文献情報
文献番号
199900880A
報告書区分
総括
研究課題名
在宅医療システムの実用化と経済効果に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
阪井 裕一(国立小児病院・麻酔集中治療科医長)
研究分担者(所属機関)
- 鈴木康之(国立小児病院・麻酔集中治療科医長(遠隔医療担当))
- 滝澤博(セコム開発センター・ソフト開発グループマネージャー)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
在宅医療の推進は医療経済効率、生活の質、医療の質への一般の要求を満たす手段として期待されている。しかし患者が分散すること自体は、効率の面から考えると必ずしも利点とはならない可能性を有する。本研究では、テレビ電話を中心にした遠隔医療の実用化と、在宅医療にもたらす医療効率を患者側、医療供給側から総合的に検討するものである。在宅医療の実用化の要となるテレビ電話の医療用への改良開発の研究を行い、在宅医療での、医師患者間のコミュニケーション、信頼関係の確立、安全性の確立に寄与する可能性を検討するとともに、在宅医療現場での対象をこれまでの研究の小児以外にも拡大し、不必要な通院・入院、往診等の面で、経済効率に寄与する可能性を検討する。
研究方法
2年度目である本年度は、1)テレビ電話を医療研究用に改良開発するとともに、フィールドでの評価実施に向けて、プレ評価として実患者に試用し、最終的な設計を確認して必要台数の製作を行った。また、2)フィールド評価に協力頂く国立小児病院関係病院の2病院の現状調査を行うとともに、具体的なフィールド評価の実施計画を策定した。1)市販テレビ電話の改良とプレ評価:本研究まで当研究者のグループは、在宅医療へのテレビ電話の導入を多角的に検討してきており、一般的な公衆電話回線であるISDN回線を用いたテレビ電話システムでも臨床使用上には十分に機能を発揮できるが、カメラ機能や聴診器機能など、細部にわたる操作性での改良点が医療供給側から指摘されていた。昨年度から研究を進めた結果として、それらの改良を加えた医療研究用機器を開発し、数台をプレ評価として短期間在宅医療現場で試用し、最終的な設計を確認するとともに、フィールド評価用に必要台数の製作を行った。国立小児病院関係病院の現状調査と実施計画の策定:フィールド評価に先立ち、関係病院での現状調査として、小児以外への対象拡大を行う上で、評価患者の条件の調査、設置から導入に関わる準備作業、導入後のオペレーションの手順、評価項目や評価期間等を関連の機関とともに検討して再設定した。
結果と考察
1)市販テレビ電話の改良とプレ評価に関しては、アイシンコスモス社の製品(AIC EYE)を中心に改良開発を行った。医療提供側からの要望としていたカメラ操作性の改良として、手持ち可能なカメラであること、接写が可能であること、照明がついていることの条件を満たすカメラの開発と、遠隔操作が可能な設置型カメラに、新たに運台を付加してコントロール範囲を広げる開発を行った。また、医療用として聴診器機能にアンプを付加する開発を行うことを含めて、3項目の改良開発を完了した。医療研究用試作として製作した数台を用いて、実患者への試用を行った結果、臨床試用上は画質・速度・動きの性能は充分であり、特に手持ちカメラの操作性について高く評価されており、医療提供側が要求する機能を満足するものであると解釈された。テレビ電話を中心とした遠隔医療研究用のシステムは、患者サイドでの価格を安くして欲しいとの要望が高いが、製品化時の数量にもよるものの、概ね実用性が出てきたものと思われる。2)国立小児病院関係病院の現状調査と実施計画の策定に関しては、昨年度は保守対応での経済効率のタイムスタディを行ったが、主に小児の侵襲的人工呼吸患者を対象に開発してきた我々のシステムを別の種類の患者層に使用することにより、テレビ電話を在宅医療にさらに普及させるための経済効率を含めた有用な情報が得られるものと考えられた為、国
立小児病院関係病院の協力を求めた。在宅人工呼吸患者、特に非侵襲的人工呼吸患者が著しく増加している一方、呼吸管理の専門家の数が今後追いついて行けなくなる事が考えられる。非侵襲的人工呼吸は、非侵襲的である反面、患者自身の協力が不可欠である。他の在宅医療にもまして、医療者側とのコミュニケーション、信頼関係の樹立が重要な在宅医療である。その意味でテレビ電話を中心とした遠隔医療が最も活躍する可能性がある対象であり、非侵襲的人工呼吸器を用いた在宅療養患者を対象者として特定した。我々のシステムの導入により、安全に在宅管理が開始され、また患者のコンプライアンスの改善が見られれば、呼吸不全の増悪や不必要な入院、往診がなくなり、安全でかつ経済的な在宅人工呼吸を普及させることが可能となる。数少ない呼吸管理の専門家を効率よく配置し、慢性呼吸不全患者に対する在宅医療を推進してゆくための足がかりとなるものと判断された。具体的な評価項目の設定については、医療の質に関わる項目として、コンプライアンスデータ、病態に関わる観察項目を各患者で情報を取得して蓄積するとともに、その他遠隔医療指導時のチェック項目を策定したが、その内容に沿った確認・記録を行うことで、導入効果上の医療の質評価データを蓄積する。さらに、経済効率を定量的に確認するために、外来受信、往診、訪問看護、入退院、緊急連絡の各々の記録から、頻度と時間的指標での経済効率分析データとして蓄積する。