総合的な地域保健サービスの提供体制に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900782A
報告書区分
総括
研究課題名
総合的な地域保健サービスの提供体制に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
小倉 敬一(千葉県船橋保健所)
研究分担者(所属機関)
  • 藤内修二(大分県佐伯保健所)
  • 平野彰一(福岡県田川保健所)
  • 常岡克伸(三重県熊野保健所)
  • 土居浩(長崎県保健福祉部健康政策課)
  • 内野英幸(長野県大町保健所)
  • 野尻孝子(和歌山県御坊保健所)
  • 本田万知子(富山県砺波保健所)
  • 景浦しげ子(愛媛県西条中央保健所)
  • 高江洲均(沖縄県宮古保健所)
  • 栗原修一(群馬県沼田保健所)
  • 佐藤拓代(大阪府富田林保健所)
  • 山内拓夫(埼玉県深谷保健所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
33,425,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
昭和60年度の医療法の改正及び平成9年度に全面施行された地域保健法では、二次医療圏をベースとした効率的な保健医療サービスの提供の必要性が強調されている。本研究は、各医療圏において各種事業が効果的に推進されるためのシステム構築のモデル作成を目的とした。
研究方法
12府県の分担研究者(主として保健所長)が、それぞれのモデル地域(原則として地域保健医療圏)を選定し、地域保健に関する特定の課題を決め、その具体的な手順と問題点を明らかにする。本年度(第2年次)は、各種個別的あるいは総合的事業の進展状況及びフィージビリティー分析と最終報告を行った。
結果と考察
本研究は、具体的なシステム作りを指向しており、2年計画で進めるものである。各分担研究については次のとおりである。結果。(1)保健所の地域診断機能の強化を中心とするモデル事業。PRECEDE-PROCEED-MODELを用いて地域診断から企画・実施・評価に至るまでのプロセスを管内の市町村とともに展開した。それに基づき、P-Pモデルの有用性と日本におけるモデル展開上の問題点を明らかにした。(2)思春期問題を中心とするモデル事業保健所の専門機能を生かし、学校保健と地域の関係機関の連携を図り「思春期問題モデル委員会」等の地域保健ネットワークを構築することにより、思春期の心と体を守る体制を充実させた。(3)母子保健(広域的・効率的)を中心とするモデル事業。医療過疎の小規模市町村に対して、市町村の枠を越えた広域的な対応(協議会の設置、カルテの統一等)を図ることにより、効率的な母子保健医療システムの構築を試みた。(4)母子保健(地域的総合支援)を中心とするモデル事業。地域母子保健事業の総合的支援システムを構築し地域に定着させるために、幼児健診、グレーゾーン対策、障害児療育支援の3つの視点から事業を実施した。(5)痴呆性老人在宅ケアを中心とするモデル事業。痴呆性老人の早期発見・早期対応のために、地域における医療の保障、受け皿としてのグループホーム、介護者の会の必要性を明らかにし、それらのネットワーク化を図った。(6)痴呆性老人総合的地域ケアを中心とするモデル事業。痴呆性老人やその家族の実態、ニーズを明らかにする中で、サポートシステムにおける関係機関の役割を明確にし、そのシステム化を図った。(7)難病(在宅ケア)を中心とするモデル事業。管内の在宅難病患者の生活実態とニーズを把握し、モデル地区における生活支援実践及び病診連携体制づくりを行い地域難病在宅ケアの体制を確立し、患者及び家族のQOLの向上を図り、地域の難病対策を推進した。(8)難病(総合的地域ケア)を中心とするモデル事業。
保健所としての難病対策を行うためには、二次医療圏内でのよりきめの細かい地域ケアシステムづくりを行う必要があるが、その専門性からみて全県下を視野に入れたシステムづくりが併せて重要であることを明らかにした。(9)広域的障害者プランを中心とするモデル事業。市町村の障害者福祉プラン策定へ参画することで、市町村支援手法の開発と医療・福祉との連携強化についての保健所の役割を明らかにした。(10)総合相談窓口を中心とするモデル事業。 地域保健法による基本指針では各市町村における総合相談窓口の開設、育成が重要なテーマとなっている。多様な住民からの要望、質問に責任を持って、的確に答えるために保健所を中心とするバックアップシステムを作ることが強く求められている。この研究では、住民の様々なニーズに対応したサービス提供体制の整備とサービスの質量並びに人材確保により保健所のバックアップ機能の強化、情報提供システム、情報ファイル化等を検討した。(11)地域保健白書による具体的事業を中心とするモデル事業。大阪府南河内二次医療圏の保健所が中心となり、地域保健白書を作成し、それに基づく具体的な事業を展開、圏域全体としての関係機関の連携の強化と施策の企画及び評価システムの確立を図った。