高齢者血管病に対する遺伝子治療ならびに内皮前駆細胞移植療法の開発―臨床応用を目指した基礎研究―(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000234A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者血管病に対する遺伝子治療ならびに内皮前駆細胞移植療法の開発―臨床応用を目指した基礎研究―(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
江頭 健輔(九州大学大学院医学系研究科心臓血管病病態制御学講座循環器内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 居石 克夫(九州大学医学部病理学)
  • 米満 吉和(九州大学医学部病理学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 動脈硬化・血栓症に陥った血管の再生修復を目指す新たな治療システムの構築は我が国の医療・医学的対策として推進すべき重要課題である。本研究の目的は、「高齢者血管病」の新たな治療体系を確立し、実際に臨床応用可能な臨床治験プログラム(遺伝子治療、骨髄由来内皮前駆細胞など)を構築し社会への貢献を目指すことである。
研究方法
研究方法ならびに結果=
1.“血管内皮細胞特異的に発見する新規遺伝子(日の丸遺伝子)の単離と機能解析"
我々は、substraction hybridization法を用いて血管内皮NO産生抑制によって増加する2個の新規遺伝子の単離に成功し、全長塩基配列を同定した。そのうちの一つは、心臓の発生分化に関与する転写因子CSXの下流にある新規転写因子であった。
2.新規遺伝子ベクターの開発と安全性試験
我々は国産センダイウィルスの開発に成功し、その特性を明らかにした。この新規センダイベクターは、1)遺伝子発現時間はアデノウィルスより数倍長く、2)繰り返し投与が可能である、などの点で優れていた。
3.遺伝子治療戦略の確立
我々は、変異型MCP-1遺伝子遺伝子(7ND mutant)がMCP-1によって誘導される単球の遊走能をdominant-negative inhibitorとして特異的に抑制すること、2)この変異型MCP-1遺伝子導入が鋼MCP-1遺伝子治療法として有用かつ安全であること、を明らかにした。
平成13年2月、臨床プロトコール「変異型MCP-1」遺伝子を用いた鋼MCP-1遺伝子治療法 ―冠動脈血管形成術後再狭窄の抑制を目指した臨床研究―」を九州大学医学部倫理委員会に申請した。
4.骨髄由来内前駆細胞移植療法による治療的血管新生
昨年度、内皮前駆細胞移植によって移植細胞が血管新生ならびに細胞壊死の抑制に貢献すること、この効果がVEGFを介していること、などを、心筋梗塞モデル(冠動脈結紮)や下肢虚血モデル(大腿動脈結紮)などを用いて明らかにした。
平成13年2月、臨床プロトコール「虚血性臓器障害に対する骨髄由来自家内皮前駆細胞移植療法」が九州大学医学部倫理委員会で承認された。
結果と考察
結論
考察ならびに結論
1. 新規遺伝子の単離に成功した。この遺伝子は既知のものであったがその機能は不明である。心臓の発生に重要な役割を果たす遺伝子である可能性がある。
2. センダイウィルスベクターの特徴を解析し、既存のアデノウィルスベクターと比較して、導入効率ならびに発現時間が長いことが明らかとなった。これらの知見はセンダイウィルスが血管壁遺伝子治療に有用なベクターであることを示唆する。
3. 変異型MCP-1遺伝子導入により生体レベルで遠隔臓器のMCP-1受容体が抑制できた。この抗MCP-1遺伝子治療によって、高コレステロール食負荷による動脈硬化やバルーン障害後再狭窄反応が抑制されることが明らかとなった。この遺伝子治療法がヒト再狭窄の遺伝子治療法となりうることが示唆された。
4. 細胞移植の臨床研究は平成13年度には開始される予定である。

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研究報告書(紙媒体)

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