地域保健活動の類型化と展開方法の適用に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900783A
報告書区分
総括
研究課題名
地域保健活動の類型化と展開方法の適用に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
岩永 俊博(国立公衆衛生院)
研究分担者(所属機関)
  • 山根洋右(島根医科大学)
  • 兵井伸行(国立公衆衛生院)
  • 鳩野洋子(国立公衆衛生院)
  • 尾崎米厚(国立公衆衛生院)
  • 中俣幸二(鹿児島県鹿屋保健所)
  • 橋本栄里子(慶應義塾大学SFC研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
-円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年我が国でも、公衆衛生活動の展開方法として、さまざまな方法論が提示されており、それぞれの方法の地域活動への適応事例が学会などでも報告されている。これらの方法には、それぞれなりの特徴や有効な適応場面、あるいは限界などがあるはずであるが、それらが整理されていない。そのため、各保健所、市町村現場では、これらの方法を有効に活用できない現状がある。本研究では、地域での保健活動の展開方法として用いられている、プロジェクト・サイクル・マネ ジメントや地域づくり型保健活動、疫学分析、プリシード・プロシード・モデル、ソーシャル・マーケィングなどのそれぞれの方法について、保健所、市町村で行われる保健事業への適応という視点から整理し、状況に応じた展開方法の選択の基準を明らかにするとともに、適応時の課題を整理、提示することを目的としている。
研究方法
研究の手順は以下の通りである。初年度においては、①保健所、市町村での保健活動開始や計画作成など、展開方法を選択する機会として、どのような場合があるのかということについて実態を調査した。②収集された方法選択の機会を、方法の適応という観点から類型化を試みた。③プロジェクト・サイクル・マネージメント、疫学的分析、地域づくり型保健活動、プリシード・プロシード・モデル、ソーシャル・マーケティングの各方法論について、保健事業への適応という観点から、それぞれの方法論を概観するとともに、それぞれの特徴や保健活動展開への適応の可能性について整理した。今年度は、各方法論ごとに、それぞれのフィールドで実際の事例に適応し、適応に際して促進的に働いた要因や阻害的に働いた要因、副次的影響などについて検討した。また、前年度の①で収集類型化した現場での方法選択の機会について、方法論の特徴や適応の可能性から、それぞれの方法論ではどのように展開が可能かを検討した。さらに、以上の検討の結果から、どのような類型の保健活動の場合にはどの方法を選択するのが最も良いかを検討した。ただし、今年度は事例へのあてはめについては地域づくり型保健活動とプリシード・プロシード・モデルに関して、また類型化された課題への適応については地域づくり型保健活動に関してのみの検討となった。最終年度においては、すべての方法論について事例へのあてはめと類型化された課題への適応に関して検討する予定である。
結果と考察
初年度に整理された活動方法論の課題については、今後、それぞれについて体系化が図られる必要があり、また、主要な活動方法論についても具体的な課題に関する検討分析の必要性が示された。各モデルの実践的検討から次のようなことが明らかになった。まず、そのプロセスにおいて住民参加の促進や関わったスタッフによる地域課題の構造的認識や共有など副次的な効果や影響が見られた。また、これらの方法論としてのモデルを適応するうえで阻害的に働いた要因として、日常業務の中での時間の確保やスーパーバイザーとしての人材不足、方法論に対する不慣れなどが挙げられた。促進的に働いた要因として、研究の一環という名分のもとに組織によって取り組まれたことがあげられたが、現場でこのような方法論を用いて保健活動を進めることが特別のこととして捉えられている現状の現れと思われた。組織のトップの理解や担当職員のモデルに対する期待も促進要因となっていた。また、どのような類型の保健活動の場合にはどの方法を選択するのが最も良いかの
検討は、地域づくり型保健活動に関してのみの検討となった。
結論
今年度までの検討により、検討の対象となった方法論、モデルの特徴がある程度明らかになった。次年度において、事例へのあてはめについての検討と、さらにどのような問題として類型化された保健活動の場合にはどの方法を選択するのが最も良いかについての検討が次年度の課題として示された。それらを整理することにより、地域保健活動の現場における、モデルや方法論の効率的な選択の可能性が示された。
また、今回提示されたモデルや方法論を活用することにより、住民参加を促したり課題の構造的認識や共有を助長する可能性も示唆された。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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