健康増進事業の評価方法に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900796A
報告書区分
総括
研究課題名
健康増進事業の評価方法に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
猫田 泰敏(東京都立保健科学大学)
研究分担者(所属機関)
  • 湯澤布矢子(宮城大学)
  • 佐藤林正(九州看護福祉大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢化の進展に伴い、生涯を通じた健康生活の実現、特に生活習慣病の予防やストレス等の影響による半健康状態の改善のため、個人の生活習慣の改善を目指す健康増進事業の重要性はますます増加している。中でも、地域において保健婦等により対人サービスの一環として行われる健康教育の意義・役割は大きく、その評価の充実を図ることは、評価結果を踏まえた効果的な展開を推進する上で必須の要件であり、さらには保健婦機能の充実強化と専門性の確立のための重要な課題である。本研究は、地域における成人・老人に関わる健康教育を中心に、その事業プロセスである plan-do-see の各段階における評価のうち see の段階の主要な要素である効果判定に焦点を当てて、保健婦等が参加者の生活習慣等の変容に着目して効果判定を行うことを支援するためのマルチメディアソフト(「健康教育の効果判定支援ソフト」)を初めて作成し、地域での使用に供することを通じて、評価の実践化に資することを目的とした。
研究方法
まず、健康教育の効果判定という用語を用いる場合、効果の概念には様々な内容が含まれるため、本研究では「参加者の生活習慣等が好ましい方向へと変容すること」を効果の内容とした。この意味での効果判定を行うための方法について、行動計量学の立場から検討を進めることとし、以下の3つの分担研究を実施した。
1.健康教育の効果判定のための調査の立案・実施の支援手順の検討
健康教育を実施する前後での参加者の健康習慣等について調査する段階に関わる支援の手順とその具体的内容について、社会調査や疫学等の方法論を援用し、昨年度の研究成果も踏まえて、評価デザインの設定、指標の設定、調査票の作成、調査方法の決定等の点から検討した。
2.効果判定のためのデータ集計・分析の支援方法の検討
疫学、統計学、情報科学等の文献を参照しつつ、前後比較デザインに基づいて入手した個人別のデータの集計・分析の基本的な実施手順、統計手法の選択を支援する方法について検討するとともに、効果判定のための集計・分析に実用的なソフトウェアの内容等について検討した。
3.「健康教育の効果判定支援ソフト」の作成
これらの検討結果に基づき、オーサリングの過程に沿って提示単位を作成するとともに、複数の提示単位の相互関連を構造化した上で、「健康教育の効果判定支援ソフト」を作成した。なお、作成した「健康教育の効果判定支援ソフト」はCD-ROMの形態で全国の全ての保健所および市町村に配布することとした。
結果と考察
研究結果は、健康教育の効果判定支援ソフトの作成を中心としてまとめた。
1.「健康教育の効果判定支援ソフト」の作成
1)開発環境
開発環境は次の通りである。ハード関連では、使用機種はNEC Mate NX MA40D(RAM 159MB)、OSはWINDOWS 98、画面は1024×768とした。ソフト関連では、グラフィックの作成はMicrosoft Powerpoint 2000、ビデオの作成(操作画面の取り込み)はHyperCam 1.51-J、オーサリングはmacromedia AUTHOHWARE5 ATTAIN 日本語版を用いた。
2)ファイルサイズ
作成されたソフトのファイルサイズは合計で232MBであった。
3)ソフトの画面構成について
提示単位(画面)の合計数は233であった。提示単位の相互の関連づけでは、階層構造を採用し、画面間の移動はマウスでボタンをクリックすることで可能とした。
目次として、はじめに、効果判定について、調査実施編および集計・分析編の4区分を設定した。
(1)はじめに
はじめにでは、ソフト作成の目的、本ソフトの構成における特色、使い方、主要文献リストおよび画面の構成一覧を提示した。
(2)効果判定について
効果判定を地域で定着させるための基盤として、効果判定の考え方の共通理解が重要であることから、これを含む広義の概念として「評価」について整理するとともに、保健事業評価マニュアルで事業ごとに評価事項として指摘されている内容を提示した。次に効果判定のための基本的なデザインについて説明し、この説明をビデオで参照できる工夫も行った。
(3)調査実施編
調査対象と評価デザインについて、 指標について、 調査票づくり、 調査方法についておよび調査票の回収率についての5つからから構成した。
