一般的な遺伝子解析研究に付随する生命倫理問題等に対応するための指針に関する調査研究

文献情報

文献番号
200000059A
報告書区分
総括
研究課題名
一般的な遺伝子解析研究に付随する生命倫理問題等に対応するための指針に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
垣添 忠生(国立がんセンター中央病院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成12年度に始まるミレニアム・プロジェクトで、「遺伝子解析による疾病・創薬関係に関する研究」が行なわれることになったため、厚生省は、遺伝子解析研究に伴う遺伝情報や生体試料を取り扱う際に生じる生命倫理問題等に対応する指針について検討することとし、当研究班がその研究を担当した。
研究方法
生命倫理に関する問題点を整理するため、高度医療専門センター、国立病院、及び国立試験研究機関の生命倫理を担当する研究機関の研究者、及び第三者的立場の法律あるいは生命倫理の専門家等に検討委員を引き受けていただき、前後六回の検討を重ねた。26名の作業委員会の委員を、研究現場に身を置くものから、生命倫理、法律の担当者、一般的な意見を反映できる人たちで構成し、メーリングリスト上で活発な議論を行なった。
結果と考察
以上の成果を取りまとめて、検討会の案を作成し、それをもとに最終的な指針をまとめた。以下はその概要である。
1. 個人情報の保護
(1)遺伝子解析の研究者が、研究に用いる試料等の提供者に対する個人情報を、機関の外部に持ち出すことを禁止。
(2)遺伝子解析研究に用いる試料等は、原則として匿名化。
(3)試料等提供者の個人情報を匿名化し管理する担当者を、試料等の提供を受ける研究機関に設置。
2. 生命倫理
(1)遺伝子解析研究に用いる試料等の提供を受ける際には、自由意思に基づく提供者のインフォームド・コンセントがなければならない。
(2)試料等提供者の個人情報を匿名化し管理する担当者を、試料等の提供を受ける研究機関に設置。
(3)既に収集してある試料については、インフォームド・コンセントの有無や内容の状況に応じて、倫理審査委員会が利用の可否を判断。
(4)遺伝子解析研究の結果を試料等の提供者に開示するかどうかは、その人の意思を尊重。
3. 遺伝カウンセリング
(1)遺伝子解析研究に用いる試料等の提供者が、病気の遺伝について抱える不安等に対応するため、遺伝カウンセリングの体制を必要に応じて用意。
(2)遺伝カウンセリングの専門家が十分に育成されていない場合には、研究に参加する研究機関どうしで連携して対応。
4. 研究の監督等
(1)研究機関の長
1)研究者に遺伝子解析研究に先立って研究計画を作成させ、それを長が許可。許可の前に、長は倫理審査委員会の意見を聴取。長はその意見に反して試料提供者の不利益になるような決定をしてはならない。
2)研究者に研究状況を定期報告させ、また、外部の者に年1回以上、実地調査させる。
3)研究が不適切に実施されていることが判明したときは、研究機関の長が、研究の中止等を指示。
(2)倫理審査委員会
1)研究機関(試料等の提供が行われる機関を含む)ごとに設置。
2)研究機関で行う遺伝子解析研究に関し、個人情報の保護、生命倫理、遺伝カウンセリング等を記載した研究計画を事前に審査。必要に応じ、助言。
3)委員の半数以上を外部委員、外部委員の半数以上を倫理・法律的事項の専門家または社会の意見を反映できる者とする。
4)個人情報や知的所有権の保護に反しない範囲で、審査の概要を公開。 
結論
取りまとめられた指針に基づき、ミレニアム研究が順調にスタートしている。この指針に次いで科学技術庁より出された「生命倫理に関するゲノム解析に伴う原則について」がいわば総論であり、厚生省から出された「指針」が各論に相当する形で、遺伝子ミレニアム研究に伴う遺伝子解析研究を規定する。他の医療機関あるいは研究費で行なわれる研究もこの指針に従うことが期待されている。ミレニアム研究以外の研究でも広く応用される形となったが、規程がやや厳しいので、もう少し一般的な指針も求められる状況である。

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研究報告書(紙媒体)

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