災害初動期におけるトリアージに関する研究

文献情報

文献番号
199900917A
報告書区分
総括
研究課題名
災害初動期におけるトリアージに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
山本 保博
研究分担者(所属機関)
  • 浅井康文(札幌医科大学医学部)
  • 甲斐達朗(大阪府立千里救命救急センター)
  • 杉本勝彦(昭和大学救急救命センター)
  • 金田正樹(聖マリアンナ医科大学東横病院)
  • 二宮宣文(日本医科大学高度救命救急センター)
  • 大友康裕(国立病院東京災害医療センター)
  • 鵜飼 卓(県立西宮病院)
  • 小井土雄一(日本医科大学高度救命救急センター)
  • 石原 哲(白鬚橋病院)
  • 太田宗夫(大阪府立千里救命救急センター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
災害初動期における現場、搬送、医療機関、救護所におけるトリアージの基本マニュアルを研究作成するとともに、各ステージのトリアージを有機的に活用できるようにする。トリアージを総括的、横断的にみることにより災害初動期における活動、患者の流れがスムーズになり、それに伴う医療活動が活性化され災害によるプリベンタブルな人的被害を最小限にすることが目的である。
研究方法
災害初動期におけるトリアージを1、トリアージ、2、トリアージタック、3、現場トリアージ、4、搬送トリアージ、5、病院でのトリアージ、6、トリアージの教育・訓練法、7、トリアージと法的問題の7項目にわけて検討した。
結果と考察
結果=7項目についてさらに詳細に分類して検討した。1、トリアージは1)災害医療と災害サイクル、2)災害医療とトリアージ、3)トリアージの概念、4)トリアージの原則、5)トリアージの意義、6)トリアージオフィサー、7)トリアージの評価について検討した。2、トリアージタックについては、1)トリアージタックの機能、2)トリアージタックの種類、3)トリアージタックの記載方法、4)トリアージタックの統一化について、3、現場トリアージは、1)現場におけるトリアージ、2)現場トリアージの実際、について、4、搬送トリアージについては、1)搬送時のトリアージ、2)搬送手段、3)搬送トリアージの実際について、5、病院でのトリアージは1)、病院でのトリアージの目的、2)病院でトリアージを行う傷病者、3)病院でトリアージを行うための準備、4)病院でのトリアージとは、5)病院でのトリアージの実際、6)災害初動期における病院トリアージ部門の役割について、6、トリアージの教育・訓練法では、1)トリアージ教育の意義、2)トリアージ教育の対象、3)トリアージ教育の方法、4)トリアージ教育の評価、5)トリアージ教育・訓練の実際、6)トリアージ教育の今後について、7、トリアージと法的問題では1)災害時の傷病者の分布、2)トリアージに関する諸問題について研究を実施した。
考察=阪神・淡路大震災から5年、記憶の風化とともに大事故災害への教訓も風化しつつあるかのように感じる。景気の著しい停滞がさらに拍車をかけているにせよ、一時の災害対策に対する熱が急降下している。もちろん行政サイドの対応は熱の高低に関わりなく着実に進められていると確信しているが、それを支えフォローするのは災害発生時の受益者である一般市民であろう。逆に、市民への教育啓発活動の普及なしに防災意識の高揚も期待できない。また、実際の災害や事故発生時には各行政機関や医療機関、警察、消防、医師などの協力は勿論、地域住民の協力も不可欠となる。寺田寅彦は<災害は忘れたころにやってくる>と書いたが、最近の災害は忘れる前にやってきている。地震、風水害、火山噴火などの自然災害は、危険性に差異はあるものの日本のどの地域でも発災するだろう。人的災害でも同じである。1998年6月に発生した時速200kmで走行中のドイツ新幹線の脱線転覆事故の原因は車軸の破損とされている。この災害は、高速で走行する新幹線事故の人的被害の複雑性や対処の困難性など多くの問題を提起している。十分な安全対策がなされているとはいえ、今回のドイツでの事故のように新幹線の軌道が橋と交差している場所は、日本でも280カ所を数えるという。幸いにして重大事故にはつながってはいないものの、近年わが国でもレールのボルトを抜かれたり、線路上に障害物を置くいやがらせ事件が発生し、今後重大事故の発生につながる危険性を示唆している。飛行機や新幹線などの交通手段は、最近、大量の人を同時に高速で搬送できるよう、多数の乗員乗客を乗せる技術の粋を集めた乗り物となってきている。安全対策も十分研究されているとはいえ、飛行機事故が多発しているのも事実であり、これらは現在の技術力では防御できないことを証明している。それだけではなく、人的災害については、大規模火災、工場や地下の爆発事故、原子力発電所の事故等の危険も考えられ、最近では周辺有事における難民の大量発生も想定せざるを得ない状況となっている。これらのことより災害初動期におけるトリアージについては平時より十分検討し教育訓練を行って、災害発生時にはスムーズにおこなれる必要がある。
結論
災害初動期におけるトリアージは、各ステージにおいて変化する動的なものである。これらのトリアージを詳細に研究した。本研究を実際の災害時に役立てるためには普段から準備を十分行っていることが最も重要である。

公開日・更新日

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