九州・沖縄県サミット食品調理施設の衛生管理に関する研究

文献情報

文献番号
200000051A
報告書区分
総括
研究課題名
九州・沖縄県サミット食品調理施設の衛生管理に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
小沼 博隆(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究事業は、給食施設の衛生管理の徹底を図るために、HACCPによる衛生管理システムを実際の調理加工施設および食品製造業に導入し、亜熱帯地域である沖縄県名護市で開催される先進8カ国によるサミット会議に向けて、ホテル調理施設の衛生管理の徹底を図ることを目的に実施した。
研究方法
本研究では、調査施設をサミット会議が行われる施設を選び、調査方法は当該施設の点検調査ならびに原材料の受け入れから喫食までのすべての段階について、それぞれの食材や食品が取り扱われる様々な条件を考慮に入れた微生物汚染実態を調査し、汚染源と汚染要因、増殖・拡散要因の明確化および除菌対策を含めた危害分析を行い、その結果を基にHACCPプランを作成した。
結果と考察
今回、平成12年7月21日から沖縄県名護市で開催されるサミットに向けて、各国首脳の方々が食事の際に利用するホテル食を調理する調理施設の衛生管理の万全を期することを目的に調査研究を行い、以下の結果を得た。
①本ホテルには検収室がなく、検収はメインゲイト前のプラットホーム(荷受け場)で行われていたばかりか、プラットホームではゴミの集積及び分類作業も常時に行われていた為、ゴミの臭気が蠅を集める結果となり、原材料への微生物汚染や蠅の混入が危惧されたため、出入り口付近にあった守衛室を改造して検収室を確保、検収室から食品保管庫までの食品専用通路を確保させた。また、プラットホームに廃棄物処理室を設置し周囲と完全に区画し、通路の手動式ドアを自動ドアに変え、さらに自動ドア一機を追加して外部と二重にし、通路の閉鎖性を確保した。
②厨房内の空調設備の管理を徹底し室温調節を行うこととした。
③汁物、焼き物、揚げ物、煮物、蒸し物、サラダ等について危害分析し、各調理工程にCCPおよびCLを設け、それぞれのモニタリングパラメ-タ-とモニタリング方法を設定した。
④設定したCCPについて実際の稼働中に適切に作業が行われているかの検証を行った結果、生食用卵および生野菜等は病原菌の的確な制御は困難との判断から、新鮮な殻付き卵を確保するために購入施設の調査を行い、殻付き卵については特定のGPセンターから購入することに決定した。生野菜の除菌効果については、オゾン水、次亜塩素酸ナトリウム、超音波洗浄およびそれぞれの併用など、種々の洗浄・殺菌方法を検討したが、著効のある方法を見いだすことができなかったが、水道水による洗浄と次亜塩素酸ナトリウム等の併用によりある程度の除菌は期待できると思われた。
⑤亜熱帯地方における衛生管理は、通常の衛生管理と変わりはないが、特に10月から4月頃までのように冷房機を使わず外気による空調体制になるので、厨房内の温度が30℃前後(平均26℃)にまで上昇する。このため病原菌の急激な増殖が危惧される。事実、この時期の食中毒事例も多々みられることから、調理施設専用の空調システムを設備し、室温20℃以下に設定することが最も重要であると考えられた。
結論
サミット開催地の一つである沖縄県は亜熱帯気候である。そのため、沖縄県にあるサミット関連のホテルレストラン等の大量調理施設に対して、食品衛生の向上、食中毒の未然防止を目的としたHACCPによる衛生管理、主に危害分析および検証を中心に、調査研究した結果、当該ホテルの検収室、自動ドア、廃棄物処理室、食器洗浄機の設置等、衛生関連の施設設備を充実させることができた。また、食品や器具機材の取り扱いがSSOPに基づいて確実に実施されるようになった等の成果を得ることができた。その結果、当該ホテルの衛生管理体制は一変して向上した。
なお、サミット会議は衛生上のトラブルは全くなく無事終了したことを付記する。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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