パス法による臨床経過の医療管理手法の有用性の研究

文献情報

文献番号
199900898A
報告書区分
総括
研究課題名
パス法による臨床経過の医療管理手法の有用性の研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
阿部 俊子(東京医科歯科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 山嵜絆(済生会中央病院)
  • 小林美亜(慶応大学医学部医療政策)
  • 山田ゆかり(慶応大学医学部医療政策)
  • 保村恭子(済生会中央病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
クリティカル・パスという臨床経過に基づく医療管理手法の使用が、臨床経過、特に経過に対して有効であるかという検証。
研究方法
医療管理手法であるパス法の介入の前後比較。対象患者層は急性期病院の脳梗塞患者パス使用前130と使用後75例。肺がん(胸腔鏡下摘出術)パス導入前N=53、使用後N=48とした。データ収集はカルテと満足度の調査から行った。
結果と考察
脳梗塞:在院日数はパス導入前23.6±16.3日、導入後21.6±15.9日であり、差は認められなかった。コスト比較では、投薬料、画像料で統計学的な有意差が認められた。肺炎罹患率、MRI平均検査日、リハビリ開始日、発熱日数、膀胱留置カテーテル日数においては有意差は認められなかった。
肺癌:平均在院日数パス導入前32.7日、導入後23日で約9.7日在院日数が短縮されたが、統計学的に有意差は認められなかった。%肺活量低下率は、パス導入前61.5±8.21%、パス導入後66.4±11.96%で、有意差が認められた。歩行距離低下率においては統計的に有意な差は認められなかったが、パス前と比較すると導入後では約8%の増加がみられた。ドレーン抜去日においてはパス導入前4.12±5.89日、パス導入後1.3±0.6日となり有意差が認められた。肺炎発症、尿路感染、発熱日数、抗生剤使用日数、コスト、トイレ歩行開始日においては差は認められなかった。
脳梗塞パスにおいて投薬料、画像料で有意差がみられたのは、パスの導入効果というよりも平成8年度、10年度の診療報酬の改訂での検査料と薬剤料の低下と連動する。肺癌パスにおいては、肺活量の変化とオペ後のドレーン抜去日では有意差がみられたが、これは胸腔鏡下肺摘出術が標準化された形でパスになったためであると考える。さらに、胸腔鏡下肺摘出術パスでは、脳梗塞パスと同様の時期に入院していた患者のデータが収集されているのに対し、医療費改訂の影響を受けていないということは、医療費の統計学的有意差だけでは研究結果は評価できないということでもある。
第1段階の脳梗塞のパスにおいては、パス導入において業務改善が行われたということが大きな成果である。第2段階の肺癌パスにおいては、医療ケアプロセスの標準化がアウトカムに直結していたが、パス導入としてのアウトカムは今回検証されなかった。第1段階のパスでは導入効果としてのアウトカムを得ることは難しく、標準化が図られた第2段階のパスから、アウトカムの効果が検証されるようになるということが本研究からも明らかになった。現在、日本で使用されているパスは第1段階が多いと思われる。第1段階のパスのままであると、パス導入による効果が医療ケアのアウトカムとして顕著に得られない可能性があり、パスを適宜見直し、修正を行うことで標準化を図る作業を行っていくことの重要性が本研究で示唆された。
結論
医療管理手法としてのクリニカルパスは医療ケアの標準化が医療の適正を示すので、パスの導入効果を測定するには、医療ケアの標準化が必要である。この医療ケアの標準化というのは、医療ケアの質の問題だけでなく、コストコントロールとも直結する。

公開日・更新日

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更新日
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