生活習慣病予防のための栄養素、非栄養素成分等の最適摂取量に関する多施設共同研究

文献情報

文献番号
199900851A
報告書区分
総括
研究課題名
生活習慣病予防のための栄養素、非栄養素成分等の最適摂取量に関する多施設共同研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
田中 平三(東京医科歯科大学難治疾患研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 五十嵐脩(お茶の水女子大学生活環境研究センター)
  • 磯博康(筑波大学)
  • 久代登志男(日本大学)
  • 古野純典(九州大学)
  • 武林亨(慶應義塾大学)
  • 松村康弘(国立健康・栄養研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
9,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本年度は、主として生活習慣病予防の観点から、食事摂取量と生活習慣病(脳卒中、線溶系機能低下、虚血性心疾患、高コレステロール血症、高トリグリセライド血症、高血圧、糖尿病、耐糖能低下、肥満、がん(胃、大腸、肺、乳房))に関する研究の系統的レビューを行った。
研究方法
1990年以降のレビュー論文、メタ・アナリシス論文、そして専門書を検索、リストアップし、それらのリストからできるだけ最新のもの、引用文献数の多いもの、学術的(質的)価値の高いと思われるもの数編を選択し、これを骨子とした。骨子とした論文が刊行された後に、公表されている原著論文(骨子とするレビュー論文等に引用されなかった論文)を検索し、これらを"文献分類法"に基づいて"コード化"した。また、米国、カナダ、EU等における栄養所要量に関する最新情報の収集・整理を行い、さらに、食事摂取量をある程度推定できると思われる生化学指標をまとめた。
結果と考察
脳卒中の発症を抑制する栄養素として、飽和脂肪(脳出血、脳梗塞)、動物性たんぱく質(脳出血)、n3系多価不飽和脂肪酸及び魚(脳梗塞)、カルシウム、カリウム(脳梗塞)、ビタミンC(脳卒中)、野菜、果物(脳出血、脳梗塞)が挙げられた。がんについては、全体の約30%は食事に起因すると言われているが、胃がんや大腸がんでは食事の影響がきわめて大きいと考えられる。英国の世界がん研究基金(World Cancer Research Fund、以下WCRF)と米国がん研究財団(American Institute for Cancer Research、以下AICR) は、1997年に「食物・栄養とがん予防:世界的展望」と題する報告書を出版し、がん予防のための食物・栄養のガイドラインを発表した。この報告書の内容にもとづいてがん予防のための食物・栄養要因に関する疫学的知見を総括し、さらに、胃がんと大腸がんについては、その後発表された疫学研究の結果を加えて、最新の知見をまとめた。その中で、がん予防の観点から最も注目される食事要因は野菜・果物であった。野菜・果物が口腔がん、食道がん、胃がん、大腸がん(果物は除く)および肺がんに対して予防的であることは確実であり、膀胱がんや乳がんなどについてもほぼ確実に予防的である。その他、子宮がん、前立腺がんあるいは腎臓がんに野菜が予防的であることが若干の研究で指摘されていた。野菜・果物には多種多様の成分が含まれているが、どの成分ががんに予防的であるかは定かでない。カロテノイド、ビタミンCあるいはビタミンEなどの抗酸化物質の発がん抑制作用は以前から注目されているが疫学的知見は十分でない。その他、糖尿病、虚血性心疾患、高コレステロール血症、高トリグリセライド症、高血圧、肥満についても同様のevidence一覧表を作成した。また、第7次栄養所要量改定に向けて、DRIに関する最新情報を入手することを目的とし、昨年アメリカのFood and Nutritoin Boardより出版された「Dietary Reference Intakes -Thiamin, Riboflavin, Niacin, Vitamin B6, Folate, Vitamin B12, Panthothenic Acid, Biotin, and Choline-」をもとに、それぞれの栄養素別、特に許容上限摂取量を制定するにあたる根拠を中心にまとめた。その結果、UL値に関しては、データが不十分であるため、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸以外は制定されなかった。また、日本ではまだ制定されていないビタミン様物質であるコリンについても制定されており、第7次改定での参考になることが明らかとなった。さらに、各栄養素・非栄養素摂取量を反
映すると考えられる生化学的指標(バイオマーカー)に関する知見の整理も行った。
結論
生活習慣病の各疾患の発症あるいは発症予防とエネルギー、各種栄養素、非栄養素、食品の摂取量との関連を中心に整理した。これらにより、量・反応関係が明確なものとそうでないものの整理ができ、各疾患の予防のための栄養素・非栄養素の摂取量に関する知見が整理されるとともに、コホート研究として今後何に着目すべきかが明かとなった。すなわち、疾病によっては、量・反応関係をメタ・アナリシス等によって推定することが可能であり、疾病発症予防のための摂取量を特定することが可能となった。次年度には、一部の疾患に関するメタ・アナリシスを行い、量・反応関係を明らかにしたい。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)