用いる機器に関しては、患者側と医療供給側への意見の聴取を行うこととした。これらの評価項目に従い、10例程度の対象者に、約半年間の試用評価データから検証を行うこととした評価計画を概ね策定完了した為、国立小児病院をはじめとする関係病院の主治医より患者及び介護者への評価協力の同意を経て、具体的な評価を行うことが可能となった。現段階での考察として、市販されているテレビ電話は、一般のテレビカンファレンス用に開発されており、遠隔医療に用いるためには、聴診器機能や局所視診用カメラシステムの開発が不可欠であり、医療者側、患者側に加えて企業側の意見の取り入れが必要である。今回実際に試用した結果として、短期評価ではあったが、臨床試用上で画質・速度・動きについての性能は充分であり、さらに医療的な機能として付加した聴診機能と局所視診用のカメラの基本機能も満足できるものとなった。これらは実際の在宅患者を対象に与えられたハードウエアを如何に改善し、使いこなすかを検討することが今後とも必要であろうが、最適な機能価して行く上では、一定のタスクを課すなどの客観的評価が可能な形態の検討も必要と考える。国立小児病院麻酔集中治療科において、1980年代より在宅人工呼吸療法をはじめとする高度在宅医療に取り組み、患児に家庭という健全な環境を与え、正常な成長発育を促すとともに、慢性呼吸管理患者の長期入院を減少させる試みを行ってきた。我が国の在宅人工呼吸患者の推移は年々増加しているが、中でも非侵襲的人工呼吸は近年注目され、著しく患者数が増加している。本研究はこれまでの研究成果を、別の種類の患者層である非侵的襲的人工呼吸患者対象へと拡大した試みにより、今後の我が国の在宅医療に及ぼす影響が大きいと考えられる。
立小児病院関係病院の協力を求めた。在宅人工呼吸患者、特に非侵襲的人工呼吸患者が著しく増加している一方、呼吸管理の専門家の数が今後追いついて行けなくなる事が考えられる。非侵襲的人工呼吸は、非侵襲的である反面、患者自身の協力が不可欠である。他の在宅医療にもまして、医療者側とのコミュニケーション、信頼関係の樹立が重要な在宅医療である。その意味でテレビ電話を中心とした遠隔医療が最も活躍する可能性がある対象であり、非侵襲的人工呼吸器を用いた在宅療養患者を対象者として特定した。我々のシステムの導入により、安全に在宅管理が開始され、また患者のコンプライアンスの改善が見られれば、呼吸不全の増悪や不必要な入院、往診がなくなり、安全でかつ経済的な在宅人工呼吸を普及させることが可能となる。数少ない呼吸管理の専門家を効率よく配置し、慢性呼吸不全患者に対する在宅医療を推進してゆくための足がかりとなるものと判断された。具体的な評価項目の設定については、医療の質に関わる項目として、コンプライアンスデータ、病態に関わる観察項目を各患者で情報を取得して蓄積するとともに、その他遠隔医療指導時のチェック項目を策定したが、その内容に沿った確認・記録を行うことで、導入効果上の医療の質評価データを蓄積する。さらに、経済効率を定量的に確認するために、外来受信、往診、訪問看護、入退院、緊急連絡の各々の記録から、頻度と時間的指標での経済効率分析データとして蓄積する。用いる機器に関しては、患者側と医療供給側への意見の聴取を行うこととした。これらの評価項目に従い、10例程度の対象者に、約半年間の試用評価データから検証を行うこととした評価計画を概ね策定完了した為、国立小児病院をはじめとする関係病院の主治医より患者及び介護者への評価協力の同意を経て、具体的な評価を行うことが可能となった。現段階での考察として、市販されているテレビ電話は、一般のテレビカンファレンス用に開発されており、遠隔医療に用いるためには、聴診器機能や局所視診用カメラシステムの開発が不可欠であり、医療者側、患者側に加えて企業側の意見の取り入れが必要である。今回実際に試用した結果として、短期評価ではあったが、臨床試用上で画質・速度・動きについての性能は充分であり、さらに医療的な機能として付加した聴診機能と局所視診用のカメラの基本機能も満足できるものとなった。これらは実際の在宅患者を対象に与えられたハードウエアを如何に改善し、使いこなすかを検討することが今後とも必要であろうが、最適な機能価して行く上では、一定のタスクを課すなどの客観的評価が可能な形態の検討も必要と考える。国立小児病院麻酔集中治療科において、1980年代より在宅人工呼吸療法をはじめとする高度在宅医療に取り組み、患児に家庭という健全な環境を与え、正常な成長発育を促すとともに、慢性呼吸管理患者の長期入院を減少させる試みを行ってきた。我が国の在宅人工呼吸患者の推移は年々増加しているが、中でも非侵襲的人工呼吸は近年注目され、著しく患者数が増加している。本研究はこれまでの研究成果を、別の種類の患者層である非侵的襲的人工呼吸患者対象へと拡大した試みにより、今後の我が国の在宅医療に及ぼす影響が大きいと考えられる。
結論
市販されているテレビ電話を医療研究用に改良開発を行い、試用結果にて臨床上の使用に問題ないこと、操作性が著しく向上したことを確認したとともに、評価に必要な台数を開発した。また、フィールド評価を行う上で非侵襲的人工呼吸患者を対象とした評価計画策定を完了し、国立小児病院を中心とした関係病院での評価準備を行ったため、次年度にて10例程度のフィールド評価を実施し、その経済効率についても研究して行きたい。
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