薬物代謝能力測定キットの開発と医薬品適正使用への応用

文献情報

文献番号
199900760A
報告書区分
総括
研究課題名
薬物代謝能力測定キットの開発と医薬品適正使用への応用
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
中島 恵美(共立薬科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 飯笹久(共立薬科大学)
  • 服部研之(共立薬科大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は小児・高齢者に対する医薬品の適正使用を推進するために、患者の薬物代謝能力の指標となる主な代謝酵素量を事前に診断するキットを開発し、これにより加齢変動要因を解析し、治療薬の薬物療法の最適化を図ることを目的としている。
研究方法
(1) in vivo代謝酵素量診断法の開発 各種CYPに特異的な診断プローブを用いてin vivoでの各CYP量をPK-CYP testで測定する。プローブの条件検討や微量定量法の確立を行い、各種モデル動物における酵素量の解析を行った。
(2) 薬物療法設計ソフトの開発 治療薬の固有情報を組み込んで、個々の患者に最適な薬物療法を自動的に得られる普遍的な薬物療法設計ソフトへの応用をはかる。本年度は主としてCYP3A4により代謝される薬物について情報を収集した。
結果と考察
これまでに、我々は薬物療法の個別化を成功させるためには、(1)精度良く、個々の患者の代謝能を測定すること、(2)個々の患者の肝代謝酵素活性の測定値をもとに、適切な薬用量を普遍的に算出するシステムを確立すること、が必要であると考えて以下の研究を展開してきた。研究代表者の中島は、プローブ薬を用いた非侵襲的な患者の代謝能力診断法であるPK-CYP testを考案した。引き続き、本診断法の実用化のためには、薬物の体内動態パラメータが必須であるため、文献調査による薬物情報データベースの構築を進めている。飯笹は分子生物学的手法を用いて、各種酵素量変動モデルならびに加齢モデルの作製を行い、PK-CYP testの動物モデルにおける検証を担当した。服部は生化学的手法により、CYP酵素量の免疫化学的定量と酵素活性測定法並びにプローブ薬及び治療モデル薬の分離定量法の確立を担当した。これらの協力体制のもとに、初年度はラットを用いた診断法の検証を行い、CYP1A2についてプローブ薬によるin vivo酵素量の定量並びに治療薬のクリアランスの予測が可能であることを明らかにした("Strategies for Optimizing Oral Drug Delivery: Scientific to Regulatory Approaches"、平成11年4月、神戸)。本年度は、引き続き、急性肝障害モデル、加齢変動モデルにおけるPK-CYP testの検証を行い、これらのモデルにおいてもPK-CYP testによって、治療薬のクリアランスの予測が精度良く行えることを明らかにした("Millenium World Congress of Pharmaceutical Sciences"、平成12年4月、サンフランシスコ)。また、カフェインとテオフィリンについて競合阻害による相互作用の予測にPK-CYP testを応用可能であることを示した("International Conference on Drug Interaction"、平成11年10月、浜松)。
また、CYP1A2に続き、ラットにおける最も主要なアイソフォームであるCYP2C11について酵素量の定量、酵素活性の測定、プローブ薬の定量法の確立を行い、PK-CYP testの検証を行った。その結果、CYP-2C11においてもPK-CYP testによる酵素量の予測が可能であることが明らかになった("Millenium World Congress of Pharmaceutical Sciences"、平成12年4月、サンフランシスコ)。
結論
本研究では、サブタイプごとの薬物代謝酵素量を測定するための理論誌記の構築を行い、理論の妥当性について動物モデルによる検証を行った。これらの研究成果から、サブタイプごとに生体内の薬物代謝酵素量を測定し、診断値に基づいた投与設計を行うことが可能となった。これにより、多くの薬物の過剰投与や、相互作用による副作用を減少させ、医薬品の適正使用をより効率的に推進することが可能となる。また、本システムが普及することで、治療域が狭い薬物や特定の代謝酵素で代謝されるため個体差が大きくなることが予想されるような薬物の利用も安全に行えるようになり、新薬開発がより効率的になることも期待される。

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