大規模災害時における死体検案体制に関する研究

文献情報

文献番号
199900911A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模災害時における死体検案体制に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
高津 光洋(東京慈恵会医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 三澤章吾(筑波大学)
  • 高濱桂一(宮崎医科大学)
  • 西克治(滋賀医科大学)
  • 福永龍繁(三重大学)
  • 西村明儒(滋賀医科大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
厚生省は災害時における初期救急医療体制の充実強化の一環として、死体検案体制の整備を挙げ、都道府県の地域防災計画の作成に当たっては死体検案体制の重要性を認識し、死体検案業務の指揮命令系統と検案体制を定める事を要求している。事実、大規模災害における死亡者の権利と尊厳を保持し、将来大規模災害時における人身傷害を予防するためには、国や都道府県の救急医療体制の一環として、法医学の修練を受けた医師を中心に死体検案体制を確立し、死因をできる限り正確に診断することが不可欠である。昨年度は一般臨床医・警察(嘱託)医を含めた大規模災害時における死体検案実施マニュアルの原案を作成した。この過程で,各都道府県の地域防災計画の中で大規模災害時の死体検案体制がどのようになっているかが不明であった。そこで、本年度は都道府県の防災計画担当者を対象に死体検案体制に関する意識と実態に関するアンケート調査を実施し、その分析結果を死体検案実施マニュアルに反映させることを目的とした。
研究方法
各都道府県における地域防災計画担当者を対象に、死体検案体制が構築されているか,死体検案がどのように行われているか等についてアンケート調査し,合わせて、地域防災計画の提出をお願いした。また、その結果を参考として大規模災害時の死体検案実務マニュアルを再検討した.
結果と考察
47都道府県中33都府県(回収率70.2%)から回答があった。半数以上の18府県(54.5%)で死体検案の重要性が地域防災計画に反映されておらず、東京都を除いた残りの県においても他の機関に任せてある等不十分と思われた。死体検案体制の構築は5都県のみで、14府県(42.4%)では構築されていないとの回答であった。死体検案体制について平常時に県と市町村とで検討していないとの回答が28件(84.8%)であった。大規模災害時における死体検案をどこに依頼するかは医師会、日本赤十字社、警察の順で多く、日本法医学会の死体検案支援体制については知らないとの回答が28件(84.8%)であった。このように、東京都を除いた府県においては、地域防災計画の作成に当たって死体検案体制の重要性が必ずしも十分に認識されておらず、また、死体検案業務の指揮命令系統と検案体制が構築されていない実態が明らかになった。そこで、これらの結果を参考にして大規模災害時の死体検案実務マニュアルを作成した.
このマニュアルの主な内容は次の通りである.
(1)死体検案に関する基本的事項
わが国における異状死体の取り扱い,死体検案の重要性,大規模災害時の死体検案の特殊性等について記載する.
(2)大規模災害時における死体検案体制の概略
死体検案活動に関連する指揮・命令系統,法医学専門集団における死体検案支援体制,遺体収容・搬送,遺体収容所の設置等についての望ましい体制について記載する.
(3)死体検案活動の実際
大規模災害時の実際の死体検案における注意点や問題点等について記載する.
(4)死体検案書について
重要性,記載方法,交付と保管,大規模災害時用死体検案書及び死体検案調書の様式等について記載する.
結論
大規模災害時における死体検案体制に関して各都道府県防災計画担当者を対象としたアンケート調査の結果、東京都を除いた府県においては、地域防災計画の作成に当たって死体検案体制の重要性が必ずしも十分に認識されておらず、また、死体検案業務の指揮命令系統と検案体制が構築されていない実態が明らかになった。そこで、これらの結果を参考にして大規模災害時の死体検案実務マニュアルを作成した.

公開日・更新日

公開日
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更新日
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