老年者高血圧の治療と予後に関する研究

文献情報

文献番号
200000167A
報告書区分
総括
研究課題名
老年者高血圧の治療と予後に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
萩原 俊男(大阪大学大学院医学系研究科生体制御医学専攻加齢医学)
研究分担者(所属機関)
  • 日和田邦男(愛媛大学医学部第二内科)
  • 松本正幸(金沢医科大学老年病学)
  • 松岡博昭(濁協医科大学循環器内科)
  • 瀧下修一(琉球大学医学部第三内科)
  • 島本和明(札幌医科大学第二内科)
  • 島田和幸(自治医科大学循環器内科)
  • 阿部 功(九州大学医学部第二内科)
  • 金 承範(東京大学医学部加齢医学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高血圧は、我国死因の2位、3位を占める脳卒中、心臓病を含む全ての循環器疾患の最も重要な危険因子である。加齢とともに高血圧の有病率は著しく増加し、厚生省国民栄養調査によれば、世界保健機構/国際高血圧学会の高血圧診断基準である収縮期血圧140 mmHg以上あるいは拡張期血圧90 mmHg以上の同年齢に占める割合は、50歳代で男女とも60%を超え、70歳以上では70%を超えており、また受病率も全疾患を通じて第1位である。未會有の高齢社会を迎える我国において本症は最も重要な治療対象疾患であり、その取り扱いは大きな社会的関心事となっている。後述する如く、欧米諸国においては老年者高血圧における脳卒中、心疾患の発症・死亡に対する降圧薬治療の有効性が多くの大規模介入試験により実証されている。欧米諸国に比して我が国においては心疾患の発症・死亡が少なくまた脳卒中の発症・死亡が多いこと、食塩摂取量が依然多いことなど生活習慣を異にすること、また降圧薬では利尿薬やβ遮断薬の使用頻度は少なく、逆にカルシウム拮抗薬やアンジオテンシン変換酵素阻害薬の使用頻度が高いことなど、本症の疾患拝啓は欧米とは大いに異なり、本邦独自の老年者高血圧を対象とした大規模介入試験の必要性が強く唱えられている。本研究班が中核となり実施する老年者高血圧を対象とした予備的介入試験は、我が国の老年者高血圧における脳心血管疾患などの発症・死亡の軽減に対する降圧薬治療の有効性を明らかにするのみならず、我が国の老年者高血圧における治療対象年齢、至適降圧目標値、降圧薬の選択、臓器障害との関連、痴呆進展予防、あるいは発癌性との関連などを明らかにしうる。本研究によって得られる成果は、本格的な大規模介入試験への予備的資料として、我が国における老年者高血圧治療の指針を提示しうるとともに、老年者の死因に直結し、かつ寝たきりの原因疾患としても重要であるである脳卒中あるいは心血管疾患の発症予防における実質的な指標を提示し、本邦老年者の循環器疾患による死亡率の低下、要介護状態の軽減など、間近に迫った超高齢社会における医療、福祉の向上に資す。
研究方法
班全体の課題として、本邦において老年者高血圧治療介入試験のパイロット試験を行い、本格的な大規模介入試験への予備的資料とする。すなわち60歳以上の老年者高血圧例に対し、① 持効性ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬(アムロジピン)、② アンジオテンシンI 変換酵素阻害薬(1日1回型、エナラプリル、イミダプリル、テモカプリル等)、③ 利尿薬(サイアザイド)、④ アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ロサルタン、カンデサルタン)を各施設に振り分け、各参加施設毎に対象降圧薬群の背景が均等になるよう症例の登録を行い、3年間の経過観察を行う。脳心血管事故(event)の発症、死亡をprimary endpointとする。その他副作用、維持率を検討し、老年者高血圧に適した降圧薬の検討を行う。また至適到達血圧値につき、EWPHE研究で示されHOT研究では認められなかった過剰降圧に新規脳心血管合併症の増加すなわちJ型現象の有無につき、降圧薬群間の差異を検討する。さらに、登録例の既存合併症、臓器障害との関連、痴呆の進展に対する降圧薬治療の有効性についても解析する。また一部降圧薬の問題点として論議されている虚血性心疾患の増悪や出血、癌の発症に関して各降圧薬につ
き解析する。長期予後調査にあるいは班員個別臨床研究に参加登録を行う老年者(必要であれば家族にも)に対しては、当該調査の目的、内容につき充分な説明を行い、自由意志参加の原則を厳守するとともにインフォームドコンセントを得る。さらに、高血圧治療に関しては、「老年者高血圧の治療ガイドライン」に従って降圧薬を用いた治療を実施し、倫理面においても何ら問題になる内容ではない。
結果と考察
研究結果=本研究事業の初年度として全国9班員により持効型カルシウム拮抗薬238例、アンジオテンシンI変換酵素阻害薬250例、利尿薬174例、およびアンジオテンシンII受容体阻害薬233例の登録登録例の1年間の経過観察を終えた。現在3年間に渡る長期予後、副作用、維持率につき検討中である。
結論
本研究事業により得られる成果により老年者高血圧に適した降圧薬、年齢別至適到達血圧値、J型現象の有無、痴呆進展予防への効果、発癌の問題等につき明らかにする。

公開日・更新日

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