法改正に伴う身体障害者及び知的障害者更生相談所のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200000062A
報告書区分
総括
研究課題名
法改正に伴う身体障害者及び知的障害者更生相談所のあり方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
飯田 勝(埼玉県総合リハビリテーションセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 土田富穗(東京都心身障害者福祉センター)
  • 中嶋咲哉(兵庫県立身体障害者更生相談所)
  • 金子元久(福島県精神保健福祉センター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成12年4月1日地方分権一括法が施行され、身体障害者及び知的障害者更生相談所の業務に、①市町村福祉担当職員の教育・指導・研修支援、②市町村補装具基準外交付権限委譲に伴う専門的判定、③補装具装着訓練の市町村指導等の新たな役割が加わり、これまで以上に専門的、技術的機能を発揮するように求められている。さらに、平成15年から福祉利用制度は、これまでの措置方式から利用者の主体性を尊重した支援費支給方式へと変わり、費用は障害程度区分に基づき支給され、その判定業務を身体障害者及び知的障害者更生相談所が行うことが期待されている。このような新たな役割に的確に対応するための身体障害者及び知的障害者更生相談所のあり方を検討すると同時に、地域サ-ビスの実施主体である市町村の事務体制を調べ、現状分析とその問題点を明らかにするため、全国の身体障害者及び知的障害者更生相談所、代表的都道府県市町村にアンケ-ト調査を行う。
研究方法
全国の身体障害者(68か所)及び知的障害者更生相談所(72か所)、3県の市町村及び中核市を対象として、アンケート調査を行った。調査表は、我々が作成した「身体障害者更生相談所業務に関する実態調査」、「知的障害者更生相談所業務に関する実態調査」、「市町村の身体障害者・知的障害者福祉法施行事務体制に関する実態調査」を用いた。主な調査項目は、身体障害者及び知的障害者更生相談所にあっては、①組織体制、②職員(職種毎配置人数、常勤・非常勤、経験年数等)、③更生相談(判定業務、生活、就労等相談業務他)、④判定会議、調整会議(出席者、回数等)、⑤地域支援事業、研修、情報提供等であり、市町村にあっては、①組織体制(人員配置、業務分担)、②援護の取り組み状況、③更生相談の取り組み状況、④身体障害者及び知的障害者更生相談所との係わり方等である。
結果と考察
全国身体障害者更生相談所の法改正に伴う、新たな役割の取り組み状況は、低調であり、現在行っている業務に関しても、内容に地域間格差が著しかった。その最大の原因は、職員体制の不備にあり、①職員定数の設定数が少なく、②人材の確保や充足が困難なため兼任や非常勤が多く、専任の常勤職が極端に不足しており、特に必須の医療、福祉専門職が確保されていないことにある。とりわけ身体障害者福祉司、知的障害者福祉司の配置は、最低限の法定人員さえ配置されておらず、今後各都道府県の面積、人口、高齢化率等の地域性も考慮した常勤職員定数、専門職種と職員数の抜本的な見直しが必要である(身体障害者及び知的障害者更生相談所、それぞれの最低限の常勤職員定数、専門職種、職員数を明示することが望ましい)。すなわち、身体障害者更生相談所では、整形外科等の肢体を主とする診療科の経験が豊かな医師、知的障害者更生相談所では、精神神経科等の精神神経を主とする診療科の経験豊かな医師の常勤が望ましく、更に、身体障害者更生相談所にあっては常勤で、最低限の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護婦、義肢装具士等の医療専門職と複数以上の身体障害者福祉司、心理判定員、職能判定員等の福祉専門職が、知的障害者更生相談所にあっては、複数以上の知的障害者福祉司、心理判定員、職能評価員等の福祉専門職と最低限の看護婦、作業療法士等の医療専門職が必要である。地域支援については、現状では実施不可能なところが多く、地域毎のニ-ズを的確受け入れ、個人別のライフサイクル全般にわたる支援を組み立てることのできる地域支援システムを整備するためには、現行の身体
障害者及び知的障害者更生相談所組織の抜本的見直しが必要である。さらに、福祉第一線の市町村職員体制も、常勤職員数が少なく、兼任が多く、短い年数での異動が多いため、十分な実務経験と専門的な知識に欠けており、医師、理学療法士、看護婦、保健婦等の専門職が係わるところは、わずかであり、特に小規模市町村では兼任職員配置が多く、そのため身体障害者及び知的障害者更生相談所の研修に、関心が高く実務的な研修を望んでいた。このような市町村の現状を強化、支援するために、都道府県は身体障害者及び知的障害者更生相談所に教育、研修、指導部門(経験ある身体障害者及び知的障害者福祉司を配置)を設けたり、経験豊かな身体障害、知的障害福祉司の市町村派遣を行うことが望まれる。
結論
この全国調査から、身体障害者及び知的障害者更生相談所の現状は、その組織、常勤職員、専門職体制、業務内容に著名な格差のあることが明らかである。このような現状の体制では、法改正に伴う新たな役割を果たすことは困難であり、求められる障害程度区分の判定や市町村支援を行うことは不可能に近いといえる。これを全国同じレベルで、同じように行うためには、身体障害者及び知的障害者更生相談所の職員定数を見直し、常勤職員、専門職の充足が必須であり、さらに求められる地域支援を行うためには、身体障害者及び知的障害者更生相談所の組織を抜本的に見直し、他機関(他相談所、福祉施設、保健所、医療機関等)との統合、総合化を行うことが望ましい。相談第一線である市町村の事務体制では、知識や経験の豊かな福祉司の確保が困難な状況から見て、市町村を教育、指導、支援するため、都道府県は、身体障害者更生相談所及び知的障害者更生相談所に研修部門を整備し、医療、福祉専門職を配置することが必要である。

公開日・更新日

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