放射線の人体への健康影響評価に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000070A
報告書区分
総括
研究課題名
放射線の人体への健康影響評価に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
児玉 和紀(広島大学医学部保健学科)
研究分担者(所属機関)
  • 池田恢(国立がんセンター東病院)
  • 鎌田七男(医療法人エムエム会マッターホルン病院)
  • 京泉誠之((財)放射線影響研究所)
  • 戸田剛太郎(東京慈恵会医科大学)
  • 藤原佐枝子((財)放射線影響研究所)
  • 山下俊一(長崎大学医学部附属病院原爆後障害医療研究施設)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
-
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、放射線被曝に伴う健康リスクを、これまで一般に用いられてきた相対リスクや絶対リスクと異なり、種々の疾患に対する放射線リスクの評価を同じ枠内の数値として統一的にとらえることが可能な寄与リスクを用いて再評価することを試みた。
研究方法
 放射線影響研究所寿命調査における利用可能な最新のがん死亡およびがん発生のデータを基に、がんによる死亡および発生における原爆放射線被曝の寄与リスクを、主要部位について性および被爆時年齢別に算出することを試みた。さらに、現在までに論文発表されていてそのデータが使用可能な資料から、がん以外の疾患による死亡や有病についての寄与リスクも検討した。寄与リスクを算出した疾患ならびに疾患群は以下のとおりである。
白血病、胃がん、大腸がんの死亡、甲状腺がんの発生について、性別、被曝時年齢、被曝線量別の寄与リスクを求めた。女性乳がんについても、被曝時年齢、被曝線量別の寄与リスクを求めた。肺がんの死亡については、被曝時年齢の影響を受けていなかったので、性別、被曝線量別の寄与リスクを求めた。
肝臓がん、皮膚がん(悪性黒色腫を除く)、卵巣がん、尿路系(膀胱を含む)がん、食道がんについては、この5疾患をまとめて計算し、寄与リスクを求めた。
副甲状腺機能亢進症の有病率調査では、被曝の影響に性差は認められていないので、被曝時年齢と甲状腺臓器線量別に寄与リスクを求めた。
肝硬変による死亡は、被曝の影響に性差、被曝時年齢による差は認められていないので、被曝線量と寄与リスクの関係を求めた。子宮筋腫の有病率についても、被曝線量と寄与リスクの関係を求めた。
結果と考察
算出された寄与リスクについて具体例を以下に示す。
白血病については男性の0歳時被曝の場合、100cGy被曝で寄与リスクは88.8%、10cGy被曝で寄与リスクは44.2%と算出された。30歳時被曝ではかなり様相が異なり、100cGy被曝で寄与リスクは56.4%、10cGy被曝で寄与リスクは11.5%と算出された。女性乳がんでは0歳時被曝の場合、50cGy被曝で寄与リスクは66.2%、10cGy被曝で寄与リスクは28.2%と算出された。30歳時被曝ではやはりかなり様相が異なり、50cGy被曝で寄与リスクは37.8%、10cGy被曝で寄与リスクは10.9%と算出された。男性の胃がんでは0歳時被曝の場合、150cGy被曝で寄与リスクは17.8%、30cGy被曝で寄与リスクは4.1%と算出された。30歳時被曝では、150cGy被曝で寄与リスクは3.9%、30cGy被曝で寄与リスクは0.8%と算出された。
以上のように、放射線被曝の健康影響への寄与リスクは、がんの部位や疾患により著しく異なることが判明した。
結論
放射線被曝に伴う健康リスクを、これまで一般に用いられてきた相対リスクや絶対リスクと異なり、種々の疾患に対する放射線リスクの評価を同じ枠内の数値として統一的にとらえることが可能な寄与リスクを用いて再評価することを試みた。その結果、放射線被曝の健康影響への寄与リスクは、がんの部位や疾患により著しく異なることが判明した。本研究におけるリスク評価法は絶対的なものにはなり得ないが、放射線被曝者の健康管理に活用され、その一助になることが期待される。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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