医療テクノロジ-・アセスメントに関する研究

文献情報

文献番号
199900871A
報告書区分
総括
研究課題名
医療テクノロジ-・アセスメントに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
久繁 哲徳(徳島大学医学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
10,125,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先進国においては,高齢化および疾病構造変化,医療技術の高度化,医療費の高騰化に対して,保健医療改革が進められている。国際的には,こうした多様な医療政策的な課題に対して,医療テクノロジ-・アセスメント(healthcare technology assessment, HTA),根拠に基づく医療(evidence-based medicine)により,医療の総合的な評価を行い,効果的で効率的な医療の最適な戦略を検討することが試みられている。そこで,今回,わが国におけるHTAについて,標準的な評価方法の開発,組織体制の確立など総合的な検討を行いたいと考えた。また,そうした戦略の下で,個別の医療技術の事例評価を行い,わが国におけるHTAの評価結果の情報を蓄積することとした。
研究方法
わが国におけるHTAの系統的な研究を,昨年度に引き続き,つぎの方法および計画にしたがって実施した。 1.標準的方法の開発:わが国の状況に対応したテクノロジ-・アセスメントの評価方法の開発を,同定,検証,統合,伝達の項目に従って行った。 1) 同定(HTAの優先順位):わが国で実施すべきHTAの優先順位について,厚生科学研究を事例にとり,チェックリストに基づき評価を行った。 2) 検証(非-無作為化比較試験(RCT)の活用可能性):わが国で医療技術の有効性を評価する場合,RCTと非RCTの双方を組合わせることが必要であることを提言した。 3) 統合(臨床診療ガイドラインの開発方法):わが国および諸外国で開発された診療ガイドラインについて,標準化されたチェックリストに基づき評価を行った。 4) 伝達(健康サ-ビス研究への投資の見返り):上記の同定と同じように,チェックリストを用い,健康サ-ビス研究への投資の見返りについて,その潜在的可能性を検討した。 2.HTAの組織化:わが国におけるHTAの医療政策への組み込みに必要な組織体制のあり方を検討するために,国際的に成功した代表例であるスウェ-デンのHTA責任者により,わが国の現状を評価してもらうとともに,日本医療技術評議会設立の提言を受けた。 3.個別医療技術の評価:HTAの方法論的検討の成果に基づき,わが国におけるHTAの枠組みを設定し,個別の医療技術に適用を試みた。事例検討としては,つぎの10の医療技術を対象として用いた。 1) 脳低体温療法のHTA,2) 乳癌補助療法の経済的評価,3) 心臓移植患者の生活の質の評価,4) 心臓移植の便益,5) ヘリコバクタ-・ピロリ検査戦略の経済的評価, 6) 精神疾患の薬物療法の評価,7) 血液浄化療法のHTA,8) 不妊治療の経済的評価,9) 癌検診のHTA(インフォ-ムド・コンセント),10) C型肝炎患者の生活の質の評価。
結果と考察
わが国におけるHTAについて,標準的な評価方法の開発および組織体制の検討,個別医療技術評価など,総合的な検討を行った。 HTAの第一の段階である同定では,今回,健康研究の優先順位を判断するために,チェックリストを利用して,厚生科学研究の報告について検討を行った。その結果,上記の報告では,実践的な問題解決に向けた内容が極めて乏しく,今後の厚生科学の採択,評価,などに明確な基準が必要と考えられる。 次ぎの段階の検証では,非RCTによる評価の可能性を検討した。その結果,RCTとともに非RCTを併合して利用することが必要であることが示され,今後の根拠に基づく医療(EBM)の確立に向けて,積極的な評価が望まれる。
統合の段階では,診療ガイドラインの質の評価を行った。国際的に標準化された,ガイドライン評価のチェックリストを用い,わが国と諸外国のガイドラインの評価を行った。その結果,わが国のガイドラインの質は,諸外国に比べて極めて低かった。今後,標準化された開発方法に基づき,質の高いガイドラインを開発することが不可欠であると考えられた。 伝達の段階では,健康サ-ビス研究の投資の評価について検討を行った。わが国の厚生科学研究の報告には,見返りの利益を考慮した記述がほとんど欠如しており,計画の段階から,こうした点を考慮することが必要であり,実施後の追跡評価も必要であることが指摘された。 こうしたHTAの評価活動を積極的に,政策に組み込むことが重要な意味を持つが,先進諸国の中の代表的な成功事例であるスウェ-デンの視点から,わが国の現状を評価するとともに,今後の重要な課題として,わが国のHTAに関する独立機関,すなわち日本医療技術評議会(JACOHTA)を設立することが提言された。 さらに,個別医療技術へのHTAの適用により,わが国での評価の実施可能性とともに,評価結果の政策への利用可能性も示された。したがって,わが国のHTAは,上にも述べたように,優先順位の高い医療技術の評価を系統的に進め,その成果を多様な利害関係者に伝達するとともに,具体的な政策に利用する段階に移行したものと考えられる。
結論
わが国におけるHTAの系統的な研究を,1.標準的な方法の開発,2.HTAの組織化,3.個別の医療技術に対するHTAの適用の3つの側面から実施した。その結果,HTAを進めるための方法論的な問題とその改善策が明かとなった。また,個別医療技術へのHTAの適用により,わが国での評価の実施可能性とともに,評価結果の政策への利用可能性も示され。したがって,わが国のHTAは,上にも述べたように,優先順位の高い医療技術の評価を系統的に進め,その成果を多様な利害関係者に伝達するとともに,具体的な政策に利用する段階に移行したものと考えられる。こうした課題に対応するためには,わが国のHTAに関する独立機関として,日本医療技術評議会(JACOHTA)を設置し,組織化を行うことが重要であることが示唆された。

公開日・更新日

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