化率を求めた。さらに胸腰椎側面エックス線撮影を行うとともに、血液調査を実施しビタミンD受容体遺伝子多型を測定した。
結果と考察
初回調査時における対象400人のうち、10年目の調査に参加したのは299人(男性137人、女性162人:参加率74.8%)であった。腰椎L2-4の骨密度変化率を年代別に見ると、この10年間の腰椎骨密度の低下率は、男性では40歳代から順に1.7%、5.5%、0.1%、-1.6%となり40-60歳代までは加齢によって骨密度の低下がみられず、70歳代でわずかに低下しているのみであった。女性では、腰椎骨密度の低下率は、40歳代から順に-8.7%、-8.4%、-4.8%、-4.8%となり、40、50歳代の低下率が60、70歳代の2倍以上となっていた。一方大腿骨頚部の骨密度低下率をみると、男性では、この10年間で40歳代から順に-2.6%、-1.3%、-7.5%、-11.7%となり、いずれの年代でも低下を認め、特に70歳代での低下率は極めて大きかった。女性でも40歳代から順に、-5.3%、-5.4%、-5.0%、-11.6%となり、70歳代での低下率が大きかった。この傾向は大腿骨近位部の他の部位でも同様であった。これにより骨密度の低下の割合は、部位により異なることが明らかになった。
次に10年前と今回において同世代の骨密度を比較した。男性の腰椎骨密度を10年前(初回)の世代と、今回の世代とで比較すると、腰椎L2-4の骨密度は50歳代で初回1.15g/cm2、今回1.21g/cm2、60歳代初回1.03/cm2、今回1.21g/cm2、70歳代初回1.31g/cm2、今回1.38g/cm2となり、他の年代では差はみられなかったが、10年前の60歳代と今の60歳代では、骨密度は今の60歳代の方が有意に高かった(p<0.05)。一方女性では、腰椎L2-4の骨密度は50歳代で初回0.99g/cm2、今回1.08g/cm2、60歳代初回0.86/cm2、今回0.90g/cm2、70歳代初回0.79g/cm2、今回0.82g/cm2となり、他の年代では差はみられなかったが、10年前の50歳代と今の50歳代では、骨密度は今の50歳代の方が有意に高かった(p<0.05)。この傾向は男女とも大腿骨近位部でも同様であった。これにより骨密度には世代間格差があることが明らかになった。
骨密度調査に参加した400人中、今回ビタミンD受容体多型結果が得られたのは、303人(男性140人、女性163人:75.6%)であった。ビタミンD受容体多型として、Bsm I 多型の群別頻度を見ると、男性では、BB2.9%、Bb27.1%、 bb70.0%であった。女性ではBB2.5%、Bb28.8%、 bb68.7%であった。これから、和歌山県一山村におけるVDR多型は男女いずれもbb型が最も多く、BB型が最も少ないことがわかった。各群間における腰椎骨密度変化率をみると、男性ではBB3.3%、Bb2.3%、 bb1.6%となった。女性ではBB-7.9%、Bb-3.7%、 bb-8.4%となり、男女とも各群間で有意な差はみられなかった。
女性のX線写真に、McCloskey-Kanisの判定基準法(McC法)を用いて日本人の椎体形状を考慮したレベル毎の脊椎骨折評価法を設定し、Degitaizing tabletを用いた半自動診断システムを暫定的に構築し、地域集団女性における脊椎骨折の有病率を求めたところ脊椎骨折の有病率は、いずれの年代でもMcC法では骨代謝学会基準と比較して低く、非レベル特異的脊椎こっせる評価法では偽陽性率が高くなることが示唆された。
結論
地域代表性のある一般住民を対象とした長期縦断研究から、若い世代で骨量が高い傾向にあること、すなわりコホート影響が初めて明らかになった。またビタミンD受容体多型としてBsm I多型別に骨密度変化を比較したが、骨密度変化率とVDR多型の間には有意な関連は認めがたい結果となった。

公開日・更新日

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