今後の歯科衛生士に対する養成方策に関する総合的研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900934A
報告書区分
総括
研究課題名
今後の歯科衛生士に対する養成方策に関する総合的研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
可児 徳子(朝日大学歯学部)
研究分担者(所属機関)
  • 矢尾和彦(大阪歯科大学歯科衛生士専門学校)
  • 松井恭平(千葉県立衛生短期大学)
  • 真木吉信(東京歯科大学)
  • 嶋野浪江(湘南短期大学)
  • 合場千佳子(日本歯科大学附属歯科専門学校)
  • 松田裕子(鶴見大学短期大学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成10年度厚生省において「歯科衛生士の資質の向上に関する検討会」が持たれ、 平成11年5月に意見書が出された。平成11年3月には、同検討会作業委員会から、教育内容の見直しの必要性について意見書が出され、「歯科衛生士養成施設における新たなカリキュラム」として大綱化されたカリキュラムと単位制の導入が示された。
本研究は、この大綱化された新カリキュラムの内容をさらに分析し、各学校においてどのような教授要綱を組むことができるのかを示すことを目的した。教育内容の見直しによる専任教員ならびに臨床・臨地実習の指導者研修の方法等については、次年度の検討課題とする。
研究方法
「歯科衛生士養成施設における新たなカリキュラム」は、基礎分野10単位以上、専門基礎分野22単位以上、専門分野54単位以上の3区分に分類され、選択必修分野7単位以上が新たに設けられて、総履修単位数は93単位以上に設定されている。週休2日制の普及ならびにゆとりある教育を重視すると修業年限は3年以上が適切となる。教育内容は具体的な科目名を示さず、従来の教育内容を尊重しながら、既存科目の拡充を図る形で新しい教育内容を加えることを原則としている。特に、歯科衛生士関連三科目の拡充と臨地実習の定着化が重要な視点となっている。本研究では、大綱化された新たなカリキュラムを大きく4分野にわけ、それぞれ分担研究者が教育内容の検討を行った。歯科衛生士関連三科目については名称に論が付され、従来の時間数の約2倍の拡充となるため、かなり詳しい教育内容の作成を試みた。作業は主として会議形式にて実施し、分担研究者から提出されたカリキュラム案について検討を行い、全体像をまとめることとした。分担研究者の担当は以下のようである。
基礎分野10単位:矢尾和彦、専門基礎分野22単位:真木吉信、専門分野34+20単位:松井恭平(歯科衛生士概論2単位、臨床歯科医学8単位)、松田裕子(歯科予防処置論8単位)、嶋野浪江(歯科保健指導論7単位)、合場千佳子(歯科診療補助論8単位)、臨床・臨地実習20単位、選択必修分野7単位:矢尾和彦。臨床・臨地実習20単位については今年度は教育現場の実情を把握する目的で、専任教員へのヒアリングを行うこととした。
結果と考察
今回の教育内容の見直しにおいて最も特徴的な事柄は、カリキュラムの大綱化と単位制の導入である。大綱化されたカリキュラムにより、教育内容の弾力化を図ることができ、養成施設の独自性が発揮できるカリキュラム編成に積極的に取り組むことができる。また、単位制を導入することにより、他の養成施設での履修を活かす方策が検討できる。単位制の導入については、現状では十分な理解が得られていないが、原則的には、昭和31年に示された大学設置基準によるものとする。以下に各分野の教育内容の概要を示す。基礎分野6単位から10単位へ 1.科学的思考の基盤:生物学、化学、物理学、統計学、情報科学など。2.人間と社会生活の理解:生命倫理、心理学、行動科学、教育学、健康科学、コミュニケーション論、カウンセリング論、社会学、社会保障概論、社会福祉概論、英語、英会話、歯科英語、その他の外国語、保健体育、体育生理学、スポーツなど。なお、この分野についてはここに掲げた科目などから養成施設の実情にあわせて、まんべんなく採用する事が望ましい。専門基礎分野19単位から22単位へ。新しい教育内容と従来の科目を対比すると以下のようになる。新しく加わる項目は、1.人体(歯・を除く)の構造と機能:解剖、組織発生、生理 2.歯・口腔の構造と機能:口腔解剖、口腔生理、咬合・咀嚼,加齢による変化 3.疾病の成り立ちと回復の促進:病理、微生物、薬理、口腔病理、口腔微生物、歯科薬理 4.歯・口腔の健康と予防に関わる人間と社会の仕組み:衛生・公衆衛生、口腔衛生、衛生統計、栄養指導、衛生行政・社会福祉。当然ながら、上記の領域ごとに教科名にとらわれず新たなカリキュラムを編成することも可能である。 専門分野38単位(臨床実習17単位)から54単位へ(臨床・臨地実習20単位) 1.歯科衛生士概論:歯科衛生士概論、医療倫理(医療従事者としての人間性の涵養、倫理観の育成)2.臨床歯科医学:歯科臨床概論は歯科衛生士概論と関連付けて教育することも可能である。 従来の科目をあてはめると歯科保存学(齲蝕治療学、歯周療法学)、歯科補綴学、口腔外科学、小児歯科学、矯正歯科学に、障害者歯科学、高齢者歯科学を加える。 疾病別分類法を採用する場合は 1 歯・歯髄の疾患(保存修復、歯内療法)2 歯周組織の疾患(歯周病)3 咬合・咀嚼障害(歯科補綴、矯正歯科、口腔外科)4 顎・口腔領域の疾患(口腔外科)5 小児の歯科疾患(小児歯科) 6 心身障害(児)者の歯科診療、先天異常・発育不全  7 高齢者の歯科診療のように組み立てることができる。3.歯科予防処置論4単位から8単位へ:歯科予防処置としては従来の形式をとることができる。さらに、第一次予防、第二次予防に分類して初期予防、継続予防とすることも可能である。口腔保健管理法は新しく加わるもので、生涯を通じた継続的な口腔保健管理を目的としており、ライフステージ別の口腔保健管理法を組み立てる。業務記録実習は歯科衛生士業務記録の記載である。4.歯科保健指導論3単位と栄養指導2単位から7単位へ:保健指導は個人と集団に分け、ライフステージ別に組み立てる。栄養指導は専門基礎分野で基礎教育を行うが、保健指導として位置付ける。新しく加わるものとして訪問歯科保健指導がある。5.歯科診療補助4単位から9単位へ:診療補助、救急処置、院内感染防止、介護技術、臨床検査法、歯科材料・薬剤がこの項目に含まれるが、訪問歯科診療の補助も求められる。6.臨床・臨地実習17単位から20単位へ:臨床・臨地実習は、歯科診療所における臨床実習を基本的には重視すべきであるが、今後、地域歯科保健サービスの展開が進むことから、地域保健実習を定着化させることが必要と
なるため、20単に設定された。この教育内容は各学校の実情に合わせて組むものであり、現在資料を収集し検討中である。選択必修分野 新しく7単位 基礎分野、専門基礎分野、専門分野のうちから選択して講義または実習を行う。
結論
大綱化された新しいカリキュラムは従来の教育内容に新たな項目を加える形でも実施可能である。さらに、領域ごとに教科名にとらわれず、社会のニーズにあう教育内容を組み立て、独自のカリキュラムを編成することもできる。新しいカリキュラムで教育を行うためには、教育に従事する専任教員、並びに実習施設で指導者として従事している歯科医師、歯科衛生士に対する研修等を行うことが必要である。専任教員並びに臨床・臨地実習の指導者に対する研修等については次年度に検討する。

公開日・更新日

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