基礎自治体における介護保険制度の効率的運用と政策選択の評価基準に関する比較研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000006A
報告書区分
総括
研究課題名
基礎自治体における介護保険制度の効率的運用と政策選択の評価基準に関する比較研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
野口 定久(日本福祉大学)
研究分担者(所属機関)
  • 宮田和明(日本福祉大学)
  • 平野隆之(日本福祉大学)
  • 木戸利秋(日本福祉大学)
  • 近藤克則(日本福祉大学)
  • 後藤順久(日本福祉大学)
  • 久世淳子(日本福祉大学)
  • 樋口京子(岐阜大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
3,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、施行後約1年を経過する介護保険制度の諸課題の解決とその円滑な運用をめざして、基礎自治体(広域対応型と単独対応型)における在宅福祉サービス供給の効率的・効果的運用、介護サービスの臨床的研究と政策的研究の統合による自治体政策・事業評価、サービス評価等の諸システムを開発することにある。
研究方法
全体の研究を遂行するために、研究組織を①政策・計画ワーキンググループ(WG)、②臨床・評価指標WG、③経済的評価WGにわけ、ワーキンググループごとに研究計画を立て、それぞれのワーキンググループ間での研究交流や共同研究を進めながら、研究を遂行した。
①政策評価のための基本的な概念・フレームを提示することについては、政策評価の概念化が海外の研究成果を踏まえて、政策評価研究が先行する英国のコミュニティケア政策の検証研究との情報交換を踏まえながら実施した。また。モデル自治体での実際を抽象化するなかで、政策評価のモデル方法を検討した。
②自治体の政策評価のための具体的な方法の実験については、計画グループが中心となってレセプトデータによる利用実績を分析するためのソフトの開発を多くの勢力を費やした。これによって自治体間の比較ができ、政策評価のデータ収集が飛躍的に高まった。他方、臨床グループが中心となって、家族介護者の負担感等の尺度の開発が進展した。計画と臨床を結びつけるために、サービス満足度調査の方法や事例調査の設計による補強が検討された。
③介護保険運用に広域連合方式を選択した自治体の事例分析を通して、評価の枠組みが提供され、今後の評価への出発点が築かれた。計画グループが担った。
④単独方式における介護保険事業の評価の実施については、臨床と計画のグループが共同して、介護保険実施前の調査結果と介護保険事業の実績、介護予防事業の評価等を試みた。
結果と考察
Ⅰ.近藤報告:介護保険政策における政策評価-概念整理と長期的課題 
近藤報告の目的は3つある.第一は,政策科学に関わる概念を整理して政策科学を概観する「見取り図」を示すこと,第二は,政策科学の見取り図の中で本研究が占める位置や目的,特徴,そして「広がり」を示すこと、第三に,介護保険政策の政策科学の課題を整理し,到達点を示すことである。
Ⅱ.野口報告:介護保険と自治体政策評価
今回の野口報告では、保険者としての自治体が新たに介護保険の運営に係わるマネジメントの役割が重要となってきているという状況の中で、特に、「行政評価」(昨年度に報告)と「政策評価」システムの関連から、政策評価をベンチマーク方式の枠組みで具体的に高浜市の保健・医療・福祉サービスの項目に落とし込む作業を試みることに在る。また、介護サービスの質の確保、苦情解決システムの構築等サービス評価的任務について考察した。
Ⅲ.木戸報告:イギリスにおける自治体政策評価について
木戸報告の研究目的は、第一に、Best Value方式の政策評価の一環として行われる社会福祉の業績評価の実際を捉えることによって、その評価の枠組みや結果を明らかにしていくこと、第二に、従来行われてきた地方自治体社会福祉行政への合同監査の実態を、ロンドンのウエストミンスター特別区を素材にとりあげて検討することにある。
Ⅳ.平野報告:自治体政策評価のシステム化
