心臓、脳卒中治療の研修システムに関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000065A
報告書区分
総括
研究課題名
心臓、脳卒中治療の研修システムに関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
島崎 修次(杏林大学医学部救急医学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 杉本壽(大阪大学医学系研究科生体統合医学専攻生体機能調節医学)
  • 大和田隆(北里大学医学部救命救急医学)
  • 上嶋権兵衛(東邦大学医学部第二内科学)
  • 北村惣一郎(国立循環器病センター)
  • 高野照夫(日本医科大学第一内科学)
  • 桐野高明(東京大学医学部脳神経外科学)
  • 大本尭史(岡山大学医学部脳神経外科学)
  • 小柳仁(東京女子医大付属日本心臓血圧研究所循環器外科)
  • 信川益明(杏林大学医学部総合医療学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在の我が国の救急医療の中で、循環器・脳血管障害の救急医療の重要性は極めて高い。実際、ここ数年の死亡数、死亡率についてみると、悪性新生物によるものに次いで2位、3位を占めている。また交通外傷などによる重症頭部疾患の救命率の向上も急務である。これまで、我が国における救急医療の良質かつ効率的な提供体制のあり方、救急医療体制の確保のあり方などについて、二次救急医療圏単位での検討を行ってきた。そして、二次救急医療機関における医師の質の向上、特に循環器疾患、脳血管疾患、頭部外傷などの診療技能の向上の基盤整備と教育、研修方法の開発が必要と考えられる。本研究では、交通事故などによる重症頭部外傷、脳血管障害(脳出血、脳梗塞、クモ膜下出血など)、急性心筋梗塞を中心に、二次救急医療機関に勤務する医師を対象とした脳神経外科、循環器疾患領域に関する教育、研修方法の開発、そのための基盤整備についての検討を行った。
研究方法
二次救急医療機関に勤務する医師とを対象に、三次救急医療機関での研修を行い、二次から三次救急医療へのトリアージを迅速、かつ的確に行える知識を修得して貰うことを目標とした。そのための教育カリキュラムとして、研修項目、研修テキストの作成、研修担当施設について、それぞれ分担研究者により検討を行い、特に研修テキストに関しては平成13年度中に実際の研修が行えるように準備を整えることとした。研修受け入れ施設、実施方法、研修対象施設については行政や関連学会との連動が必要であり、今後の課題としたが、その基礎的要件をまとめた。
結果と考察
循環器及び中枢神経系重症救急疾患の救急医療機関の選定に関する問題に関しては、トリアージを含めた24時間体制の専門医による診断治療が行える施設の整備が急務であることが分かった。脳血管障害、重症頭部外傷の診療機能向上に関する問題に関しては、診療については、今後EBMに基づく基本的治療ガイドラインの作成が必要と思われた。また、脳内出血を主とする重症脳血管障害の初期救急治療のガイドライン、トリアージについては、現在のスタンダードをまとめ、二次救急医療機関勤務医を対象とした研修テキストの下地を作成した。循環器救急疾患の診療機能向上に関する問題に関しては、まず地域におけるネットワーク体制の整備状況、末期心不全患者に対するmobile CCU運用など、二次救急医療機関と三次救急医療機関との連携について調査を行った。その結果、ネットワーク体制では、CCU受け入れ情報がリアルタイムに提供されるようなシステムが、現在より更に広域ネットワークとして有効に機能する必要性が指摘された。また重症患者の移送システムに関しても、搬送手段の整備、救急搬送に携わる医療スタッフ(多くは二次救急医療機関勤務医)の研修が急務であることが指摘された。急性心筋梗塞の救急医療体制の向上に関しては、全国の一次・二次救急医療機関勤務医及び医療従事者を対象とした医療教育用テキストの作成を試み、教育システムの確立の基盤整備を行った。本研究により、一次・二次救急医療機関と三次救急医療機関の連携を円滑に行うことで、循環器救急疾患、脳血管障害、重症頭部外傷患者の救急医療を強化し、救急医療体制の質の向上、迅速・的確
なトリアージ、最終目標としての、これら疾患の救命率を高めるための研修が急務である。そのためには全国に展開されている一次・二次救急医療機関勤務医及び医療従事者による三次救急医療機関との病病連携を理解することが必要である。従って、紹介する二次救急医療機関に勤務する医師の循環器疾患、脳血管障害、中枢神経障害などの診療機能の向上と同時に、その重症度判定やトリアージもスムーズに行えるような教育、研修などの基盤整備を行った。また研修カリキュラムや、教育効果の判定のための評価方法なども今後は必要である。また、具体的な研修実施場所の選定や、講師・専門家(チューター)の確保、研修対象医療機関の選定など、今後厚生労働省技官とも密に連携を取って検討を行う必要が示唆された。
結論
二次救急医療機関に勤務する医師及び医療従事者を対象として、脳神経画家、循環器疾患領域に関する教育、研修カリキュラム、基盤整備について検討を行った。今後は関連学会との意見調整や、具体的実施に向けての関連学会の協力体制、関連領域の専門家(チューターとして)、救命救急センターや大学病院などによる支援体制作りについて、行政を含めて検討と提言を行う必要がある。

公開日・更新日

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