がん治療のための新技術の開発

文献情報

文献番号
200000127A
報告書区分
総括
研究課題名
がん治療のための新技術の開発
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
垣添 忠生(国立がんセンター中央病院)
研究分担者(所属機関)
  • 荒井賢一(東北大学電気通信研究所)
  • 小林寿光(国立がんセンター中央病院)
  • 荻野尚(国立がんセンター東病院)
  • 徳植公一(国立がんセンター中央病院)
  • 森谷宜皓(国立がんセンター中央病院)
  • 笹子充(国立がんセンター中央病院)
  • 藤元博行(国立がんセンター中央病院)
  • 渡邊昌彦(慶応大学付属病院)
  • 小山博史(京都大学付属病院)
  • 浅村尚生(国立がんセンター中央病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 がん克服戦略研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
65,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん治療のための新技術の開発と、物理的手法の応用と、手術手技の開発という二つの方向から進める。物理的手法としてはマイクロ・マシーンの応用、陽子線、MM50により放射線治療を開発、発展させる。根治性の向上など手術手技上の工夫により治療成績QOLの向上をはかる。
研究方法
「がん治療のための新技術の開発」を二つの研究方向から進める。(1) 物理的手法による新しい治療技術の開発を目的として、マイクロ・マシーン、陽子線、MM50をとりあげた。医療用マイクロ・マシーンの開発はワイヤレスで自走能を有するマイクロ・ロボットの開発と、内視鏡鉗子の先端を自由に動かせるマイクロ・マニピュレーターの開発の2方向で研究を進める。前者はマイクロ・カプセル化したマシーンを強磁場下におくことにより自走能を発揮させ、あわせて体内でのマイクロ・マシーンの位置を正確に把握することから出発する。後者はヘリカルCTで発見される小肺がんの診断・治療プロトコールを進める。CTガイド下に気管支鏡を患部の近傍まで進め、その先端部の操作性をマイクロ・マニピュレーターの導入により飛躍的に向上させる。結果として生検や小線源治療など、小肺がんの診断、治療体系を確立する。MM50は中央病院で新たに稼働している高エネルギーのマイクロトロンで、種々のエネルギーのX線、電子線を使ってがんに対する線量集中性を高める。強度変調照射法をX線のみならず電子線にも広げ、線量分布のさらなる改善をめざす。当初、後腹膜リンパ節など広い領域を治療対象として臨床試験を開始する。陽子線治療はすでに開始している頭頚科、肺、肝領域における照射実績を上げる。(2)新しい外科手術法の開発は、伝統的な開放手術での工夫、腹腔鏡手術の工夫に加え、がん外科手術にロボット外科手技を導入する試みを新たに展開する。前者は開放手術により、大腸・直腸がん、胃がん、泌尿器がんを対象に機能温存手術、リンパ節郭清の意義、根治性の向上などの各テーマにつき手術手技上の工夫をこらす。後者は冠状動脈など微細な吻合にもっとも威力を発揮するロボット外科の技術が、がん外科のどの領域に利用できるか、肺がん、食道がん、直腸がん、前立腺がんなどを対象に技術的研究からとりかかる予定である。
結果と考察
1)気管支鏡下擦過細胞診用のディスポーザブル・ブラシの先端に希土類小磁石を装着した場合、3次元で磁場をかけると、先端は自由に屈曲させることができた。また、気管支、尿管などの体腔模型を使用した誘導実験では、ブラシを目的の部位に自由に誘導できた。磁気装置としては、人が入れるよう内部の間隙は60cm以上、磁場は1kエルステッド以上、重量は3トン以下で、かつ治療手技を行なうため、CTやX線透視装置との併用が必要である。この機器のコンセプトを開発した。この技術は 内視鏡診断・治療や、血管カテーテル診断・治療に応用することが可能である。2)陽子線治療装置を使い、これまでに頭頚部がん26例、肺がん7例、肝細胞がん12例、前立腺がん1例を治療し、短期的には良好な結果を得ている。呼吸性移動の制御法も開発されたことより、さらに症例数をふやし、臓器を拡大して陽子線治療の有用性を明らかにできる。3)広汎切除法を実施した22例の前立腺がんでは、従来法で手術された127例に比して、PSA再燃に関して良好な結果であり、合併
症に差を認めなかった。局所進行前立腺がんに対する内分泌療法を併用した広汎切除術の有用性が確立できそうである。
結論
三次元磁気誘導装置の開発に成功した。当面、ヘリカルCTで発見された早期肺がんの診断、治療に集中して装置の完成を目ざす。肝がん、頭頚部がん、肺がんに対する陽子線治療の有用性を明らかにしつつある。局所進行前立腺に対する内分泌療法併用拡大手術も有用性が明らかにされつつある。

公開日・更新日

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