日本の所得格差の現状と評価に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000024A
報告書区分
総括
研究課題名
日本の所得格差の現状と評価に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
白波瀬 佐和子(国立社会保障・人口問題研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 松浦克己(横浜市立大学商学部)
  • 玄田有史(学習院大学経済学部)
  • 小島克久(国立社会保障・人口問題研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
4,525,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
バブル経済崩壊後の長期化する不況や雇用情勢の悪化などを通じて、我が国の所得格差の状況について関心が高まっている。そこで、本研究では日本の所得格差の現状を1980年代からの趨勢とともに把握し、国際比較を通じて評価・検討することにある。社会保障の重要な機能の一つとしての所得再分配効果についても、国民一人あたりだけでなく、世帯類型別も考慮に入れた再分配効果の比較検討を行う。これにより、現行の社会保障制度における所得再分配機能の効果や課題について検討することができる。
研究方法
本研究では、厚生労働省「所得再分配調査」、「国民生活基礎調査」の個票データを用い、その再集計結果を元に各種の分析を行った。本年度は必要なデータクリーニングおよび国際データとの突き合わせなどを行い、必要な集計を行った。なお、個票の取り扱いには細心の注意を払い、個人情報保護に留意した。
結果と考察
本年度の研究結果について、以下の3点に集約することができる。
(1)検証データそのもののクリーニングをできるだけ厳密に行うこと等により精度の高い分析を行う重要性を再確認した。事実、データ内の整合性を調整した前と後とでは、結果に多少の違いが認められる。特に、時系列比較や国際比較を行う際にはこのようなデータの調整が重要であることが再確認された。
(2)1990年代におけるバブル崩壊前後における個人所得の決定要因について検討を行った。総所得と年齢の関係は逆U字型であること、雇用者のある自営業者の総所得が悪化傾向にあること、家庭内職者、仕事を持たない者の所得が相対的に上昇したこと、女性の総所得は低下傾向にある、単身高齢者所得が90年代にはいり改善された、大都市圏における所得の伸びが鈍化したことが明らかになった。
(3)日本全体の所得格差は90年代比較的安定している。高齢者のみ世帯内の所得格差については、改善されている。日本の所得格差を国際比較を通してみた場合、我が国は中間に位置することが明らかになった。
このように、所得格差の時系列分析やを行う際には、データの整合性を確認することが重要である。それにより所得格差の状況が変わることがあり得ることが明らかとなった。また、所得格差の拡大の背景には高齢化などの社会経済的要因などがあることが考えられる。
結論
所得格差の分析には、データの特質を精査した上で行う必要がある。また、所得格差の分析は高齢化などの社会経済的な背景との関係からの分析を行うことも重要であると思われる。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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