介護支援専門員の介護サービス計画立案を支援するインタラクティブ(双方向)コンピュータシステムの開発に関する研究

文献情報

文献番号
200000192A
報告書区分
総括
研究課題名
介護支援専門員の介護サービス計画立案を支援するインタラクティブ(双方向)コンピュータシステムの開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
北島 英治(東海大学)
研究分担者(所属機関)
  • 藤林 慶子(北海道女子大学)
  • 西村 秋生(国立医療・病院管理研究所)
  • 岡田 進一(大阪市立大学大学院)
  • 岡田 まり(花園大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の第一義的目的は、介護支援専門員が介護サービス計画作成を効率的に行うための支援コンピュータ・エキスパートシステムを開発することである。介護サービス計画を作成する専門家(エキスパート)の介護サービス計画作成過程を研究することにより、専門家判断ロジックを分析し、コンピュータ支援エキスパートシステムプログラムを組むこができ、本研究の最終目標である介護支援専門員の介護サービス計画立案を支援するインタラクティブ(双方向)コンピュータシステムの開発が可能となる。
研究方法
平成12年度は、研究班会議を招集し、検討を重ね、以下のように研究調査を実施した。① 平成11年度に実施した課題分析並びに介護サービス計画作成に関する調査のデータベース(コンピュタ・データベース・システム(Visual BASIC&ACCESSプログラム、ライフネット・エンタープライズ社作成)をデータベースソフト MICROSOFT ACCESSへ移し、データクリーニングを行った。その後、MICROSOFT ACCESSのデータを解析ソフトSPSSへと移行させ、解析を行った。② 昨年度の調査協力施設・機関の専門家14名と課題分析票を作成している団体等の専門家7名、主任研究者・分担研究者5名の計26名によって、昨年度の調査結果から専門家判断ロジックを導き出すためのフォーカスグループを行った。③ 平成11年度に実施したアンケート調査結果のデータクリーニングを行い、MICROSOFT EXCELから解析ソフトSPSSへと移し、分析した。フォーカスグループの結果並びにアンケート分析結果から、介護支援専門員の専門家判断ロジックの参考資料となる調査票案を作成し、プリサーベイを実施した。プリサーベイは、A県における介護支援専門員研修会において実施した。④ サービス計画(プランニング)・システムのC++言語によるソフトウェアの開発を行った。
結果と考察
① 各方式の課題分析(アセスメント)票にある200~300以上の項目を介護支援専門員が精査し介護サービス計画を立てるためには、1時間30分以上の時間がかかることが分かった。しかしながら、その記入結果にもとづいて介護支援専門員は演繹的に介護サービス計画を導き出しているとは限らないことが本研究データ分析から検証することができた。介護支援専門員は課題分析方式の異なったものを利用したにもかかわらず、介護サービス計画はほぼ同じものであり、中にはまったく同じものもあった。そこで、居宅要介護高齢者への介護サービス種別の選定と、そのサービス量を決定する介護支援専門員(エキスパート)のロジックは、各アセスメント方式にかかわらない独立したロジックを使って実施していると推測できた。居宅高齢者の「介護サービス計画」を行うために、必須アセスメント項目数を30~40に限定することが可能であると考え、今後その最終選定を行う。② 今後、必須項目数を限定し、介護支援専門員の介護サ-ビス計画のロジックをコンピュータに組み込み、コンピュータ・エキスパート・システムとして開発すること開始する。介護サービス計画の介護支援専門員(エキスパート)のロジックは、今回の調査研究結果から、そのエキスパートのロジックは、必ずしも線形モデルとは限らないことが推測できた。③ 本研究では、近年開発されてきたソフト・コンピューティング(ニューロ・コンピューティングとファジーロジック)を応用する。前者においては、バックプロパーゲーション・アルゴリズムとなる。そこで、「アセスメント項目」「要介護度認定限度額」「負担可能額」「家
族の要望」等を入力とし、出力として各種の介護サービス種別(「居宅介護(身体)サービス」「介護(家事)サービス」「訪問看護サービス」等)とその量をコンピュータが決定し、最終支払い介護費用を計算して、介護支援専門員と利用者に提示する。その結果を見て、介護支援専門員がインタラクティブ(双方向)に変更し、介護支援専門員と利用者が納得のいく最終結果を導き出するコンピュータプログラムを開発することが、今後可能となった。④ そのコンピュータ支援プログラムの、計算システム(Bの部分、報告書内の図)は、ほぼ完成した。今後は、入力部分のシステム(Aの部分)を開発し、前者と合体したエキスパート・システムのプログラムを開発する。⑤ 本研究の分担研究からは、エキスパートのロジックを模索するためのフォーカスグループ、アンケート調査等から新たな調査票案を作成した。この調査票案は、介護支援専門員が介護サービス計画を作成するにあたって、なぜそのサービスをその利用者に結びつけるかという専門家のロジックを言語化していくことを目的としたものである。調査票案をA県における介護支援専門員研修会において使用した結果、介護サービス計画立案の意識化、言語化の調査票案は、エキスパートの専門家判断ロジックを導き出すだけではなく、介護支援専門員の研修会においても研修効果を上げることがわかった。つまり、普段の業務の中で、意識しないで介護サービス計画を立案している意識し、言語化することにより、介護支援専門員の質が向上することが示唆できた。
考察としては、① 介護支援専門員の作成する介護サービス計画は、非線形性モデルを使用して作成する必要があることがわかった。本研究では、ニューロ・コンピューティング(バックプロパーゲーション)とファジー理論を応用することが有用であることが示唆できた。現在使用されている各方式の課題分析項目数よりも少ない項目で介護サービス計画が作成可能であると示唆できる。介護サービス計画作成に必要な最小限数の課題分析項目についての選定は、今回の研究により可能であると考える。ただし、これは現在使用されている各方式を否定するものではなく、最小限の項目によって介護サービス計画を作成し、介護支援専門員の業務負担を軽減できるということであり、より詳細な介護サービス計画を作成するためには、やはり多くの項目が必要であるともいえる。② フォーカスグループの結果からは、専門家判断ロジックは存在しているが、それを詳細に言語化していくためには、時間数をかけなければならないことがわかった。しかし、エキスパートの抽象化したロジックは抽出可能であると考え、今後もフォーカスグループの開催等によるロジックの明確化の必要性が示唆された。③ プリサーベイの結果から、今回作成した専門家判断ロジックの参考資料となる調査票案は、介護支援専門員研修会の研修資料としても有用であることがわかった。来年度は調査票案を訂正し、専門家判断ロジックを導き出せ、研修にも役立つ調査票を作成し、調査を実施する必要がある。④ サービス計画(プランニング)・システムのソフトウェア開発は、現在市販されているソフトよりもはるかに安価に作成できると考える。今回はまだテスト版であるが、今回開発したシステムをCD-ROMにして、報告書の巻頭に添付している。
結論
本研究により、①アセスメント項目の簡便化による介護保険制度の円滑な運用に資すること、②科学的に介護保険制度の諸費用を計算できることから、介護保険制度の費用推計等への応用の可能性が示唆できること、③各地域、介護支援専門員の経験等による介護サービス計画のばらつきを最小限に押さえることが可能となること、④介護支援専門員の研修会等への応用が可能となり、介護支援専門員の質の向上に資すること、が可能となるものと考える。来年度は、最終年度として、インタラクティブ・コンピュータシステムの完成を目指す予定である。

公開日・更新日

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更新日
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