ブドウ球菌毒素による食中毒予防に関する研究

文献情報

文献番号
200000076A
報告書区分
総括
研究課題名
ブドウ球菌毒素による食中毒予防に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
山本 茂貴
研究分担者(所属機関)
  • 品川邦汎
  • 浅尾努
  • 武士甲一
  • 藤原真一郎
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
迅速かつ安価な、さらに簡易で毒素回収の良いブドウ球菌エンテロトキシン検出法として、VIDAS法、RIDA法、TP法、及びRPLA法を用いてTCA(トリクロロ酢酸)による抽出・濃縮方法を検討した。
研究方法
試料は市販牛乳(乳脂肪分8.3%以上、無脂乳固形分3.5%以上)を用いた。
標準SEはToxin Technology社の精製SEAおよび岩手大学でEscherichia coli発現系を用いて産生・精製したSEAを用いた。
SE検出キットはVIDAS Staph Enterotoxin(BioMeriux),Transia Plate staphylococcal Enterotoxins (MERCK)、SET-RPLA(デンカ生研)を使用した。
SE抽出・濃縮にはTCA(トリクロロ酢酸)法を用いた。略記すれば、牛乳50mlをpH3.8(2N HCl)に調整し、10分間室温放置後、遠心分離(10000g),15min,4℃)した。その上清をpH6.8(2N NaOH)に調整後、クロロホルムを10%量添加・激しく混和して、遠心を行った。上清に90%TCA溶液を15%量添加し、氷中で30分間放置後遠心し、沈査に100mM Tris-HCl 2mlを添加・溶解後、2N NaOHでpH7.5に調整した。これをSE抽出・濃縮液としてSE検出に用いた。
SE標準直線の作成は、SE陰性の牛乳からTCA抽出・濃縮液を作成し、標準SEAを一定量添加後、各検出キットで測定し、行った。同様に、Buffer溶解SEAについても標準直線を作成した。
添加回収試験は、SEAを添加した牛乳(SE濃度:0.01,0.02,0.04ng/ml)から、TCA法によりSE抽出・濃縮を行い、各検出キットでSEを測定し、SE標準直線から牛乳中のSE量を求めた。
SE回収率は各検査機関において調整したSEA添加牛乳(SE濃度:0.01, 0.02, 0.04 ng/ml)から、PD-10カラムを用いる方法とTCA法によるSE回収率を調べた。
結果と考察
その結果、SE標準直線では、SEA 0~1ng/mlで直線性を示したが、VIDASでは0~0.35ng/ml、TPでは0~0.17ng/mlにおいてメーカー保証の測定限界値以下であった。
牛乳にSEAを添加し、TCA抽出・濃縮したものでは、VIDAS検出法およびTP法による回収率は各々異なった。SEA0.04ng/mlに対し、VIDAS法では79%、TP法では140%、SEA0.02ng/mlに対し、VIDAS法では70%、TP法では85%、SEA0.01ng/mlに対し、VIDAS法では44%、TP法では51%であった。
各検査機関で行った結果では、TCA抽出・濃縮による回収率は、VIDAS法:40~66%、TP法68~113%で、PD-10カラムを用いる方法に比べ良好であった。さらに、TCA法はSE回収率のばらつきも少ないことがわかった。なお、TCA抽出・濃縮液にSEを添加した試料は、RPLA検査法では従来の判定法による凝集像は見られなかったが、プレートを傾斜することにより凝集の有無を判定することができた。
本結果からTCAによるSE抽出・濃縮法は迅速かつ簡易な方法であると考えられた。
次に、検査機関、SE検出キットメーカーおよび乳業メーカー等12機関において、牛乳に一定量のSEAを添加して、TCA法によるSE抽出・濃縮を行い、種々のSE検出キットを用いてSEA測定し、牛乳からの微量SE抽出・濃縮法について評価した。
市販牛乳(乳脂肪分8.3%以上、無脂乳固形分3.5%以上)に精製SEA(岩手大学調整)を一定量添加し、0.025ng/ml及び0.08ng/ml試料を作成し、12機関に送付し検討した。
各機関では標準直線を作成し、試料中のSE量を求めた。検出キットとしてVIDAS(bioMeriux),TP(MERCK),RIDA(Biopharm),RPLA(デンカ生研)を用いて、VIDASとRIDAについては1回/試料、その他のキットは2回/試料測定を行った。
検出キットにより、標準直線のばらつきが見られ、TP測定ではVIDAS,RIDA測定よりもばらつきが大きかった。TRPLA測定では、SEを添加した抽出・濃縮溶液(1ng/ml)に対し、検出希釈倍数で2~4倍の差が見られた。
各検出キットの検出感度は、VIDAS,TP法で0.25ng/ml、RIDA法で0.2~0.7ng/ml、RPLA法で1~2ng/mlと示されているが、最小検出感度は、VIDAS法で0.22~0.33ng/ml、TP法で0.08~0.20ng/ml、RIDA法で0.07~0.12ng/ml、RPLA法で0.125~0.5ng/mlであった。
検出キットごとの回収率は、VIDAS法では45~68%、TP法では36~107%、RIDA法で42~72%、RPLA法で23~95%であり、これらすべての平均では、55~64%であった。
結論
本成績から、牛乳(加工乳を含む)からのSE検出法として、TCA抽出・濃縮法は有効であると考えられた。

公開日・更新日

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研究報告書(紙媒体)