健康日本21計画策定に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900831A
報告書区分
総括
研究課題名
健康日本21計画策定に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 勝美(聖マリアンナ医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 濱島ちさと(聖マリアンナ医科大学)
  • 池田俊也(慶應義塾大学医学部)
  • 伊津野孝(東邦大学医学部)
  • 杉森裕樹(聖マリアンナ医科大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国民健康づくり運動を推進していく上で、適切な市町村地方計画を立案することが望まれる。そのためには対象地区の疾病負担を適切に評価して、介入できる効果的な保健指導メニューを提供することが前提になる。市町村計画を立てる段階で、疾病負担量をDALYを用いて評価する場合、必要となる統計データとして性別年齢階級別死亡率と疾病別の性年齢階級別有病率が必要となる。これらのデータをもとに、DALYの障害度を用いて障害共存年数を算出することになる。疾病負担量が大きく、かつ保健サービスにより改善効果が期待できる対象疾患を選択して、保健サービスを提供することが望まれる。本研究では、市町村地方計画を立てる段階で、市町村が持つ統計資料を基に、地方毎の疾病負担を算出して、介入可能な保健データベースからメニューを選択して、予測される疾病負担の改善をコンピュータでシミュレーションすることが有用な手法であることが期待される。
地方計画を立案するためには、対象地域の時計データの収集から、政策の意思決定に必要な指標を作成して、適切な保健サービスメニューを選択を行い、その効果を予測して確認するシステムを構築することを目標に、数値目標算出、保健医療サービスメニュー、システム化について多面的に検討を行った。
研究方法
以下の課題について、分担研究を行った。
疾病負担を疾病管理指標として捉える際の問題点を検討した。
DALYを疾病負担の指標とする際の関数の特性についてまとめた。
保健政策における医療経済評価を行うことを目的に、既存の文献レビューを行った。
健康日本21における健康サービス選択を行う際に必要とされる情報を整理した。
システムかをする際の評価項目について、健康日本21施策策定支援システムの評価項目とデータベースの必要事項を明らかにした。支援システムでは、インターネット環境におけるweb databaseを構築することを目的にシステム構成について検討を行った。
結果と考察
本研究は、健康増進施策である「健康日本21」を具体的に政策に反映するためには、疾病負担の現状を把握して、政策メニューを選択するための支援システムの開発が望まれる。
今年度は、疾病負担の評価アルゴリズムに関する検討班、政策メニューデータベース構築に関する検討班、政策選定におけるシミュレーション支援システム構成検討班の3班により、別個に作業を進めるとともに、班会議により相互の要求事項を調整した。
池田班員は、疾病負担を疾病管理指標として捉える際の問題点を検討した。糖尿病や喫煙をモデルに経済評価における必要データ項目や総合的評価における問題点限界を明らかにした。直接間接費用による疾病負担の定量化について次年度以降の検討課題を明らかにした。
杉森班員は、DALY算出のアルゴリズムをホームページHTML言語で表現するためのアルゴリズムや論理展開を作成した。この成果は、支援システム構築のアルゴリズム資料とされた。
濱島班員は、米国で発表された健康改善メニューと効果に関する文献を整理した。Cochrane DBにおける健康増進介入メニューを整理した。
伊津野班員及び濱島班員は、政策メニューのDBを構築する検討班を分担した。
伊津野班員は、健康日本21の各論編にある資料を整理して、循環器疾患としてのDB構築を検討し、健康サービスの選択における必要資料を明らかにした。
システムの流れ図や展開が提案され、支援システムとして整合性が確認された。システム評価の観点から、構築されるシステムの動作評価点をまとめた。システム構築については、吉田主任研究者の提案したシステム案を検討した。システム構築の立場から application ソフトやlibrary ソフトの特性を評価し、現在提案されているシステムで予定されるデータ転送量を推計した。
以上から、健康日本21地方計画を策定し、適切な保健サービスを決定提供していくためには、現状分析、政策決定、評価という一連のシステム的な発想が必要である。本研究では、これらのシステム評価の要素について総括して、支援システムを評価するための基礎的検討を行うことにある。
保健サービスメニューを表示する際に必要とされる医療経済評価に関する研究が十分でないことが今回の研究でわかり、今後この分野の研究が期待された。医療経済研究においては、疾病管理プログラムによる分析がモデル化手法よりも適していることが示された。
本研究では、施策決定を行う際に、対象集団の疾病負担が大きいことと、かつ保健サービス提供により疾病負担の改善(死亡率の低下、障害の程度の軽少化、障害共存者の減少)が図れることを原則に保健サービス選択のweb databaseを構成を検討した。
構成要素として、DALYの障害度がわが国の保健医療環境に適しているか、新たな障害度の作成が期待される。
保健施策策定には、費用対効果が優れていることが望まれ、施策メニューデータベースには医療経済的な項目が含まれることが望ましいと考えられた。一方、既存の文献のみで費用対効果が記載されている研究は少なく、今後のデータベース構築の限界になるものと危惧された。
Web databseを構築する際、システム言語としてJAVAを採用することが自由度を確保する上で必要であるものの、databaseの大きさによって通信のみで対応するのか、メディア配布により対応するかなど検討課題を認めた。
次年度以降の作業として、評価アルゴリズム班では、疾病管理の観点から疾病負担を定量化するためのアルゴリズムの問題点を明らかにする。この問題点を整理することにより、疾病負担の期待効果を適切に表現できるようにする。期待効果としての cost of illness を追加したアルゴリズムおよび論理展開作業を行う。疾病管理の観点では、遷延モデルであるマルコフモデルなどの応用を検討する。DBの収集から、web DB(インターネットによるデータベース) として必要とされる構造を明らかにし、循環器疾患以外に、他の健康日本21各論編で扱われている項目の構造と関連性を整理する。システムをイントラネット上で構築してシステム動作を確認する。循環器疾患で明らかにされたDBをシステムに実装して、システムを検討する。モニター市町村を設定して、健康改善メニュー選択の実用性並びに問題点を検討する。使用上の問題点を明らかにして、システムの修正を行う。評価アルゴリズムについては、cost of illnessや他の指標の導入を検討する。DBの収集を継続するとともに、システム更新時のための定型作業を明らかにする。
結論
健康日本21が国民健康作り運動として定着するためには、的確な市町村計画を策定することが必要であり、計画策定には対象集団の疾病負担を基礎とした科学的根拠に基づく計画策定が望まれる。本研究では、疾病負担としてMurrayのDALYを市町村で算出して、効果が期待される改善メニューを表示するシステムを構築するために必要な要素を整理検討した。

公開日・更新日

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