平野報告は、大きく2題から構成されている。一つは、自治体政策評価のシステム化の枠組み設定、二つは、介護保険事業の自治体政策評価にむけてのソフト開発である。本「分析ソフト」の結果データの保険者(自治体)間比較が不可欠となることを提案している。
Ⅴ.久世報告:政策評価に向けての評価尺度開発-介護負担感尺度開発の試み-
久世報告では、介護保険政策の政策評価に用いる介護負担感評価尺度の開発が試みられている。その際に、介護負担感評価尺度を用いて介護者の負担感に影響する因子について検討が加えられている。研究対象は、基本的に介護者調査の対象者である。
Ⅵ.後藤報告:自治体における福祉情報化と政策評価
後藤報告では、自治体における福祉領域の情報化の現状を分析した後、介護保険制度に関わる福祉領域の政策・サービスを中心としながら、福祉データベースの構築技法、評価手法の提案がなされている。
Ⅶ.宮田報告:広域方式による介護保険事業
宮田報告の目的は、介護保険制度の施行に関する諸事務を広域方式で行っている場合について検討し、その特色を明らかにすることにある。
Ⅷ.樋口報告:介護保険導入前の「介護予防」と「介護負担感」をめぐる状況―2自治体の一般高齢者調査および介護者調査から―
樋口報告は、介護保険政策の事前評価として「単独方式」の2自治体間における3種類の調査、①一般高齢者、②要介護者調査、③介護者調査を実施したものである。これらは、有効な介護予防政策や介護の社会化へむけて政策を立案、施行、評価するための基礎資料をうることがねらいである。本研究は、「単独方式」の2自治体における介護保険導入前の一般高齢者の「介護予防」と介護者の「介護負担感」をめぐる状況を明らかにすることにむけられている。介護保険導入後の状況と比較するためである。
Ⅸ.加藤報告:虐待リスクの事例研究
加藤報告のねらいは、虐待が疑われる事例、介護の質に問題がある事例を1事例ずつ取り上げ、これらの状況にある高齢者や家族にどう関わり、どのような援助を行えばよいのかを考察することに向けられている。
Ⅹ.大橋報告:「介護予防」及び痴呆対策プログラムの評価
大橋報告は、「介護予防」及び痴呆対策プログラムについて、先駆的な取り組みを行っている愛知県高浜市での調査結果をまとめたものである。高浜市では、「介護予防」について痴呆予防・閉じこもり防止・転倒骨折予防・脳血管疾患等予防の4つの柱をかかげ、複数拠点を巡回する痴呆予防教室、介護保険「自立」認定者などに対する住宅改修費助成など、積極的な取り組みを行っている。
ⅩⅠ.平野報告:介護保険事業業績の分析―開発ソフトの活用から
この平野報告では、介護保険事業実績の分析ソフトを活用した高浜市の介護保険事業の実績結果が紹介されている。
ⅩⅡ.近藤報告:要介護高齢者の所得分析―要介護高齢者は、低所得者になぜ多いか
この近藤報告では、本プロジェクト研究の調査として、愛知県内の1自治体を対象に、1998年度、65歳以上の全高齢者5千余人を市職員が面接し、さらに保健婦、ヘルパーなどが要介護認定のモデル事業として要支援・要介護者581人から得たデータである。
結論
本研究は介護保険制度運用に際して広域方式と単独方式のどちらかを選択した基礎自治体における施策・事業・サービスの成果を自ら評価するために、保険者である自治体にとって必要となる方法をマクロ・ミクロの両面にわたって提供することをねらいとするものである。平成12年度の研究進捗状況としては、4つの分野で一定の成果を得た。①政策評価のための基本的な概念・フレームを提示すること(政策評価の概念化、第三者評価委員会による事業者サービス評価、ベンチマーク手法、政策評価研究が先行する英国のコミュニティケア政策の検証研究)
②自治体の政策評価のための具体的な方法の実験(レセプトデータによる利用実績分析ソフトの開発、家族介護者の負担感と在宅福祉サービス利用状況、インフォーマルサポートとの関係性を明らかにする尺度の開発、サービス満足度調査の方法、事例調査の設計)③介護保険運用に広域連合方式を選択した自治体の事例分析 ④単独方式における介護保険事業の評価の実施(介護保険実施前の調査結果と介護保険事業の実績、介護予防事業の評価等)。

公開日・更新日

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