文献情報
文献番号
199900888A
報告書区分
総括
研究課題名
災害時における広域搬送のシステム作りに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
小濱 啓次(川崎医科大学 救急医学)
研究分担者(所属機関)
- 上田 守三(東邦大学大橋病院 脳神経外科)
- 加来 信雄(久留米大学医学部 救急医学)
- 杉山 貢(横浜市立大学医学部市民総合医療センター 救命救急センタ-)
- 滝口 雅博(弘前大学医学部附属病院 救急部)
- 野口 宏(愛知医科大学付属病院 高度救命救急センタ-)
- 益子 邦洋(日本医科大学付属千葉北総病院 救命救急センター)
- 荻野 隆光(川崎医科大学 救急医学)
- 青木 光広(川崎医科大学 救急医学)
- 奥村 徹(川崎医科大学 救急医学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
大災害が発生した場合、被災地内の医療機関はその機能を消失する。このことから、大災害が発生した場合、負傷者を災害地外の医療機関に広域に搬送しなければならない。災害時には、道路の破損、建造物への倒壊等により、通行可能な道路が限られるため、救急車よりも航空機、特にヘリコプター等を用いた搬送が、より広域に速やかに負傷者を搬送することができる。このことから、この研究では、消防機関が所有する消防防災ヘリコプターや防災ヘリコプターが、災害時に傷病者の広域搬送にすぐ役立つかどうか、もしできないならば、消防・防災ヘリコプターに代わるヘリコプターとして、民間の所有するヘリコプターが利用できないかを調査した。また現在、厚生省が試行的事業として進めているドクターヘリが、災害時の広域搬送用に利用できるかどうかも検討することを目的とした。
研究方法
消防・防災ヘリコプターの運用に関しては、青森、千葉、神奈川、愛知、福岡の各県、市から資料を得ると共に現地調査した。民間ヘリコプターの運用に関しては、日本救急医療財団の民間ヘリコプターの災害時活用を検討している「広域搬送検討委員会」について調査した。ドクターヘリに関しては、厚生省のドクターヘリ試行的事業を行っている川崎医科大学高度救命救急センターを現地調査した。
結果と考察
消防・防災ヘリコプターの運用に関しては、青森、千葉、神奈川、愛知、福岡5県の調査から、①いずれの県、市においても災害時に傷病者をヘリコプターで搬送するための具体的な記載マニュアルがなかった。②傷病者の搬送件数年間0~6件と少なかった、③出動までに30分以上を要している県、市が多い、④衛生部や保健福祉部においても、災害時に傷病者をヘリコプターを用いて広域に搬送するマニュアルがなかった、などが判明した。このことから、災害時に消防・防災ヘリコプターを早期に運用することは不可能と思われた。消防・防災ヘリコプターは多目的ヘリであり、傷病者搬送用に導入されたヘリではない。このことは、通常の訓練から消火、防災、救助等を主とし、傷病者の搬送は積極的に行われていない。このことから、災害時の飛行順位は災害状況の視察が第1位であり、次が物資の搬送である。当然の結果として傷病者の搬送開始は遅くなる。災害時に重症の負傷者を救命するためには、2時間以内の治療開始が必要とされており、この時間内に消防、防災ヘリコプターが対応することは現状では不可能と言わざるを得ない。
災害時に消防や警察、防衛庁等のヘリコプターを早期に傷病者搬送用に利用できないとするならば、考えられるのが民間ヘリコプターの活用である。民間ヘリコプターは個人所有のヘリコプターも含めると約1,000機あると言われており、運航会社の所有しているヘリコプターも相当数ある。日本救急医療財団ではこのことから、公的な立場にある都道府県と民間運航会社の間を取り持ち、民間ヘリコプターを災害時有効に活用しようとしている。民間航空会社の試算では、南関東における大震災を想定した場合、2時間以内に約40機を地方自治体が指定するヘリポートに配備することが可能としている。日本救急医療財団は必要な契約書の作成とともに、民間運航会社、パイロットの資格審査等も行う予定であり、このシステムが出来上ると、災害時に、相当数の民間ヘリコプターが早期に活躍するものと思われる。
