保健福祉サービスの効果のQOLを含む総合的な指標による評価(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900795A
報告書区分
総括
研究課題名
保健福祉サービスの効果のQOLを含む総合的な指標による評価(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
川南 勝彦(国立公衆衛生院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢化社会を迎えて、現在、高齢者に対するtotal health promotionとして、健康診査やリハビリテーション等の保健事業と、デイサービスやホームヘルパーの派遣等の福祉事業が行われている。これらの諸サービスの有用性について、必ずしも明らかにはされていない。近年成立した地域保健法では、保健所が果たす役割の一つとして、調査研究機能をあげている。その調査研究の目的として、さらに良質で効率的な保健サービスが地域に提供されることを目指していると考えられる。
今回、保健と福祉のサービスの有用性について、ADLなど身体上の指標の他、QOL等の精神的指標を用いて、2年間のコホート研究により保健福祉サービスが果たすQOLを検討する。
研究方法
研究対象として、石川県七尾保健所の所管である七尾市における年齢71~79歳(平成10年度)の在宅高齢者1,900人のうち平成10年度ベースライン調査回答者1,405人(回収率73.9%)を対象とした。研究方法に関して、追跡対象者については平成10年度に、ベースライン調査として郵送法による調査を行った。調査項目は、ADLとQOL(PGC Morale Scale)等の調査指標、住居形態、収入、同居家族についてであった。なお、PGC Morale Scaleにより測定されるQOLは志気の高さを表している。平成10~11年度については、生存者(転出者を除く)について、健康診査、機能回復訓練、ホームヘルパーの派遣やデイ・ケア、ショートステイの保健福祉サービスの利用状況を、市の所有する既存の資料により把握した。平成11年度には、ADLとQOL(PGC Morale Scale)を郵送法で再度調査を行った。医療受療状況について、市の所有するレセプトより対象者の傷病名、入院・外来診療を把握した。死亡者については、管轄保健所にある死亡小票より死亡年月日、原死因を転記した。
解析方法としては、平成11年度調査におけるQOL(PGC Morale Scale)得点と保健サービス(特に健康診査受診)を受けたかどうか、入院歴、通院歴、住居形態、収入、同居家族との関連を、カテゴリー別に平均得点を求め比較し、性・年齢・ADL・ベースライン調査時QOL得点を一元配置分散分析により調整し検討した。ただし、死亡者についてQOL得点は0、ADLは低ADL群とした。健康診査受診については基本健康診査、がん検診(胃、肺、大腸)のいずれかを受診した場合を受診ありとした。ADLについては移動、食事、排泄、入浴、着替え、整髪・洗顔のいずれか全面介助を必要とする場合を低ADL群、すべてについて自立あるいは一部介助を要する場合を高ADL群とした。
平成11年度調査におけるQOL得点と福祉サービスをうけたかどうかとの関連については、低ADL群(ベースライン調査時または平成11年度)について平均得点を求め、性・年齢・ベースライン調査時QOL得点を一元配置分散分析により調整し比較した。
結果と考察
平成10年度ベースライン調査回答者1,405人(100%)のうち、保健福祉サービス・受療状況を把握できた者1,370人(97.5%)、平成11年度の調査回答者1,054人(75.0%)であり、死亡者30人を含めると追跡完了者1,084人(追跡率77.2%)であった。追跡できなかった者と追跡可能であった者とで、ベースライン調査時項目で比較したところ、性・年齢階級・ADL・QOL得点、自室の有無、収入、同居家族の有無、保健福祉サービスへのディマンドでは有意な違いは認められず、住居形態のみ違いがみられ、追跡できなかった者に賃家、賃貸アパートの割合が多かった。
結果として、健康診査受診者あるいは入院歴のない者に追跡後のQOLとしての志気が高い結果であったが、健康診査を受診することにより、疾病の予防及び管理ができ入院につながらない、あるいは保健行動意識が元々高く疾病の予防管理ができ、ADL低下を防ぎQOLを高く維持することができたと考えられる。特に、基本健康診査を受けることにより脳血管疾患による入院を抑え、QOLを高く維持させることができたと考えられる。これらのことから、基本健康診査などの健康診査を受けることにより、疾病の予防管理をし入院を回避することにより、高齢者のQOLを維持でき、保健サービスを受ける意義があると考えられる。
結論
平成10年度ベースライン調査回答者1,405人(100%)のうち、保健福祉サービス・受療状況を把握できた者1,370人(97.5%)、平成11年度の調査回答者1,054人(75.0%)であり、死亡者30人を含めると追跡完了者1,084人(追跡率77.2%)であった。追跡後のQOL得点と関連のある因子は、健康診査受診(基本健康診査)の有無、入院歴(脳血管疾患)であり、健康診査を受診し入院歴のない者のQOLが高い結果であった。この結果はベースライン調査時ADL・QOL別にみても同様の傾向であった。健康診査受診別の入院者率をみると健康診査受診のある者の入院者率が低い結果であった。
本研究では、健康診査受診者あるいは入院歴のない者に追跡後のQOLとしての志気が高い結果であったが、健康診査を受診することにより、疾病の予防及び管理ができ入院につながらない、あるいは保健行動意識が元々高く、健康診査を受診するなどの疾病の予防管理ができ、ADL低下を防ぎQOLを高く維持することができたと推測される。特に基本健康診査を受けることにより脳血管疾患による入院を抑え、QOLを高く維持させることができたと考えられ、基本健康診査などの健康診査を受け、疾病の予防管理をし入院を回避することにより、高齢者のQOLを維持でき、この点に保健サービスを受ける意義があると考えられる。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-