文献情報
文献番号
199900886A
報告書区分
総括
研究課題名
インターネットを活用した遠隔医療により離島・へき地における医療の質の向上と医師の確保を図るための研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
秋葉 澄伯(鹿児島大学医学部公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
- 伊地知信二(下甑村長浜診療所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
インターネットを活用した遠隔医療技術により、1)最新情報の獲得による離島・へき地に勤務する医師の資質の向上、2)離島・へき地における日常診療レベルの向上と地域格差の解消、3)離島・へき地に勤務する医師の確保、を図ることを目的に、離島・へき地における医療情報システムの開発を行う。
研究方法
1)提案した医療情報システムの評価、及びへき地中核病院内における支援体制の検討: 研究協力者による検討会を行い、システムの評価、他のシステムとの比較等を行った。また、2か所のへき地中核病院において、院内の離島・へき地医療支援体制に関し病院スタッフによる検討を行い、体制整備後の状況を評価した。2)配信メールの分析及びメーリングリストの検討:平成11年4月1日から平成11年12月31日までの間に配信されたメールに関し、内容の分析等を行った。また、メーリングリストのあり方について検討した。3)ネットワークの特性の検討:メーリングリストのログを,多次元尺度法を用いて解析を行った。4)離島・へき地で診療を行っている医療機関への意識等調査:離島・へき地に勤務する医師62名に対し遠隔医療等に関する意識調査を行い、特にパソコンの利用に消極的なものの背景因子について分析・検討を行った。また、平成10年度中に情報機器を整備した8医療機関に対し、整備後の使用状況等を調査した。5)めまいに関するパイロット研究の継続:テレビ電話と赤外線眼球運動検査機器を組み合わせためまいに関する遠隔診療の試みを継続して行った。
結果と考察
1)研究協力者の試用結果から、昨年の研究で我々が提言した、操作の省力化、操作の簡便化、ネットワーク網の横断化、拡張性の強化、低コスト化、の各々の項目が達成されていることが確認された。特に、メーリングリスト上では症例検討に加え、日常診療に関する情報の交換も連日行われ、地域全体の診療レベルの向上に寄与することから、ネットワークの横断化に対する評価が最も高かった。これまで他の遠隔医療システムを使用していた者からは操作の簡便性に対し評価された。また遠隔医療に関心が無かった者も、使用後関心が高まっていた。さらにこれまで整備されていた遠隔医療システムと併用して利用すると、より情報量が増え診療の精度が上がることから、既存のシステムの使用頻度が増えたことも報告された。さらに本システムを活用度を高めるため、(1)医師以外の(特に離島・へき地診療所の)コメディカルスタッフへのコンピューター教育の必要性、(2)面識のある相手との方が連携を取りやすいことから、システム参加者同士が直接合って情報交換等をする機会の必要性、等が意見として出された。へき地中核病院内の検討会で、遠隔医療担当のスタッフを固定し、各専門家等との調整等を担当する体制の提案がなされた。実施した結果、既存のシステムの活用が控えられていた状況が改善された他、コメディカルスタッフも間接的に参加する形になり、栄養指導等医療以外の点もコンサルトが可能になった。さらに担当者がその役割を明確に打ち出すことにより、病院スタッフのへき地診療支援に対する認識も高まり、へき地中核病院としての機能の充実につながることが示唆された。また、支援する病院側の体制の強化(担当者数の増加や、専門科目の充実、院内のスタッフの研修等)を図っていく必要性が指摘された。
2)31名からなるメーリングリストにおいて、調査対象期間中の全メールを、投稿メールと返信メールに分けた。さらに各々を内容により「疾患の照会」「診療技術等」「診療所報告」「その他」の4グループに分類し、検討を行った。 日常診療に関連した「疾患の照会」及び「診療技術等」に関しては、千人規模のメーリングリストにおける報告よりも活発な投稿が行われていた。また、同じ報告では「症例検討」が全メールの半数に達しているが、本メーリングリストでは、離島・へき地での医療に関連した「診療所報告」が最も多かった。これは様々な情報から隔絶している離島・へき地の状況から、情報交換が活発に行われた結果と考える。本メーリングリストで扱われた内容は、離島・へき地勤務医が現場で直面したものであることから、今後離島・へき地医療に関する医学研修のあり方を検討する材料としても有用と考える。さらに、このメーリングリストを他医療機関への患者の紹介に利用することにより、個人を結んだネットワークから、医療機関同士を結ぶネットワークへと発展する可能性が考えられた。
3)多次元尺度法で,メンバー間の関係を2次元平面上に布置した結果,事務局を中心に,同一円上ではないものの,集中モデルではなく,同次モデルに近い空間布置を示した。このことは,症例コンサルタントではなく,症例カンファランスが求められていることを傍証するものである。
4)前年度の調査で「医師の情報伝送への関心」は高かったが、一年経過してもあえてパソコン等の利用には至っていないものが多かった。特に情報不足を感じていないことから、パソコン等を利用する必要性はないと考えていると推察され、メリット等についての情報提供の媒体の研究・開発及び作成が今後の課題といえる。