調査対象と評価デザインについてでは、効果判定を行う健康教育の決定、調査対象の決定と名簿の作成、評価デザインの設定を提示内容とした。
指標についてでは、指標設定の根拠となる健康教育の目標、指標の定義、実際に利用されている指標、標識づけの考え方、実際の指標づくりで利用されている技法等について説明した。
調査票づくりでは、調査票の概念、質問紙調査の考え方と限界について解説し、調査票を作成する手順も提示した。また、質問票を作成する上で容易に参照できるよう、昨年度の研究で収集した、既存の調査票で使用されていた質問文と選択肢を、内容に従ってデータベース化し、ソフトに含めた。
調査方法についてでは、調査方法の概念、主要な方法の手順と特徴について解説した。
(4)集計・分析編
集計・分析編は、集計と分析の進め方、統計手法の選択編およびHalwinの操作から構成した。なお、パーソナルコンピュータの使用を前提とした。
集計と分析の進め方は、データの入力について、集計と分析の手順についておよび分析結果の解釈に関連してから構成した。データの入力についてでは、回収した調査票の検票から最終的なファイルの作成までの手順について解説した。集計と分析の手順についてでは、調査対象とした集団特性の記述、介入前の調査結果の集計・分析、介入後の調査結果の集計・分析および介入前後の調査結果を対応させた集計・分析の4段階について、この順序で集計・分析を進めることを提案した。また、分析結果の解釈に関連してでは、専門職としての結果の意義づけや平均への回帰への留意について解説した。
統計手法の選択編では、統計手法の選択支援として、1時点のデータについて集計・分析するのか、あるいは介入前後でのデータの変化について集計・分析するのかの区別を出発点とした。1時点のデータについて集計・分析する場合は、1つの調査項目を集計・分析するのか、2つの調査項目の関連をみるのかを選択させ、1つの調査項目を集計・分析する場合、量的データと質的データの区分で統計手法を提示した。2つの調査項目の関連をみる場合も、データ区分のパターンで統計手法を提示した。介入前後でのデータの変化について集計・分析を行う場合においても、データ区分に従い統計手法を提示した。最終的に適用すべき統計手法を紹介する画面では、Halwinでのサンプルデータを用いた実際の操作方法について、ビデオ画面を利用して解説した。
また、対照群を設定した場合における集計・分析の支援では、これまでに説明した実施手順を、健康教育群と対照群ごとに実施するように指示した。
Halwinの操作では、Halwinの具体的な操作方法等についてビデオ画面を用いて解説し、簡単な操作マニュアルを添付した。
2.Halwin試作版(Version 1.35)の添付
昨年度の調査において3割以上の保健所・市町村において分析に適したパソコンソフトがない、という回答結果が得られたことを重視し、実際にパーソナルコンピュータ上で統計ソフトを使用できる環境づくりを推進するために、Halwin試作版(Version 1.35)を、作成者である高木廣文氏(新潟大学)の許可を得て本ソフトに添付することとした。
3.効果判定のための集計・分析に実用的なソフトウェアの検討等
効果判定を行うための基本的な集計・分析の手順と適用すべき統計手法は前述の通り整理した。これらの統計手法を適用するために既存の統計ソフトを用いる場合、統計手法を予め決定しておく必要がある。効果の意味を特定することにより、評価デザインとも関連するが、効果判定で使用する統計手法は限定される。地域において効果判定を推進するためには、統計手法の選択支援から実際の集計・分析までが1つのソフトとして、共通の操作で行えるように設計されることの意義が大きいと考えられる。
なお、本研究には、統計手法の理解に関する支援は含んでいないが、実際に地域において効果判定を推進するためには、統計学的な知識は不可欠である。分析で得られた知見を妥当に解釈し、健康教育の実践へフィードバックさせるためには、その統計手法について、どのような内容に関する、どの程度までの深さの知識を効果判定者は理解しておくべきかの基準を検討する意義は大きいと考えられる。
結論
地域における成人・老人に関わる健康教育について、保健婦等が参加者の生活習慣等の変容に着目して効果判定を行うことを支援するためのマルチメディアソフトを作成し、CD-ROMの形態で全国の全ての保健所および市町村に配布した。本マルチメディアシステムをパーソナルコンピュータで対話形式で利用することを通じて、効果判定の実施のための有効な支援が現場において得られることを通じて、評価を日常の保健活動関連技術として定着させることに寄与することが期待される。

公開日・更新日

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