肥満、糖尿病、胆石症の新しい関連遺伝子、コレシストキニン-A受容体遺伝子

文献情報

文献番号
200000165A
報告書区分
総括
研究課題名
肥満、糖尿病、胆石症の新しい関連遺伝子、コレシストキニン-A受容体遺伝子
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
宮坂 京子(東京都老人総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 船越顕博(国立病院九州がんセンター)
  • 上垣佐登子(東京都老人医療センター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 長寿科学総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
-
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生活習慣病は、遺伝的要素と生活習慣の相乗または相加効果によって発症し増悪する。また、生活習慣病は、単一遺伝子異常によって生じる遺伝子病ではない。今回我々が提起したCCK-A受容体遺伝子異常という病態も、単一の原因とはなりえないと思われるが、運動不足、過食などが重なった場合、または、別の遺伝子異常が存在した場合、生活習慣病の発症頻度が増加する可能性が高い。ハイリスクの個体を早期に発見し、適切な指導をおこなうことにより、疾患の発生を予防することができれば、本人、家族、社会にとって、非常に有意義である。さらに遺伝子ターゲッティングマウスを用いて、病因、病態の追及の手段としても用いている。
研究方法
CCK-A受容体遺伝子プロモーター領域の塩基置換(G→T:-128, A→G:-81)の有無を検討する簡便なるPCR-RFLP法で、ホモ異常(T/T, G/G)が、肥満の新しいSNPであることがわかったので、SNPと肥満との因果関係をしらべる。塩基置換はプロモーター領域なので、できあがるアミノ酸は変化しないことから、転写活性を測定する。ホタルルシフェラーゼをreportor geneとして、各種のDNA断片をSTC-1細胞にtransfectする。また、CCK-A受容体遺伝子は、CG配列をもつので、メチル化の状態と遺伝子発現を、還元法+sequence法およびcompetitive PCRで測定する。CCK-A受容体遺伝子ノックアウトマウスの食餌内容を変化させ、病態の発現をしらべる。
結果と考察
プロモーター領域の塩基置換(G→T:-128, A→G:-81)によっても、転写活性はほとんど影響をうけなかった。膵臓がんのサンプルから、癌部では、CCK-A受容体遺伝子発現が増加し、同時に脱メチル化がおきていることを確認した。胆嚢サンプルについては、ホモ多型(T/T, G/G)はまだ1例しかないが、メチル化が高度におきていて、遺伝子発現が野生型より低かった。以上のことから、CCK-A受容体遺伝子多型は、遺伝子発現が低下し、結果的に受容体機能が低下していることが予測された。繁殖用飼料(タンパク、脂肪含有量が数%高いが熱量は同じ)を1年投与したところ、ホモ欠損マウスで胆石形成がみられた(オッズ比>11)。
結論
CCK-A受容体多型は、肥満の新しいSNPである。CCK-A受容体多型を有する個体は、成人後の肥満を生じる可能性が高く、生活習慣病の危険因子であり、胆石形成にも深く関与する。

公開日・更新日

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