看護必要度による患者分類の導入に関する研究

文献情報

文献番号
199900939A
報告書区分
総括
研究課題名
看護必要度による患者分類の導入に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
上泉 和子(青森県立保健大学)
研究分担者(所属機関)
  • 鶴田恵子(東京医科歯科大学医学部附属病院看護部)
  • 金井Pak雅子(東京女子医科大学看護学部)
  • 田中由紀子(横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター)
  • 平井さよ子(愛知県立看護大学)
  • 西川美智子(横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
看護必要度による患者分類を導入するにあたり、適切な導入方法を検討するために、(1)看護必要度チェック、データ処理の所要時間調査、(2)「看護必要度チェック表」評価項目の評価一致度調査、(3)看護必要度導入に際する、管理上の課題・問題についてのヒアリング調査、を行った。
研究方法
(1)看護必要度導入ガイダンスの方法を洗練、確立するために、1病院2病棟で1週間の予備調査の後、本調査を行った。
(2)本調査の方法
急性期入院医療の評価において看護必要度の導入を検討するという目的から、2対1看護料、2.5対1看護料+10対1補助料を算定している全国の病院から、地域・開設者・病床規模を考慮して20施設を選択した。
1999年9月下旬~10月の連続した30日間で調査を実施した。対象患者は調査期間中に一般病棟(精神科病棟、結核病棟、療養型病床群を除く)に入院している患者全員とした。また、健康な新生児、特定入院料を算定している患者は除外した。看護必要度のチェックは、チームナーシングの場合はチームリーダー、受け持ち制の場合は 受け持ち看護婦が行うこととし、30日間必ず同一の方法で実施するよう依頼した。測定は、毎日1回、14時から15時の間に実施し、チェック票への記入もこの時間に行った。看護必要度チェック票のデータはすべてコンピューターに入力してもらい、収集した。
(2)調査説明
研究者が対象となる20施設へ赴き、ガイダンスを行った。その後各施設の看護部長また全体説明会を行った。プレテスト実施中の質問事項についてはFAXにて対応した。
結果と考察
(1)看護必要度チェック、データ処理所要時間
患者1人あたりのチェックに要した時間は、最長時間が4.24分、最短時間は1.67分であった。平均所要時間は2.58分であった。患者一人当たりのデータ入力所要時間は、最長時間が3.10分、最短時間は0.75分であった。平均所要時間は1.48分であった。チェックと入力を同一人が行った群では、患者1人あたりのチェック及びデータ入力に要した時間は、平均2.60分であった。
チェック票の記入者が直接データを入力した方が時間は短縮できると言える。しかし、看護スタッフが業務を行ないながら測定を行なうためにはマニュアルおよびシステムの整備を行ない、さらに所要時間の短縮を図っていく必要がある。
(2)看護必要度チェックに関する意見
チェックに対する意見は、①チェック票、②調査による負担、③評価基準、④チェック方法の熟練、⑤調査対象、⑥調査への意見、⑦調査者、⑧感想、に分類した。入力者の意見は、①使い勝手、②改善案、③所要時間、④調査への意見、⑤感想の5つに分かれた。
従来の看護度の概念が根強いため、本看護必要度チェック票の基となった看護必要時間推計モデルを明確に理解してもらえるよう、啓蒙活動を行う必要がある。
今回のプレテストでは約2時間程度のガイダンスに入力の演習を行っただけでチェックが可能であった。チェックに慣れていないことや、概念の理解が不十分であったこと、入力システムの問題等から時間がかかってはいるが、これらの問題を解決すれば、調査者となるための特別な訓練は必要なく、看護スタッフ誰でもが行える可能性は高い。患者の状況をよく把握している看護婦が、日常的にチェックしていく事で、より妥当な評価が得られるものと考える。
(3)看護必要度評価一致度調査
複数の看護者による、測定結果の一致度を調査した。調査期間期間は4日間で、対象病院は厚生省看護必要度プレテスト20病院の中から、2病院を選択した。1人の患者に対して、婦長・リーダー看護婦・受け持ち看護婦と患者の4者を、一致度をみるための対象として設定した。研究の趣旨を説明し了解の得られた対象に協力を依頼し、161名の患者の一致度のデータを得た。
看護職3者の評価が一致したのは、全項目の平均では81.17%であった。「どちらかの手を胸元まで上げられる(100%)」、「処置や治療に対して抵抗する(100%)」の2項目はすべて評価が一致した。一致率が低いのは、「不安(36..0%)」、「状態(51.6%)」、「洗髪(55.9%)」、「血圧測定(61.3%)」であった。
患者の自己評価との一致度では、平均75.33%の一致であった。看護職三者による評価よりも一致度は低くなる。一致が低い項目は看護三者の一致が低い項目と類似しているが、「安静度(44.4%)」、「移動方法(53.4%)」などが、低い結果であった。
患者の自己評価と評価結果が一致しているのは、看護職三者の中でも受け持ち看護婦の評価が最も一致していた。婦長は日常生活動作に関する項目で、必要度を軽くつける傾向がみられた。
看護必要度チェック票の内容カルテへの記載状況は、カルテに記入があり患者の状況が判断できる項目は、平均8項目であった。
看護管理者への意見調査では、全体ガイダンスについてはおおむね2時間程度で理解できる、担当者へのオリエンテーションには繰り返し説明が必要であること、コンピューター等のインフラの整備が必要であることなどが指摘された。
結論
(1)本調査で用いた看護必要度チェック票は、およそ2時間程度のガイダンスで使用を始めることが可能である。しかし日常の看護業務に組み込みながらチェックをしていくには、所要時間の短縮をめざし入力システムの改善、チェック対象者の選択等の再検討が必要である。
(2)この調査で用いた看護必要度チェック票では、最も適正なチェック者は患者に直接看護ケアを提供している看護職であることがわかった。特に日常生活動作など短時間で変化する患者の状態を反映させなければならないため、その日の受け持ち看護婦等がチェック者に適している。
(3)看護必要度チェック項目については、全般的に高い一致度であったが、一致率が低い結果となった項目については、再検討が必要である。
(4)導入に関する管理上の課題は、上記の十分なガイダンスとトレーニングを行うことに加え、設備備品等の環境整備が必要である。
(5)適正な必要度を反映しうるかについて懸念の意見が多かったのは、看護時間推計モデルの理解不足や誤解が原因となっていると考える。本看護必要度チェック票の概念の理解を深めるべく、オリエンテーションやガイダンス、啓蒙活動をすすめることで、本調査で述べられた疑問や課題を解決することができると考える。
(6)チェック項目内容のカルテへの記載状況は全般的に低い結果であった。第3者による看護必要度の監査等を行なうには、記録の整備を同時にすすめる必要がある。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)