循環器疾患の発症と危険因子との時間的関連および至適予防対策時期に関する研究

文献情報

文献番号
199900846A
報告書区分
総括
研究課題名
循環器疾患の発症と危険因子との時間的関連および至適予防対策時期に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
川村 孝(京都大学)
研究分担者(所属機関)
  • 平井真理(名古屋大学)
  • 吉田勉(藤田保健衛生大学)
  • 土田哲男(エスエル診療所)
  • 岡本登(愛知三の丸病院)
  • 池田信男(中日病院)
  • 稲垣春夫(トヨタ記念病院)
  • 松原達昭(名古屋大学)
  • 大杉茂樹(デンソー)
  • 寺澤哲郎(東海銀行)
  • 安藤晃禎(三菱電機名古屋製作所)
  • 玉腰暁子(名古屋大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
心筋梗塞、脳血管疾患は死亡や長期臥床に至ることが多く、働き盛りでは特に社会的損失が大きい。従来、これらの病態は疾患単位で疫学的な検討がなされてきたが、各疾患の部位や亜病型によって危険因子の種類や程度、経過が異なることが予想される。病態と危険因子との関係をさらに詳細に検討することにより、循環器疾患の予防対策の充実を図ることを目的とする。
研究方法
(1)愛知県内の10事業所で合計20万人の従業員を包含するコホートを構築する。
(2)死亡や長期病欠者を疾患、性、年齢、職種などに分けて発生頻度を検討する。なお長期病欠の定義は、「外傷を含む健康上の理由による30日以上の休業者」とした。死亡者は死亡までにさまざまな期間で休業しているので、長期病欠者に含めて集計する。
(3)急性心筋梗塞、脳血管疾患(脳出血、脳梗塞、くも膜下出血)について、部位あるいは亜病型(急性心筋梗塞では塊状壊死型、散在壊死型、脳梗塞ではラクナ型、アテローム血栓性)、発症時の状況、および発症前6年間の身体状況について詳細なデータを収集する。
(4)症例に事業所、職種、性、年齢をマッチさせた対照を1対2の割合で設定する。両者の過去5~6年間の定期検診成績、飲酒・喫煙、および治療状況を収集し、その経年変化を比較する。
結果と考察
予定された10事業所のうち6事業所(従業員総数99097人)において1998年度に新たに発生した死亡および長期病欠者が把握できた。事業所の業種は、製造業(3カ所、75174人)、金融・サービス業(3カ所、23923人)であった。従業員の性別人口は男性が87774人、女性が11323人、年齢別人口は29歳以下が26991人、30~39歳が27741人、40~49歳が22061人、50歳以上が22304人であった。
(1)死亡について 死亡者は99人で、すべて男性であった。死亡率は男性人口10万当り年間112.8人であった。年齢別では、29歳以下が2人(死亡率、男性人口10万当り10.4人)、30~39歳が16人(同62.3人)、40~49歳が39人(同184.0人)、50歳以上が52人(同239.7人)であった。臓器別では、消化器系が29人(同33.0人)、心血管系が16人(同18.2人)、自殺が15人(同17.1人)、呼吸器系が12人(同13.7人)、脳血管系が7人(同8.0人)、外傷・事故が7人(同8.0人)、泌尿・生殖器が6人(同6.8人)、その他が3人(同3.4人)であった。なお、腫瘍性疾患であることが判明しているのは、このうち37名であった。
(2)長期病欠について 死亡を含む1ヵ月以上の長期病欠者は491人であった。男性が438人、女性が53人で、その発生率はそれぞれ人口10万当り年間499.0人、468.1人であった。年齢別では29歳以下が88人(発生率、人口10万当り326.0人)、30~39歳が81人(同292.0人)、40~49歳が112人(同507.7人)、50歳以上が210人(同941.5人)であった。臓器別では、消化器系が103人(同103.9人)、外傷・事故が78人(同78.7人)、精神が55人(同55.5人)、呼吸器系が39人(同39.4人)、神経・脳が34人(同34.3人)、骨・筋・靭が30人(同30.3人)、心血管系が28人(同28.3人)、泌尿・生殖器が27人(同27.2人)、脳血管系が20人(同20.2人)、その他51人(同51.5人)であった。なお、腫瘍性疾患であることが判明しているのは、このうち83名であった。
(3)循環器疾患の病型、亜病型、部位について 脳血管系の3病態と急性心筋梗塞の長期病欠者数はそれぞれ12人と13人で、ほぼ同じであった。脳血管系3病態のうち1人が脳出血、8人が脳梗塞、3人がくも膜下出血であった。脳出血の部位は同定されなかったが、脳梗塞の部位はテント上が4人、テント下が2人、その他が2人であった。また亜病型はアテローム血栓性が4人、ラクナ型が2人であった。急性心筋梗塞の部位は、前壁が7人(うち1人は下壁と側壁も合併)、下壁が3人、その他が5人であった。冠動脈造影検査所見は、局在性狭窄が7人と最多で、びまん性狭窄が1人、スパスム疑いが1人、他は不明であった。 (4)循環器疾患の発症時の状況について 発症時刻が同定できる循環器疾患の発症時の状況は、勤務・通勤時間中が10人、勤務時間外が12人で大きな差はなかった。
(5)自殺について 自殺は死因の第3位で、29歳以下が1人、30~39歳が4人、40~49歳が7人、50歳以上が3人であった。 
結論
従業員数が10万人に達するコホートで死亡と長期病欠の発症状況の実態を検討した。次年度もさらに症例を集積し、最終年度に危険因子の経年変化に関するコホート内症例対照研究を行う予定である。

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