国際保健医療協力における開発調査実施手法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200000113A
報告書区分
総括
研究課題名
国際保健医療協力における開発調査実施手法の開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
我妻 堯(社団法人国際厚生事業団)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 敏彦(国立医療・病院管理研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 社会保障国際協力推進研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
5,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国は、社会保障分野の国際協力においては、従前まで、個々のプロジェクトを想定しての限定的な開発調査に基づく無償資金協力及び技術協力を実施してきたのが現状である。
一方、欧米諸国や国連機関等は開発途上国全体の開発計画を策定し、その計画に基づき、個々のプロジェクトを実施してきている。さらに、近年、欧米諸国や国連機関等は、ドナー協調を指向し、その中においても、まず全体的な開発計画を策定し、その計画に基づき、個々の役割を分担し、プロジェクトを実施してきている現状にある。
我が国が今後、これら欧米諸国や国連機関等と協調して、あるいは、伍して、本件分野の国際協力を推進していくためには、現在のような一つのプロジェクトを想定しての限定的な開発調査に基づく個々のプロジェクトの実施から、欧米等と同様な手法でのアプローチが必要不可欠であるが、そのためには我が国が独自に「全体的な開発計画」を策定し提案していくことが必須条件となってくる。
本研究においては、社会保障分野の国際協力の中核となる保健医療分野の国際協力を題材に「全体的な開発計画」、すなわち、開発途上国の「国家保健医療総合計画」策定のための手法を研究することとする。
具体的には、本研究においては、国家保健医療総合計画策定手法の「マニュアル」とその手法を簡便に利用するための「テンプレート」(様式)を完成させることを目的とする。
本研究により完成されるマニュアルとテンプレートを活用することにより、和製の「国家保健医療総合計画」の策定が可能となり、ドナー協調型支援において、右総合計画を各国に提案していくことにより、我が国のプレゼンスとイニシアティブを発揮することができるばかりでなく、個々のプロジェクトの検討においても、当該国全体の保健医療の現状から問題点の把握、解決方策の提言、将来計画の想定といった総合的な取組みが可能となり、従前に比して、より効果的な支援の実施が可能となる。
また、従前まで限定的な開発計画のみが実施されてきた背景には我が国の保健医療分野コンサルタントの育成が立ち遅れていたことは否定できないが、本研究の成果である国家保健医療総合計画策定の「マニュアル」と「テンプレート」の提供が右コンサルタント育成の特効薬になり、ひいては、効果的な保健医療分野支援の実施につながることが期待される。
研究方法
第1年度
・開発途上国の国家保健医療総合計画の研究
今までに策定された開発途上国の国家保健医療総合計画を収集し、その内容を調査分析することにより、これまでの計画策定手法を研究することとする。
・ 開発途上国の現地調査
上記の調査分析により、理想的な計画策定手法仮案(マニュアル案及びテンプレート案)を策定、その後、開発途上国1カ国程度(従前まで多くの援助が入っていない国を想定)を訪問し、マニュアル案及びテンプレート案を活用し、国家保健医療総合計画策定のシュミレーションを実施することにより、案の適合性を検討することとする。
第2年度
・欧米各国及び国際機関等の研究の調査分析
欧米各国及び主要な国際機関等の実施した本研究に類似する研究の成果を収集し、その内容を調査分析することにより、欧米の現在の計画策定手法を研究する。
・ 第1年度に策定した計画策定手法案の改訂
先進国の研究事例により改訂し、より現実的なマニュアル及びテンプレートを策定する。
第3年度
・ 開発途上国におけるモデル計画案
第2年度に改訂されたマニュアル及びテンプレートに基づき、開発途上国1カ国程度(従前まで多くの援助が入っていない国を想定)を訪問し、国家保健医療総合計画策定調査を実施し、モデル計画骨子を策定することにより、マニュアル及びテンプレートの完成度を検討することとする。
・ 国家保健医療総合計画策定のためのマニュアルとテンプレートの完成
調査研究を通じてマニュアルとテンプレートを完成させることとする。
結果と考察
本研究は3ヵ年を通じて、国家保健医療総合計画策定手法の「マニュアル」とその手法を簡便に利用するための「テンプレート」(様式)を完成させることを目的とし、第1年度における開発途上国の国家保健医療総合計画の研究及び計画策定手法原案(マニュアル案及びテンプレート案)を策定及びその後の開発途上国(バングラデシュ)の現地調査を通じて、仮案の適合性の検討を受けて第2年度は世銀、国連開発計画、USAID等の保健医療総合開発計画策定手法を比較検討し、昨年度策定した原案を発展させた保健医療総合開発計画策定のためテンプレート案(策定見本)を策定した。開発途上国の「国家保健医療総合計画」の策定は途上国自身が行うというよりも、世銀等の国際機関、USAIDなどドナー諸国の援助機関による技術協力によって為されることが多いと言える。これは、いわば、グローバルスタンダードともいうべきもので、欧米のドナー諸国、国連機関等は、ほぼ同様な形での計画策定をしていると言える。 一方、我が国の政府開発援助で実施してきた過去の保健医療分野国際協力においては、このようなアプローチは皆無であると言ってよく、欧米諸国が実施している計画策定が全体的な包括的なものであるのに対して、日本のそれは、限定的なものであるという評価が国際社会の中では成り立っているといえよう。日本の場合、対象国の全体に対して開発計画を策定するのではなく、より具体的な無償資金協力や技術協力プロジェクトを想定して、それに関わる事項のみを調査するといった手法であることが昨年度の研究によって、明らかになっている。国際社会はこのような日本のアプローチが国際社会の中で異質であると感じていると同時に援助国のコーディネーション、いわゆる、ドナー協調に日本が積極的に参加することを期待していることが昨年度の調査研究でも明らかになっているが、今年度3カ国(ベナン、カンボジア、モンゴル)の開発途上国に対する聞き取り調査の結果、以下の点が開発計画策定に関連し、開発途上国が関心を有していることが判明した。1 長期及びセクター全体に関わる計画の必要性2 開発の基本方針の確定3 主体性の確保今回、策定したテンプレート原案は欧米各国が開発調査を実施する際にどのようなことを調査するのかをまとめるとともに、その策定の方針に関連し、上記の開発途上国の関心事項をももりこんだものである。
結論
本研究により完成されるマニュアルとテンプレートを活用することにより、和製の「国家保健医療総合計画」の策定が可能となり、ドナー協調型支援において、右総合計画を各国に提案していくことにより、我が国のプレゼンスとイニシアティブを発揮することができるばかりでなく、個々のプロジェクトの検討においても、当該国全体の保健医療の現状から問題点の把握、解決方策の提言、将来計画の想定といった総合的な取組みが可能となり、従前に比して、より効果的な支援の実施が可能となる。
また、従前まで限定的な開発計画のみが実施されてきた背景には我が国の保健医療分野コンサルタントの育成が立ち遅れていたことは否定できないが、本研究の成果である国家保健医療総合計画策定の「マニュアル」と「テンプレート」の提供が右コンサルタント育成の特効薬になり、ひいては、効果的な保健医療分野支援の実施につながることが期待される。
今年度において、策定された「要領」及びテンプレート原案が既に現状のわが国の保健医療協力における各種開発計画の策定に役立つことから、広く配布し、活用を促すこととしたい。

公開日・更新日

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