また、情報機器を整備した後は、インターネット等の利用が主になっていた。
5)患者さんからは好意的な評価を得たが、スタッフから改善項目も指摘された。
鹿児島県においては、27の有人離島がある。本島規模(人口100人以上)の医療施設でも専従の医療関係者の確保が困難な状況があり、人口規模の小さい離島では、医療従事者がいないところもある。このため、後方支援病院と結んだ遠隔医療のシステムが整備されているが、対象が離島・へき地では日常的でないことや、操作の煩雑性、設置場所の問題等により、活用頻度が必ずしも高くない状況である。
我々が昨年まとめた、離島・へき地において活用されやすい遠隔医療システムのための5つの提言、1)操作の省力化、2)操作の簡便化、3)ネットワーク網の横断化、4)拡張性の強化、5)低コスト化、を実現するものとして、現在普及しているコンピューターを利用し、インターネットを活用したシステムを提案した。
このシステムにより、これまで遠隔医療システムの定着の障壁とされていた、高額な費用、操作の煩雑性等が解消されることが確認され、遠隔医療への医師の関心も高まった。また、低コストであり、他の専門的かつ高性能な遠隔医療システムの導入を考慮する際の、入門的な位置づけとしても有用と考える。今後、このシステムが離島・へき地に普及することにより、日常診療のレベルが向上し、医療水準の地域格差が解消されるとともに、医師の知的好奇心も満足させることができ、医師の確保の障害となっている情報収集の困難性や、自己研鑽の場としても有用と考える。
さらにこのような遠隔医療が普及するにつれ、離島・僻地医療の後方支援病院、特にその担い手の中心となるへき地中核病院の役割が、ますます重要になってくると考えられ、その強化も必要となっている。
2)31名からなるメーリングリストにおいて、調査対象期間中の全メールを、投稿メールと返信メールに分けた。さらに各々を内容により「疾患の照会」「診療技術等」「診療所報告」「その他」の4グループに分類し、検討を行った。 日常診療に関連した「疾患の照会」及び「診療技術等」に関しては、千人規模のメーリングリストにおける報告よりも活発な投稿が行われていた。また、同じ報告では「症例検討」が全メールの半数に達しているが、本メーリングリストでは、離島・へき地での医療に関連した「診療所報告」が最も多かった。これは様々な情報から隔絶している離島・へき地の状況から、情報交換が活発に行われた結果と考える。本メーリングリストで扱われた内容は、離島・へき地勤務医が現場で直面したものであることから、今後離島・へき地医療に関する医学研修のあり方を検討する材料としても有用と考える。さらに、このメーリングリストを他医療機関への患者の紹介に利用することにより、個人を結んだネットワークから、医療機関同士を結ぶネットワークへと発展する可能性が考えられた。
3)多次元尺度法で,メンバー間の関係を2次元平面上に布置した結果,事務局を中心に,同一円上ではないものの,集中モデルではなく,同次モデルに近い空間布置を示した。このことは,症例コンサルタントではなく,症例カンファランスが求められていることを傍証するものである。
4)前年度の調査で「医師の情報伝送への関心」は高かったが、一年経過してもあえてパソコン等の利用には至っていないものが多かった。特に情報不足を感じていないことから、パソコン等を利用する必要性はないと考えていると推察され、メリット等についての情報提供の媒体の研究・開発及び作成が今後の課題といえる。
また、情報機器を整備した後は、インターネット等の利用が主になっていた。
5)患者さんからは好意的な評価を得たが、スタッフから改善項目も指摘された。
鹿児島県においては、27の有人離島がある。本島規模(人口100人以上)の医療施設でも専従の医療関係者の確保が困難な状況があり、人口規模の小さい離島では、医療従事者がいないところもある。このため、後方支援病院と結んだ遠隔医療のシステムが整備されているが、対象が離島・へき地では日常的でないことや、操作の煩雑性、設置場所の問題等により、活用頻度が必ずしも高くない状況である。
我々が昨年まとめた、離島・へき地において活用されやすい遠隔医療システムのための5つの提言、1)操作の省力化、2)操作の簡便化、3)ネットワーク網の横断化、4)拡張性の強化、5)低コスト化、を実現するものとして、現在普及しているコンピューターを利用し、インターネットを活用したシステムを提案した。
このシステムにより、これまで遠隔医療システムの定着の障壁とされていた、高額な費用、操作の煩雑性等が解消されることが確認され、遠隔医療への医師の関心も高まった。また、低コストであり、他の専門的かつ高性能な遠隔医療システムの導入を考慮する際の、入門的な位置づけとしても有用と考える。今後、このシステムが離島・へき地に普及することにより、日常診療のレベルが向上し、医療水準の地域格差が解消されるとともに、医師の知的好奇心も満足させることができ、医師の確保の障害となっている情報収集の困難性や、自己研鑽の場としても有用と考える。
さらにこのような遠隔医療が普及するにつれ、離島・僻地医療の後方支援病院、特にその担い手の中心となるへき地中核病院の役割が、ますます重要になってくると考えられ、その強化も必要となっている。
結論
インターネットを利用した遠隔医療のシステムにより、離島・へき地の医療の質の向上や、従事する医師の確保に寄与できるものと考える。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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