フェイルセーフ・フールプルーフに配慮した医療機器等の開発に関する予備的研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000042A
報告書区分
総括
研究課題名
フェイルセーフ・フールプルーフに配慮した医療機器等の開発に関する予備的研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 敏(北里大学医療衛生学部)
研究分担者(所属機関)
  • 箭内博行((財)医療機器センター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療機器の人為的ミスによる医療事故が起こっているが、これを未然に防止するために医療機器にはフェイルセーフ機能やフールプルーフ機能が備えられているが、その普及の程度、問題点等は把握されていないのが現状である。本研究では、医療機器に関係する企業関係者および医療関係者に対してアンケートによる調査を実施し、医療機器に備えられているフェイルセーフ機能とフールプルーフ機能の実態、問題点、要望等をまとめ、今後の医療事故防止施策の一方策としての検討を行うことを目的とした。
研究方法
調査対象とした機器は生命維持に直結した8種類の医療機器、すなわち血液透析装置、腹膜透析装置、人工心肺装置、IABP(大動脈バルーンパンピング装置)、人工呼吸器、高気圧酸素治療装置、麻酔器と輸液ポンプ(含シリンジポンプ)で、これらの機器に関係する企業(74社)および医療関係者(麻酔科医200名、看護婦739名、臨床工学技士308名)にアンケート用紙を送り、医療機器のフェイルセーフ機能とフールプルーフ機能の詳細、これら機能の備えられていない機器の有無および備えられていないがために起こり得るトラブル等について調査した。
結果と考察
企業では42社から回答が得られた。医療関係者のうち、麻酔科医は61名、看護婦は258名、臨床工学技士は171名からそれぞれ回答があった。今回の調査では、医療関係者はそれぞれの職種が独自で回答しているものが少なく、他職種に回答を依頼しているものが多数認められた。例えば、回答者が医師や看護婦となっていても、回答そのものが臨床工学技士により記載されている場合が多かった。これはフェイルセーフ機能とフールプルーフ機能が必ずしも関係者に正しく理解されていないためと考え、医師、看護婦および臨床工学技士の回答はすべて一つにまとめて集計した。今回の調査で、フェイルセーフ機能とフールプルーフ機能が一部の医療関係者や企業関係者に正しく理解されていないこと、すべての医療機器にフェイルセーフ機能とフールプルーフ機能がなんらかの形で取り入れられていること、医療機器によってフェイルセーフ機能とフールプルーフ機能の種類と数が異なり、機種によっては取り入れ方が不完全なためいろいろなトラブルが起こり得ること等がわかった。また、医療機器の安全確保のために、回答者の多くがフェイルセーフ機能やフールプルーフ機能を持つと積極的に導入することを希望していたが、一方では、医療機器で見られるトラブルはフェイルセーフ機能またはフールプルーフ機能を取り入れたとしてもその発生を完全に防止できないとの意見が医療関係者(回答者の20~60%、対象機種により比率が異なる)にあることがわかった。本研究結果により、医療機器のフェイルセーフ機能とフールプルーフ機能の実態、問題点および要望がはっきりしたが、この結果は現在使用されている医療機器のフェイルセーフ機能やフールプルーフ機能を質的に向上させる場合、また今後フェイルセーフ機能やフールプルーフ機能をあらたに医療機器に導入する際に役に立つものと考えられ、医療機器の関連企業の積極的な活動を期待したい。ただ、フェイルセーフ機能とフールプルーフ機能を導入したとしてもすべてのトラブルの発生を防止できないため、その点を年頭において医療機器の研究開発、臨床での運用等を考えていく必要がある。
結論
本研究では生命維持に直結する8種類の医療機器に備えられているフェイルセーフ機能とフールプルーフ機能の実態、問題点および要望等について、関係する医療機器関連企業および医療関係者に対するアンケートによる調査を行い次のような結果を得た。
1)フェイルセーフ機能とフールプルーフ機能が一部の関係者に正しく理解されていない。
2)すべての医療機器にフェイルセーフ機能とフールプルーフ機能がなんらかの形で取り入れられている。
3)医療機器によって備えられているフェイルセーフ機能とフールプルーフ機能の種類と数が異なり、機器によって備えられている両機能が不完全なためにいろいろなトラブルが起こり得る。
4)フェイルセーフ機能やフールプルーフ機能がないかあつても不完全なために起こり得るトラブルは医療機器にフェイルセーフ機能またはフールプルーフ機能を取り入れたり、両機能を充実したとしてもその発生を防止できないとの意見が医療関係者にある。
5)トラブル発生防止目的で、医療機器にフェイルセーフ機能またはフールプルーフ機能を積極的に取り入れるか、あるいは現在ある両機能を充実させる必要があるが、ただ、これらの機能には限度がありこれらの機能だけではその発生を防止できないことに留意する必要がある。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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