保健サービスの効果測定等評価に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900798A
報告書区分
総括
研究課題名
保健サービスの効果測定等評価に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
青山 英康(岡山大学医学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域保健法の制定により、3年間の準備期間を経て、平成10年度より多くの保健事業が市町村が実施主体となる自治業務となった。さらに2000年からは各市町村が保険者となる介護保険法の発足も予定されており、保健と医療と福祉の各分野にかかわる幅広い分野で市町村が主体性を持って取り組むことが求められるようになった。したがって、従来のように国や都道府県からの受託事業として、割当てられた予算を消化していればよかった時代とは異なり、市町村が受託事業とともに地方交付税の中での財源を活用して、自主的に事業計画を策定せざるを得なくなったが、このことは策定できるようになったことを必らずしも意味していない。長年にわたっての慣例から脱け出すためには、新らしい法制定という動機づけだけでは不十分であり、計画策定に必要な資料の収集と活用の能力を策定を担当する専門職が収得していなくてはならないし、行政組織の中に策定の手順をシステム化していなければならない。
このような視点から、市町村保健婦と計画策定に当たっての保健所の専門的支援能力と体制について、地域保健法の実施初年度の段階で実態を把握しておく必要があると考えた。
その実態を基盤として、年次計画の策定手続をマニュアル化しておく必要があると考えた。すでに第三次計画の中間見直しの段階で、1995年に老人保健事業の「評価マニュアル」が作成されており、実態把握の中で、このマニュアルの活用実態も把握しておく必要があり、事業評価の上に計画策定がなされているかどうかが重要である。さらに、今回の研究目的としては、市町村保健婦の能力とともに策定手順のマニュアル化において、保健所の果たすべき役割についても明確にしておく必要があると考えている。
研究方法
3,000を越す全国の市町村において活用される事業計画策定の為のマニュアル作成の基礎資料を得るためには、まずは人口規模によって分類し、全国を網羅的に代表する市町村の選定を行う必要がある。さらに、これら市町村の選定に当たって、都道府県及び保健所との関連を考慮しなければならないので政令市保健所と都道府県保健所及び都道府県の保健婦から現実に担当している保健事業の計画策定手順と事業計画内容について報告を受けることにした。
実態の中から資料に基づく事業計画の策定手順をマニュアル化するための資料と方策を討議の中で確立する。かくして作成したマニュアルの feasible research を実施する。
今回の調査対象地区は中四国9県に限定されているが保健事業の計画策定という点で全国の市町村を代表する網羅性のあるよう標本抽出することに配慮して作業を進めた。
結果と考察
まず対象市町村の選定に当たって全国規模の視野を持つ県の保健・医療・福祉担当官と医科系大学衛生学・公衆衛生学講座担当者及び保健所所長・医師の計8名に集まって貰った。
討議の結果、政令市(岡山市、福山市、高知市)と人口規模による市町村(出雲市、建部町、大月町)及び県(徳島県、岡山県、高知県)の保健婦15名から、平成10年度の事業計画内容と策定手順について報告を受けた。
その結果、前年度実績に基づく予算要求と首長及び議会の発案による新規事業の予算要求が事業計画となっており、前年度の事業実績に対する評価は全くなされていなかった。
保健事業評価マニュアルは利用されていても、これが事業計画の策定に活用されていないし、保健所から提出されている貴重な資料さえも活用されていなかった。したがって、次回は平成10年度の事業終了後の評価を行ったうえで平成11年度の事業計画を策定した手順について報告を受けることにした。
平成10年度は地域保健法制定に基づいて、市町村が地域保険事業の計画策定を実施主体として取り組む初年度であり、前年度との「変革を期待」したが、実態は全く変革が認められなかった。そのため、実態把握の範囲を全国規模に拡大した。さらに平成11年度について、初年度の反省の下での以下の各項目の回答を求め研究協力者に集まって貰って討議を行った。
報告を求める内容は
(1)前年度の事業についての評価
(2)中長期計画の内容と策定手順及びその際に活用した資料
(3)中長期計画に基づく年次計画策定の根拠ー優先順位の意義
(4)保健所に求められる資料及び情報とその提供状況
(5)費用効果及び能率などへの配慮の有無
(6)首長及び議会への働きかけに必要な資料の作成手順と内容
(7)首長及び議会が要求する新規事業の内容
とした。
報告内容を検討する中で市町村と保健所で活用できる事業計画策定手順マニュアルの作成を図り、作成したマニュアルについては中四国9県で幅広く活用して貰い feasible study を行う。
結論
残念ながら現状は科学的な根拠を持った保健事業の計画策定が行われているとは言いえず、評価マニュアルを使用しても、それが次期の事業計画策定に活用されることさえ少ない実態が認められた。したがって、事業計画策定のマニュアルが必要なのであり、その作成は今後の地域保健活動の展開には緊急の課題と考えられる。
政令市においては今日の官庁統計が市町村単位であるため、さらに保健センターの設置区域の保健水準を示すデータを算出する必要があるし、日常業務の中で事業評価に活用できる調査・研究活動が必要である。
マニュアルの内容としては活用できる官庁統計とともに、それを調査する調査・研究方法を解説し、実践的な内容にしなければならないであろう。さらにPractice based research に伴う Evidence based healthcare への取り組み手順を示したいと考えており、feasible study で、その有効性も検討する。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-