C型肝炎に対するDNAワクチン治療の研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
199900763A
報告書区分
総括
研究課題名
C型肝炎に対するDNAワクチン治療の研究(総括研究報告書)
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
森山 貴志(自治医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 八木田秀雄(順天堂大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
C型肝炎ウイルスは非経口的に感染し、免疫能が正常の成人であっても高率に慢性化する。感染者の約20%は慢性肝炎、肝硬変を発症するものと考えられる。更に、肝硬変患者の半数以上で肝細胞癌が発症する。C型肝炎に対する治療はインターフェロンの登場により患者の一部で治癒に導くことが可能となったが、有効率は、当初、期待されたほどではなく半数以上の患者に対して、いまだに有効な治療法がない現状である。一般のウイルス感染の予防は、ワクチン接種により中和抗体を誘導して行うがC型肝炎ウイルスは変異しやすく、現在の所、感染を終息させる中和抗体の存在は証明されていない。
ウイルス感染症では中和抗体の誘導以外に細胞障害性Tリンパ球(CTL)を誘導することにより、感染予防が可能であることが知られている。CTLを誘導するためには、生体内で標的抗原を内因性に発現させることが必要であるが抗原蛋白を接種するだけでは生体内で外因性にT細胞に提示されるため、CTLは誘導されないのが通常である。最近、CTLを誘導する新しい方法として病原体抗原をコードする遺伝子そのものをワクチンとして用いる方法(DNAワクチン)が注目されている。この方法がC型肝炎ウイルスに対しても可能かどうかをマウスを用いて基礎的に検討する。同時に抗体やCTLの誘導に大きな役割を果たすヘルパーT細胞もCTLの解析と併せて行う。
研究方法
DNAワクチンとしてpMAMneo, pEFBOS, pcDNA3, VR1012, HBxの各種プロモーターと組み合わせたプラスミドを使用した。アジュバントDNAとしてIL-2, GM-CSF, CD40L, CD86,IL-7, CD30L, 4-1 BBLをコードするプラスミドを用いた。プラスミドを100~400μg/mouse、1回もしくは2週のintervalをおいて2~3回筋注し、最後の免疫から1週後にマウスをsacrificeして、脾細胞を取り出した。DNAワクチンのpositive controlとしてB型肝炎ウイルス表面抗原(HBs)をコードするプラスミドを用いた。CTL epitopeに相当する合成ペプチドで刺激し1週間培養し、Europium release assayを用いて細胞障害性を検討した。
結果と考察
前年度までに通常、行われる方法を用いてHCV coreに対するDNAワクチンをマウスで検討したが、うまく行かなかった。マウスの筋注などテクニカル・エラーによる失敗の可能性を検討するためにマウスにおけるDNAワクチンモデルとして標準的なHBs(B型肝炎ウイルス表面抗原)をコードするプラスミドを用いた。免疫された脾細胞をin vitroにおいてCTLの抗原エピトープに相当する合成ペプチドとともに混合培養すると、当該ペプチドをまぶした標的細胞やHBsを発現しているトランスフェクタントが特異的に殺傷され、DNAワクチンとしてうまく働いたことが確認された。
以上より、手技的な問題ではなく、HCV coreそのものの抗原性の問題と考えられた。アジュバントDNAを種々の組み合わせで併用してもうまくいかなかった。ワクチンの投与方法も文献に従い、種々試みたが、成功しなかった。
C型肝炎ウイルスを発見した米国カイロン社はワクチンの開発にも意欲的に取り組んでいるが、その講演においてチンパンジーではDNAワクチンがうまくいかなかったと語っている。マウスにおいても従来報告されているC型肝炎ウイルス・コア蛋白特異的CTLを誘導することは再現できなかったとする論文を発表しており、C型肝炎におけるDNAワクチンを実現するためには、効果を高める工夫が必要と考えられる。
結論
本研究においてマウスでDNAワクチンを用いてC型肝炎ウイルス・コア蛋白特異的CTLを誘導することは困難であった。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-