治験コーディネーター業務に関するガイドライン等作成のための研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000096A
報告書区分
総括
研究課題名
治験コーディネーター業務に関するガイドライン等作成のための研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
堀内 龍也(群馬大学)
研究分担者(所属機関)
  • なし
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新しい「医薬品の臨床試験の実施の基準」(GCP)が施行されてから3年が経過した。しかし、医療機関における治験の実施・支援体制の整備は遅れており、全国的に治験は進みにくい状況が続いている。その結果日本の製薬メーカーの医薬品開発が海外優先で行われる傾向はいよいよ明確になっている。このような状況は、日本における新薬開発の遅延のみならず、日本の医療に重大な影響を与えることが危惧される。
日本の医療機関における治験実施・支援体制の整備は始まったばかりであり、厚生省が国立病院に、文部省が国立大学病院に臨床試験部あるいは治験管理センターを設置し始めている段階である。
治験を進めるうえで、治験コーディネーター(CRC)が極めて重要な役割を果たすことが先進的な医療機関の例で明らかになっている。特に、日本における治験においては、歴史的背景から、看護婦とともに、薬剤師CRCが大きな役割を果たしている点が欧米と大きく異なる点である そこで、日本における治験の実施・支援体制について現状を把握するとともに、欧米の治験の実施体制と比較して、より日本の土壌に合ったCRCのあり方を検討する。その結果に基づき、CRC業務についてのガイドラインを作成する。さらに、CRCの業務範囲や責任を明らかにして、資質の高いCRCの養成・研修のあり方についても検討する。これらのことにより、日本における治験の質および量の飛躍的向上を図ろうとするものである。
研究方法
アンケート調査については全国の病院にアンケート調査を行う前段階として、ほとんどの病院で新薬の開発治験を実施している国立大学病院における実態調査を行った。なお、この調査は国立大学病院薬剤部長会の協力の下に行われた。2000年7月に全国42国立大学病院薬剤部に解答用紙を送付して、6月分の実績についてデータを回収し、このデータと1999年に実施された我々の行ったアンケート調査のデータと比較した。米国における薬剤師CRCの活動状況の調査については、研究スケジュールの関係から、丁度米国における治験実施状況を視察に渡米する山本康次郎群馬大学医学部臨床薬理学助教授・附属病院副薬剤部長および高柳理早東京大学医学部附属病院薬剤部治験薬管理主任に調査を依頼し、Cedars-Sinai Medical Center, UCLA Hospital, VA Sierra Nevada Health Care Systemの西海岸で代表的な3病院について調査を行った。「薬剤師CRC養成教育ガイドライン」の作成については、研究協力者と日本病院薬剤師会新GCP対策委員会の協力を得て、2回の研究打ち合わせ会を開催して討議して、ガイドライン(案)を作成した。今後このガイドライン案に則ってCRC養成研修を実施し、より質の高いガイドラインにして刊行する予定である。
結果と考察
今回行ったアンケート調査のデータと1999年に我々の実施したアンケート調査のデータと比較した。結果については資料1を添付した。この比較から新規に開始する治験の件数が各病院とも大幅に減少している事が明確になった。また、CRCを配置してある病院でもCRCの数は病院間に格差があり、全体としてまだまだ不十分であることが示された。CRCのうち、薬剤師と看護婦の割合はほぼ同数であるが、薬剤師CRCは、看護婦が行っているような治験協力者に対する対応と担当医の支援のみでなく、治験依頼者との対応や資料の収集、治験担当医師への伝達、IRBの準備、プロトコール内容のチェックなど多様な業務を行っており、治験を実施するうえで大きな役割をしていることが明確に示された。
米国における薬剤師CRCの活動状況の調査については、Cedars-Sinai Medical Center, UCLA Hospital, VA Sierra Nevada Health Care Systemの3病院について調査を行った。日米間で薬剤師と看護婦の治験における役割は大きく異なっていることが報告されている。看護婦CRCの業務は患者リクルート、データ収集、および症例報告書の作成などであり、基本的には医師のサポートを行うための人員である。一方、薬剤師の場合はinvestigatorとして治験実施チームに参画する。従って、患者のインフォームド・コンセントをとったり、検査データを管理して症例報告書の作成にも参画する。従って、個々の薬剤師が責任をもってプロトコールを読み、勉強し、試験実施に参画することになる。報告書を資料2として添付した。
薬剤師CRC養成のためのガイドラインの作成については、協力者と協議を行い、案(資料3)を作成した。日本においては薬剤師CRCは看護婦CRCと同等の医師支援業務に加えて治験プロトコールの妥当性のチェック、治験中の副作用発現のチェック、進行状況のチェック、TDMによる薬効と副作用発現の予測などが求められている。今後の課題としては薬物代謝酵素などの遺伝子多型の同定とそれに基づく個体差の評価などがあり、これらをふまえた研修教育が必要であろう。
結論
日本における治験を推進するためは質の高いCRCを養成し、多くの病院に配置することが急務であることが明確になった。CRC養成のためのガイドラインはまだ統一したものがないので、ガイドラインのたたき台を作成した。今後も様々な視点から検討し、完成度の高い統一的な指導書の作成が必要である。 ガイドラインに従って多くの優れたCRCが輩出し、多くの医療機関で活躍することにより、日本独自の優れた医薬品が日本の治験から生まれることが期待される

公開日・更新日

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