少子化の要因と地域分析に関する調査研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000030A
報告書区分
総括
研究課題名
少子化の要因と地域分析に関する調査研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 秀紀(青森県立保健大学)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木幸雄(北海道医療大学)
  • 佐藤秀一(青森県立保健大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
2,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、今後の子育て支援の方策に対する指針を得ることをねらいとして、北海道内に在住し、乳幼児を持つ母親を対象にして、1)少子化現象と母親自身の子育ての意識や育児困難の関連性を検討すること、2)少子化現象と地域間格差について検討することを目的とした。今年度は1)少子化現象と母親自身の子育ての意識や育児困難の関連性の検討を試みた。
研究方法
調査の対象は、北海道内において、合計特殊出生率の低い地域のS市(合計 特殊出生率; 1.32)を選定し、その地域の保育園および幼稚園に通園している子どもの母親 800名とした。調査方法は、調査票を作成し、各保育所および幼稚園の担当者を通じ、本人への配布・回収を行った。調査内容は、1)家庭と住まいの状況、2)母親自身の状況、3)夫の家事・育児の参加状況、4)子育てについての考え方とした。解析に当たり、まずすべての調査項目に対し記述統計で検討した。さらに、少子化現象と母親自身の子育ての意識や育児困難の関連性について検討した。なお、調査対象者800名のうち、回収ができた688名(回収率86.0%)の資料を分析した。
結果と考察
今回実施した調査においては、4つの検討課題について整理した。
1)「理想として育てたい子ども数と将来の予定する子ども数のギャップ」に関連する要因の検討を行った。その結果、「理想として育てたい子ども数と将来の予定する子ども数のギャップ」に関連している要因として、「子どもを育てるのにお金がかかる」、「子どもを育てることが体力的につらい」、「今の世の中や将来に対して不安である」、「仕事との両立がむずかしい」の4項目が関与していることが明らかにされた。
2)乳幼児を持つ母親の自由時間とその関連する要因の検討を行った。その結果、乳幼児を持つ母親の自由時間活用の状況は決して十分ではなく、家庭とその周辺で日常的に行われる活動は質量ともに貧しいことが示された。また、その自由時間の活動内容は、母親の年齢、母親の教育歴、母親の就労の有無、世帯の収入、世帯タイプといった諸特性と関連していることが明らかにされた。
3)育児期の子どもをかかえた家庭における夫婦および親子の共同行動に関連する要因の検討を行った。その結果、夫婦および親子の間の共同行動は決して高いものではなく、特に夫婦の共同行動は乏しいものとなっていた。生活習慣として夫婦より親子の間の共同行動が重視されている実情が示されていた。また、親子の共同行動は、世帯タイプ、世帯の収入、母親の年齢、母親の教育歴、母親の就労の有無、父親の年齢と関連していることが明らかにされた。
4)育児期の子どもをかかえた家庭における父親の家事・育児分担と母親の就労の有無との関連性を検討した。その結果、①父親の家事・育児分担の状況は決して十分ではなく、子育ての負担は母親に過度に集中しており、父親の家事・育児分担は定着したものとなっていない。②父親の家事・育児の分担関係には、母親の就労の有無が影響している。③父親の役割として、母親への心理的な支援や子どもの社会性の発達への関与を求められている。④母親の就労していない家庭の父親は、伝統的な性役割慣行に基づいた考え方が続いていることが明らかにされた。
結論
乳幼児を持つ母親の自由時間は貧しく、夫婦および親子の共同行動は乏しいものとなっており、父親の家事・育児分担の状況についても決して十分ではなく、子育ての負担は母親に過度に集中していることが明らかにされた。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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