栄養活動から見た地域保健福祉活動の企画・評価に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900841A
報告書区分
総括
研究課題名
栄養活動から見た地域保健福祉活動の企画・評価に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
田中 久子(埼玉県北足立福祉保健総合センター)
研究分担者(所属機関)
  • 薄金孝子(神奈川県鎌倉保健福祉事務所)
  • 高松まり子(東京都板橋区保健所)
  • 押野栄司(石川県南加賀保健所)
  • 酒元誠治(宮崎県都城保健所)
  • 藤内修二(大分県佐伯保健所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、作成した活動の評価票を実態把握を基に精選するとともに、これに基づいた実践活動の介入を行い、評価票を用いた活動の有効性を検証することを目的とする。研究1年目である今年度は、個別事例・困難事例の把握や、全国調査による実態把握を行い、先駆的活動の事業展開のポイント・促進要因・阻害要因等の分析を基に、「評価票」を精選した。さらに、これを基に地域性や活動の到達状況等に応じた新たな活動の方向性を提示することを試みた。
研究方法
本研究で評価票を作成した5つの事業(集団給食との連携による活動、健康づくり協力店との連携による活動、在宅療養者食生活支援の活動、市町村栄養活動連携、地域栄養計画の策定)は、新しい地域保健福祉活動の中で、専門性や緊急性の必要な活動に加えて、各研究者が新しい地域保健福祉活動としての取り組みに方に悩み、また大事にしている活動や、現状の中でも新しい視点で取り組みつつある活動であり、優先順位の高い事業として選定した。評価票は、協力が得られた保健所や市町村の担当者、企業の福祉厚生部門の担当者や給食担当者、民間飲食店の店主や従業員、市政モニター等に各場面で記入や聞き散り等を基に修正を重ね作成した。
選定したこれらの事業は先駆的事業であり、一部の事業を除いては量的な実態把握は困難であった。そのため、今年度は、主に事例検討に重点を置き、評価票を用いて日常業務や、関係職員・団体との対話や共同作業、集合面接法や訪問面接法、郵送法等各研究者が的確に把握しやすい方法で実態把握を行い、再度評価項目の見直しを行い、評価票について検証した。その後、評価票に基づく介入に向けて、マニュアル等の企画を試みた。
結果と考察
①集団給食との連携による活動:喫食者のQOLの実現に向けて、給食施設の到達状況に応じた栄養活動の評価ができる3つの側面から見た評価票(総合評価、個別巡回指導評価、施設支援評価)を記入するための「評価票手引き(案)」を作成し、評価票を事例検討や実態把握に基づき検証した。その結果、評価票を活用することにより、喫食者のQOLの向上や関係者の役割を視野に入れた各側面からの活動の方向性と修正部分が明らかになり、より良い栄養活動の展開が可能になった。②健康づくり協力店との連携による活動:評価票の3つの側面(事業計画・実施体制段階、健康教育・栄養食教育段階、事業維持推進体制・育成・構築段階)の評価項目が各々事業開始期、事業普及期、事業拡大期)の3つに分類され、各時期における事業のポイントが抽出された。③在宅療養者食生活支援の活動:評価票の3つの側面(活動評価、市町村支援評価、個別評価)から作成した評価票を用い、炎症性腸疾患患者に対して、事例検討を行った。その結果、支援評価の評価票の項目は、事業を体系的に進めるためにも重要であることが認識された。さらに療養者の病状や自立度により適した評価項目を追加することの必要性も指摘された。
①市町村栄養活動連携:10の側面から作成した評価票のうち、保健所側からの評価を目的に、評価票を見直し、作成した簡易版評価票を用いて全国調査を行った。その結果、町村の栄養施策や活動に管理栄養士・栄養士の有無が関連があること、反面、配置について積極的に働きかけている保健所も少ないことが明らかになった。一方、既配 置町村に対しては、町村栄養士の経験の有無や活動内容によって連携方法が異なっていることが確認された。簡易版評価票により、管内町村への保健所の働きかけのポイントが明らかになることが検証されたと同時に、この評価票に基づいたマニュアル作成の必要性が確認できた。
②地域栄養計画の策定:保健所及び市町村等の栄養計画書の分析と個別ヒヤリングを行い、抽出された先駆的事例の項目により、4つの側面(計画策定プロセス、策定における保健所支援、計画書内容、計画書の活用)から評価票を作成した。計画書の評価結果で特徴的なことは、大半の計画が年度の事業計画であったこと、参加型の計画策定が少ないこと、健康状態・行動・食べ物・健康や食に対する知識に関する目標が多いことがあげられた。また、プロセス評価の結果では、参加型計画策定が、計画の具体化の段階で幅広い事業展開につながること、地域や住民ニーズの把握を各担当が日常業務の中で行うことが、無理のない的確な実態把握になること等が明示された。⑥PRECEDE-PROCEED MODELの栄養計画策定における活用:市が策定する栄養計画に PRECEDE-PROCEED MODELの枠組みを用いてその有効性を検証した。その結果、当事者をはじめとする住民の意見を計画に反映させやすい、他の計画策定の手法を組み合わせることができる、評価指標を明確にできる、関係機関や団体の役割を明確にしやすい、計画策定に向けての課内のコンセンサスが得られやすい、の5つのメリットが提示された。
選定された5つの事業の中で、法的裏付けのある集団給食施設との連携事業以外には、
全国的には先駆的事業であり、また、集団給食施設指導事業において作成した評価票も従来の行政側の評価の視点に新しい視点を加えた評価票である。
そのため、事業評価として活用できると同時に、新しい栄養活動から見た地域保健福祉活動の中でも、優先的に行う事業として新たに事業展開を行う場合のマニュアルとして活用できる。さらに、行政栄養担当者が活用できるだけでなく、企業の福利厚生部門や民間食事提供者、ホームヘルパー等福祉部門担当者の研修や個別指導にも活用できる。
結論
評価票は、事例研究の分析や日常業務の見直し、全国調査等により抽出されたポイント等を基に修正を加えることで、①事業の各段階(開始期、普及期、拡大期)や各側面(事業実施側、事業支援側、住民側や住民の状態別、総合的等)多面的評価が可能なこと、②活動する歳に押さえなければならないポイントが明確になったこと、③連携状況の評価項目は、その後の事業展開に影響を与えることが検証された。さらに、④住民に健康状態やQOLの向上に近づくための、それぞれの役割も評価票により提示できたことで、より参加型の活動につながると同時に、活動が広がる可能性が示唆された。

公開日・更新日

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