(12)福祉保健総合センター管内における地域保健の推進に関するモデル事業。埼玉県大里保健医療圏をベースに、保健・医療・福祉の連携による総合的な地域ケアシステムを構築し「社会的弱者」の生活支援を展開する中で、関係機関の役割を明確にするとともに、支援活動の評価指標を作成した。考察。(1)保健所の地域診断機能の強化を中心とするモデル事業。新たに開発した演習プログラムや日本におけるモデルのテキストを目指して作成された報告書を適用した事例が適用されることにより、優先順位を決定するために必要な実証的根拠を提供することが可能となった。また、各地域での展開においてスーパーバイザーの必要であり、今後その養成が必要である。(2)思春期問題を中心とするモデル事業。保健教育は、学校が主体となって系統的に実施することが望ましい。また、本モデル事業をとおして保健教育手法について保健所へ支援が求められるようになった。(3)母子保健(広域的・効率的)を中心とするモデル事業。医療過疎地域における専門家の確保が困難な中、少人数のスタッフに対応システムを確立したことにより、提供サービスレベルの維持が可能となった。また、情報機器による見守りネットワーク体制を構築したことにより、保健医療を越えたサービスの提供が可能となった。(4)母子保健(地域的総合支援)を中心とするモデル事業。1.6歳児、3歳児検診評価事業では、判定マニュアル作成のための現状分析にとどまったため、今後はモデル市町村を設定し地域の小児科医師を交えた使いやすいマニュアルを作成する。グレーゾーン支援介入事業では、対象者の選定における判断基準以上に、従事者の子供や母親を見る目を養うことの重要性が認識された。障害児地域療育支援事業では、地域療育アトラスとして「子育て支援マップ」を作成したが、その作成経過中における、相互の理解、信頼関係を深め、地域療育ネットワークの定着化を図っていくことが重要である。(5)痴呆性老人在宅ケアを中心とするモデル事業。早期発見・早期対応の実現に向けた地域住民への幅広い啓発、保健所がリーダーシップを発揮した病診連携研究会(医師会との連携)の継続的かつ定期的な開催、保健・医療・福祉の連携とシステム構築等を通して、健康政策科学の推進者としての保健所の役割を認識し地域へのアピールを行えた。(6)痴呆性老人総合的地域ケアを中心とするモデル事業。痴呆性老人地域ケアを進めていくためには以下のことが重要である。痴呆の早期発見、早期対応。基礎疾患(脳血管疾患・骨折など)の予防。地域における在宅サービスの充実と専門病院、宅老所の開設。適切な痴呆対応の理解を深めること。介護者負担の軽減。関係機関のネットワークづくり。(7)難病(在宅ケア)を中心とするモデル事業。在宅難病患者支援のためには以下の項目が重要である。
保健婦による、医療との連携と福祉サービス導入への専門的援助、訪問指導稼働量の確保、ケアマネージメント能力の向上。住民が核となる地域交流実行委員会の運営。かかりつけ医による在宅医療の積極的な取り組みと病診連携体制の促進及び、救急時対応可能な在宅医療システム。(8)難病(総合的地域ケア)を中心とするモデル事業。地域ケアシステムを保健所が中心となって構築しようとする場合の課題と期待は以下のとおり。課題:専門医に関する情報不足、保健所のコーディネート機能、医療の質、情報提供意欲の不足、保健所事業の周知不足など。期待:行政機関としての情報提供、実態把握機能。(9)広域的障害者プランを中心とするモデル事業。PCM活用に主眼を置いた今回の研究の成果は以下のとおり。地域の問題の整理、分析手法。地域の関係者との連携。各種会議、説明会、連絡会、また事業の進行管理。住民参加の行政施策の推進。(10)総合相談窓口を中心とするモデル事業。住民意識調査から得た課題として以下に大別し対策を講じた。住民に身近な問題:広報誌による業務内容の紹介。住民に身近ではないが大きな問題:地域保健法で保健所の役割として行わなければならないとした各種事業に関して情報の収集・整理・活用のための資料を作成。(11)地域保健白書による具体的事業を中心とするモデル事業。「地域保健白書」作成に際し、具体的施策、事業として以下のことを行った。母子保健ニュースの発行。健康づくり事業の評価。感染症予防講演会の開催。広域的な難病相談会等の実施。精神保健福祉マップの作成。効果的な事業推進を協議するための体制の構築。(12)福祉保健総合センター管内における地域保健の推進に関するモデル事業。保健・医療・福祉の連携による地域ケアシステムの順調な稼働は、支援対象者(社会的弱者)のニーズに応えるべく、「ケアマネージャー役」と「システムコーディネーター役」の習熟度にかかっている。
結論
2年計画の最終年度では、前述の結果に示したとおり具体的なプログラムを展開したところである。なお、現時点では最終的な評価については、今後に待つところが大きい。また、これらの研究的取り組みを、継続的に定着させることが本来のねらいであり、各分担研究において、努力が続けられている。

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