平成11年10月1日から開始された厚生省によるドクターヘリの試行的事業は、川崎医科大学では平成12年3月までで98件、東海大学医学部では2月末までに76件の搬送実績を得ている。また独自のドクターヘリの運用を行っている浜松救急研究会では、平成11年4月から平成12年2月末までで190件の搬送実績を得ている。これらの件数は従来の消防・防災ヘリコプターによる傷病者搬送件数に比べて約10倍の搬送実績であり、しかもドクターヘリには医師、看護婦等が搭乗しているので、現場から治療が開始される。また救急専用のヘリなので、必要に応じて何時でも飛行が可能となる。また、ドクターヘリは救命救急センターを基地としているので、負傷者の収容もスムースに行われる。川崎医科大学では現在、災害拠点病院との連携を考えており、広域災害時の傷病者の治療、搬送、収容に大いに役立つものと思われる。
災害時に消防や警察、防衛庁等のヘリコプターを早期に傷病者搬送用に利用できないとするならば、考えられるのが民間ヘリコプターの活用である。民間ヘリコプターは個人所有のヘリコプターも含めると約1,000機あると言われており、運航会社の所有しているヘリコプターも相当数ある。日本救急医療財団ではこのことから、公的な立場にある都道府県と民間運航会社の間を取り持ち、民間ヘリコプターを災害時有効に活用しようとしている。民間航空会社の試算では、南関東における大震災を想定した場合、2時間以内に約40機を地方自治体が指定するヘリポートに配備することが可能としている。日本救急医療財団は必要な契約書の作成とともに、民間運航会社、パイロットの資格審査等も行う予定であり、このシステムが出来上ると、災害時に、相当数の民間ヘリコプターが早期に活躍するものと思われる。
平成11年10月1日から開始された厚生省によるドクターヘリの試行的事業は、川崎医科大学では平成12年3月までで98件、東海大学医学部では2月末までに76件の搬送実績を得ている。また独自のドクターヘリの運用を行っている浜松救急研究会では、平成11年4月から平成12年2月末までで190件の搬送実績を得ている。これらの件数は従来の消防・防災ヘリコプターによる傷病者搬送件数に比べて約10倍の搬送実績であり、しかもドクターヘリには医師、看護婦等が搭乗しているので、現場から治療が開始される。また救急専用のヘリなので、必要に応じて何時でも飛行が可能となる。また、ドクターヘリは救命救急センターを基地としているので、負傷者の収容もスムースに行われる。川崎医科大学では現在、災害拠点病院との連携を考えており、広域災害時の傷病者の治療、搬送、収容に大いに役立つものと思われる。
結論
今回の調査結果から以下の結論を得た。
①消防・防災ヘリコプターは災害時発生時、直ちに傷病者搬送用のヘリコプターとしては利用し難いこと、②民間のヘリコプターは準備さえ十分に行えば、災害時早期から相当数のヘリコプターを傷病者搬送用に活用できる可能性があること、・厚生省が試行的事業として行っているドクターヘリは、災害時の傷病者の救命治療、搬送に有用であることが判明した。
今後は、消防・防災ヘリコプターが災害時に傷病者搬送用にも直ちに利用できるシステム作りと、ドクターヘリの全国展開が必要と思われた。
①消防・防災ヘリコプターは災害時発生時、直ちに傷病者搬送用のヘリコプターとしては利用し難いこと、②民間のヘリコプターは準備さえ十分に行えば、災害時早期から相当数のヘリコプターを傷病者搬送用に活用できる可能性があること、・厚生省が試行的事業として行っているドクターヘリは、災害時の傷病者の救命治療、搬送に有用であることが判明した。
今後は、消防・防災ヘリコプターが災害時に傷病者搬送用にも直ちに利用できるシステム作りと、ドクターヘリの全国展開が必要と思われた。
公開日・更新日
公開日
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