国民の代表集団による高齢者のADL、生活の質低下の予防に関するコホート研究:NIPPON DATA (総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000212A
報告書区分
総括
研究課題名
国民の代表集団による高齢者のADL、生活の質低下の予防に関するコホート研究:NIPPON DATA (総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
上島 弘嗣(滋賀医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 飯田稔(大阪府立成人病センター)
  • 上田一雄(九州大学医療技術短期大学部)
  • 岡山明(岩手医科大学)
  • 笠置文善((財)放射線影響研究所)
  • 児玉和紀(広島大学)
  • 澤井廣量((社)日本循環器管理研究協議会)
  • 斎藤重幸(札幌医科大学)
  • 坂田清美(和歌山県立医科大学)
  • 柴田茂男(女子栄養大学)
  • 寺尾敦史(滋賀県今津健康福祉センター)
  • 中村好一(自治医科大学)
  • 堀部博(椙山女学園大学)
  • 簑輪眞澄(国立公衆衛生院)
  • 岡村智教(滋賀医科大学)
  • 早川岳人((財)長寿科学振興財団)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
厚生省循環器疾患基礎調査は本邦代表集団の循環器疾患危険因子の状況を知ることのできる唯一の調査であり、循環器疾患予防施策の基礎資料として活用されてきた。本研究は、この基礎調査の対象者を追跡することによって、循環器疾患危険因子と死亡、日常生活動作の低下との関連を明らかにすることを目的としている。
研究方法
本年度は第4次循環器疾患基礎調査(1990年)対象者の追跡調査を実施するとともに、昨年度行った第3次循環器疾患基礎調査(1980年)対象者の19年目の追跡調査結果を解析した。本研究の対象者は、平成7年度循環器病研究委託費「高齢者の循環器疾患による生活の質の低下予防策に関する研究」の対象者とほぼ一致しており、前回は基礎調査から5年目の追跡を行ったが、今回はその10年目の追跡を実施した。1995年に住居地が明らかとなり当時生存していた7,849名について、2000年時点での生死を調査するとともに、65歳以上の対象者については、基本的、手段的、社会的日常生活動作の調査を行った。死亡か在籍かの確認は、前回の居住市町村に住民票の閲覧を求めることによって行い、死因の同定に関しては人口動態統計の目的外使用の許可を総務庁から得た。第4回基礎調査の19年間の追跡調査結果は危険因子別に分析、検討を実施した。
結果と考察
第5回基礎調査対象者の追跡は、地理的条件によって各エリアの調査担当班員を決めて各自が住民票の閲覧請求を行った。この結果、生死の状況が明らかになった者は、7,849名中7,829名であり、追跡率は99.7%であった。在籍率(1995年と同一の住所に居住している者)は82.8%、転出率は11.2%、死亡率は6.0%であった。日常生活動作等の調査は、227ヶ所の保健所・保健センターに調査を依頼し、206保健所から調査協力の承諾を得て、2,505人の対象者のうち2,122人(84.7%)から調査票を回収した。
第4回基礎調査対象者の19年間の追跡調査結果からは以下の知見が得られた。① 1999年のWHOの高血圧管理基準は日本人集団においても循環器疾患死亡、脳卒中死亡の予測に有用であった。② 総コレステロールと虚血性心疾患の死亡は正の量・反応関係を認めたが、総死亡率、悪性新生物死亡率は負の関連を認めた。
③ 循環器疾患、糖尿病の既往歴は総死亡と正の関連を認めたが、家族歴は関連を示さなかった。④ 喫煙者が禁煙した場合の人口寄与危険度の減少割合は、肺がん、虚血性心疾患、心疾患、全死因の順であった。現在喫煙の非喫煙に対する肺がん死亡への相対危険度は男性で 6.8、女性で 3.7であった。⑤全死亡との関連が強い心電図所見は、心房細動、明らかなQ・QS波、高度ST低下の順であった。⑥女性の総蛋白高値群、男女のアルブミン高値群で総死亡、循環器疾患死亡が低かった。尿酸と総死亡は関連を示さなかった。⑦非飲酒群に比べて禁酒群の総死亡率は高かった。男性の高齢者では、卵、魚、肉を摂取する者の総死亡率が低い傾向を示した。⑧糖尿病は総死亡、循環器疾患死亡の危険因子であった。⑨追跡期間別に各危険因子の総死亡予測能力を検討すると、高血圧の予測能力は追跡期間とともに大きくなるが、低コレステロール、尿蛋白異常、心電図異常は追跡初期における予測能力が高かった。⑩65歳以上において、2000年時の日常生活動作の低下割合は男性で10.8%、女性で13.3%であった。
結論
1990年循環器疾患基礎調査対象者の10年目の追跡調査を実施し、生死判定の追跡、日常生活動作能力等において、それぞれ99%、85%という高い追跡率を達成できた。また1980年循環器疾患基礎調査の19年追跡の結果から、保健予防のみでなく、介護予防にもつながる多くの有益な知見が得られた。

公開日・更新日

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